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雲の上にいるドラゴンはナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)を自分のところまで、おびき寄せるためだけにずっと雨を降らせていた。
ナオトと交尾をしたいと言うメスドラゴンに対し、ナオトは相手のことを何も知らないままするようなことではないと自分の正直な気持ちを彼女にぶつけていた。
その間《かん》、チエミ(体長十五センチほどの妖精)はそのことを巨大な亀型モンスターの甲羅と合体しているアパートの二階にあるナオトの部屋で待っている仲間たちの元へと向かっていた。
「あなたの性感帯を教えて。そうすれば、今すぐ気持ちよくなれるよ?」
「こ、断る! 俺は自分の弱点をホイホイ敵に教えるようなバカじゃないんだよ!」
ナオトと交尾しやすいように擬人化したメスドラゴンは彼を水色のシッポでグルグル巻きにしている。
「私は敵じゃない。あなたの遺伝子が欲しいだけ」
「つまり、俺の体が目当てなんだろ! 目的を果たしたら、すぐ捨てるんだろ!」
彼女は静かに首を横に振る。
「何を言っているの? とりあえず子どもが一人前になるまでは一緒にいるよ」
「え? そ、そうなのか? 子どもができたら、もうお前に用はないとか言って殺すんじゃないのか?」
彼女は小首を傾げる。
「なぜそんなことをする必要があるの? メスは子孫を残すために元気な子どもを産み、オスは交尾や出産などで弱っているメスを守ったり食料を集めるのが仕事。子どもは基本的に両方が面倒を見る。だから、私があなたを殺すなんてことはあり得ない」
「そ、そうなのか。なんか思ってたのと違うな」
彼女は彼に顔をグイと近づける。
「どこがどう違うの? 教えて」
「近い! 近い! ちょっと離れてくれ!!」
「……? 分かった」
彼女が彼から離れると、彼はほっと胸を撫で下ろした。
「え、えっとだな。俺が想像してたドラゴンは子どもが産まれたら、すぐに子どもの元から去るんだよ。そうしないと過酷な環境の中で生きていけないからっていう理由でな」
「それは昔の、ごく一部のドラゴンがやっていたもの。今はもうない。ドラゴンの数が減ったから一人前になるまでは安心できない」
「そうだったのか。えっと、どうしてドラゴンの数が減ったのか教えてもらってもいいか?」
「それは|ドラゴン《わたし》たちしか知らない。あなたが私と交尾すると言えば、やりながら耳元で囁《ささや》いてあげるけど、どうする?」
「なんだよ、それ。なんで続きは映画を観てね! みたいな流れなんだよ!!」
「えいが? それは何? 教えて」
あれ? なんか食いついたぞ?
よし、うまく使ってやろう。
「どうしようかなー。お前がそのドラゴンしか知らないことを教えてくれるって約束してくれたら教えてあげてもいいぞー」
「くっ! に、人間のクセに生意気!!」
「人間は、ずる賢い生き物なんだよ。ほらほら、どうする?」
彼女は同じところを行ったり来たりしながら、ブツブツ呟《つぶや》いている。
チエミー、誰でもいいから早く俺を助けに来てくれー。
時間稼ぎはできるけど、それがいつまで通用するかは時間の問題だからー。