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あたしは、緑色の草花を踏みしめる。
真っ青な空。ゆらりゆらり揺れる草木に花たち。
それはまるで__。
この世界の〝崩壊〟なんて、無かったみたいだ。
少し離れたところに行けば、すぐに吞み込まれてしまうのに、ここは__。
綺麗だ。
驚く程に。ここは別世界のような。そんな気がした。
「……まあ、獲物を取るのには変わりないけど」
今日見つからないと、久々のご飯抜きだ。何週間ぶりのご飯抜きに耐えれる気は到底しないから、とにかく獲物を探す。
もしかして、ここら一帯はもう人がいないのかな。すぐそこで戦争が勃発してたから、危険を察知して逃げた可能性も……。
「__あれ、君どうしたの?」
「っ!」
必死に探していたからか、後ろに立っている人間の気配に気づくことができなかった。
__いや、気配がなかった?
この人間、何者……?
「そんな警戒しなくていいよ。俺は凸もり。よろしくね」
__そう言って、彼は人外であるあたしに、笑いかけた。
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「じゃあおどろくちゃんは、食べるモノを探してるってこと?」
「うん、そうだよ」
まぁ目の前に獲物はいるんですが。
凸もり__凸は、どうやら畑の農業を営んでいる農家らしい。ここら一帯も、凸の領地だそう。
こんだけ大きな土地を持っていたら、羊や牛がどれくらいいるだろう。考えただけでも、お腹が空いてくる。
そう考えた時、タイミングよくお腹がぐ~~~っと鳴った。
「あっ、ごめんなさ__、」
「……っぷ、あははっ、ははっ」
凸が、突然吹き出して笑い出した。
恥ずかしさで、あたしは顔が真っ赤になる。
「……笑うななのだ」
「ごめんごめんっ、お腹が空いてるんでしょ?家で食べてく?」
「え……っ」
正直、助かる。空腹というモノから逃げれるついでに、人間も手に入るから。
「じゃあ……お言葉に甘えて」
そうこなくちゃ、と笑った凸もりさんの背を、あたしは追いかけていった。