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夕暮れの日が照らす木造校舎の一階。
長く広がる廊下に、2つの影が激しく音をたて一角の教室を目指していた。
追いかけている顔が影となり見えない人物が、全速力で逃げる前の人間に声をかける。
「そろそろ顔見せてくんない⁉︎」
「やだね‼︎」
前を走る人間が即座に返事をする。
前方を走る人間の顔に大きく纏った仮面の組紐が走る度にふわふわと揺れていた。
手を伸ばせば、もう少しで。
「てかもうこんな時間じゃん‼︎やばい‼︎」
全速力で走っていたと、思い込んでいただけ。
前方を走る彼は徐々にスピードを増し、先に教室へ着いたかと思えば荷物を持って玄関へと向かっていった。
「じゃあな‼︎」
息が整わず過呼吸気味になる俺を置いて。
「はぁ、マジ何者なんだよアイツ、」
アイツはいつもそうだった。
高校生ながら少しのヤンチャで興奮する時期に俺らは学校で肝試しをしようとした。
けれどクラスの中心にいるアイツがどうにも賛成してくれる気配はなく、その計画も無惨に廃棄となってしまった。
アイツが賛成してくれれば良かったものを。
アイツは夜になる前に必ず帰ってしまう。
皆は家の用事がどうとか勝手に語っているけれど、正直アイツが家のことどうこうで真っ先に帰るような奴じゃないことは百も承知だ。
ならアイツに何の理由が残る?
クラスの中心にいると言っても、アイツが誰かに”顔を見せたことは一度も無い”。
昼休憩にもお昼を食べてる所すら見せてくれないアイツを、どう信じれば良い?
逆にクラスの奴らは何故アイツを信じられる?
頭がおかしくなりそうだ。
「、アイツさえいなければ」
肝試しも、何もかも上手くいっていたかも知らないのに。
『〇〇君の方が良いから、ごめんね?』
ギリ____
「、そうだ」
夕暮れになると必ず帰るのなら、
「意地でも、帰らせなければ良いんだ。」