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「レウ起きろ」
俺は友人でありパートナーでもあるレウの体を揺らし、無理やり彼を起こす。
「ふぁ…おはよ、きょーさん」
「おはよーさん」
まだ瞼を擦り眠たそうにしている彼に、火の近くで温めておいた1杯のスープを渡した。
「…いいの?」
普段中々食べれない食事の中でも、一二を争うほど貴重なスープを自分が貰ってもいいのだろうかなんて思っているのだろう。俺は頷き、彼にスープを飲むよう促す。
「まあ最後の1個やったしな。お前の方が体が弱いんやから暖を取らんと」
「でもそうしたらきょーさんの体が冷えるでしょ」
「俺も体は冷えるけどお前みたいに弱くはねぇよ。スープなんかそのうち進めばまた見つかるもんやから」
「そっか」
そう言い少し遠慮がちにスープを飲むレウ。
体が温まったせいで眠たくなったのか、まだ少し残っているスープの容器を持ちながら微睡んでいた。
「眠いのは分かるけど、もうすぐ出発するから荷物まとめろよ」
レウの肩を叩き、半強制的に身支度をするよう促す。
するとレウは眠いと言いながらもきちんと身支度を済ませていた。
「じゃあそろそろ行くぞ」
「うん。忘れ物はないよね?」
「全部しまったからな」
「じゃあ行こっか」
こうして、俺らは次の目的地へと向かった。
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「ねえきょーさん」
「ん?」
変わらない景色と共に歩いていると、急にレウが口を開けた。
「俺たちってなんで旅してるんだろうね」
「そりゃあ…あの連中に追われてるからだろ」
あの連中というのは、違反者を取り締まるための隋天使のこと。
「でもあの連中はもう何年も前に居なくなったでしょ、無理して旅を続ける必要は無いんじゃない?」
「…」
「旅を辞めてひとつのところに居座るのもいいんじゃないの、その方がご飯も沢山あるし」
レウの言う通りだ。
俺らを追っていた連中はもう居ない。だから旅という名の逃走生活をする必要は無い。
しかもなぜ追われていたのか、なぜもう追ってこないのかは未だ謎のまま。
それでも、俺らはなぜか旅を続けている。
「旅してる理由なんかもう覚えてねぇよ」
「やっぱ覚えてないよね」
「もう何百年も歩きながら旅してるからな」
何年か前に、同じような会話をした気がする。
「なんか…前にも話したよね、こんなこと」
それは、レウも同じだったようだ。
「そうだな、話た気がする」
だいぶ歩き疲れてきたので、休憩がてら地べたに座って話を続けることにした。
「不思議だよね、世界って」
「不思議だな」
「この草原も、昔は森とか海とかだったんじゃないの」
「水はあっただろうな」
「いいなぁ、俺らのこの時代まで残してくれても良かったのに」
「自然界が勝手に無くしたから、残すも何もないやろ」
「自然も俺らと同じように、毎日変わってるんだね」
「そりゃあ、こいつらも生きとるからな」
「それもそっか」
風の音と、俺らの話し声しか聞こえないこの空間。そんな所で、俺ら2人はくだらない話を続ける。
草も、土も。俺らと同じ言語は喋れないし、むしろ口や耳があるのかも分からないが、俺らのくだらない話を聞いている。
「やっぱり…不思議だな」
「当たり前なことなのにね」
「そうやな」
「…別に旅を辞めなくてもいいんじゃないかって思っちゃった」
「そうやな」
「俺らにはこれがもう日常なんだよ」
「2人で歩いて、ご飯を食べて、寝てを繰り返す生活が?」
「うん」
「あんなけゴールを目指してたのに?」
「うん」
「…そうなんや」
日常というものは不思議なものだ。
元々必死に続けてきたものだったのも、気づけば当たり前のようにこなしている。
この旅もそうだ。昔は必死に追っ手から逃げていたが、追いかけてくるものが居なくなった以上、適当に前に前に進むしか選択肢がない。
しかもその生活も段々と慣れてきて、今は日常になっている。
「…考えさせられるな」
既に寝てしまったレウの頭を撫で、俺も少しだけ仮眠を摂ることにした。
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お久しぶりです…!
久しぶりに書いたので言葉があやふやになっているかもしれないのですが、リハビリで投稿した作品なのでそこは大目に見てください…
Next♡1000