サブとみりんは、酒場の掃除を終えた後、しばしの休息を取るため外へ出た。沈む夕陽が村の荒廃した景色をオレンジ色に染めている。
「なんかよ、あの酒場の親父さん、めっちゃ怒りっぽくねぇ?」
サブが空を見上げながら笑うように言う。
「当たり前や。あの男はこの村の“顔役”やからな。」
「顔役?」
「せや。この村で生き延びたかったら、あの酒場の親父に逆らったら終わりや。力だけでのし上がってきたヤツやしな。」
みりんの言葉に、サブは腕を組んで考え込むような表情をした。
「でもさ、そんな場所でお前みたいな子が働いてるのって、なんか……大変そうだな。」
「別に気にせんでええわ。僕みたいな雑用係なんて、どこ行っても一緒や。」
みりんは笑うでもなく、淡々と言い放つ。その横顔には、どこか諦めにも似た冷たさが漂っていた。
ふと、サブはみりんの右腕に目をやる。その青い薔薇の刺青は、どこか異様に目を引く存在感を放っていた。
「なあ、その刺青……なんで入れたんだ?」
サブの問いに、みりんは一瞬動きを止める。そして、小さくため息をついた。
「これはな、僕がここに売られたときに、マフィアギルドが“所有物”やって証明するために彫られたもんや。」
「……所有物?」
「せや。親に売られた僕に、反抗する力なんてなかった。だから……生きるためには、受け入れるしかなかったんや。」
その言葉に、サブの表情が曇る。だが、みりんはすぐに冗談っぽい調子で言葉を続けた。
「まぁ、今となっちゃ気にしてへんけどな。この刺青があるおかげで、余計な男どもが近寄らんくなったし。」
「でも……お前、そんな風に諦めるのって、辛くないか?」
サブの真っ直ぐな瞳に、みりんは少しだけ動揺した。
「諦めてるんとちゃう。これが僕の“現実”や。それだけや。」
「……でもさ、俺ならお前を助けられるかもしれない。」
その言葉に、みりんは思わず吹き出した。
「アホちゃうか、あんた。助けるって……僕がそんなん望んでると思うか?」
「わかんねぇ。でも、俺は誰かが困ってるのを見て見ぬふりなんてできねぇ性格なんだよ。」
その言葉の強さに、みりんは少しだけ心を揺さぶられる。そして、思わず言葉を漏らしてしまった。
「……ほんま、変な奴やな。」
その時、村の奥から悲鳴が響いた。
「助けてぇぇぇ! 魔物が出たぁ!」
村人たちが一斉に逃げ出す中、サブとみりんはその声が聞こえた方向へ駆け出した。
「なんや、いきなり……!」
「魔物だって? よし、俺の剣が火を吹くぜ!」
しかし、みりんはすぐにサブの腕を掴み、止めた。
「待ちな、勇者さん。何の準備もなしで突っ込んでどうすんねん。」
「でも、このままじゃ村の人が――」
「わかっとる! ……でも、力だけでどうにかなるもんやない。アンタ、ちゃんと僕の言うこと聞き!」
みりんはサブに指示を出し、自分も剣を抜いた。その姿は、一匹狼でありながらも、どこか頼もしいものがあった。
「まずは村人を安全な場所に誘導する。それから魔物を倒す。それが最優先や!」
「……了解! 任せろ!」
二人は手分けして動き出す。初めての共闘――それは、彼らの関係に小さな変化をもたらすきっかけとなった。
コメント
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めちゃおもろい! ツヅキ((o(´∀`)o))ワクワク
君は一体どの役職なんだい()
やばい投稿してないいまするすまん