9:20
一限目の数IIが始まる。
数学は嫌いでは無いけど、頭には
‘ あの人 ’ がチラついて、消えてくれない
たった 55 分 、そう思うほどに
頭はあなたで埋まってすぐに時なんて過ぎ去る
「 こーう、!!
起きろーー!! 」
俺の目の前で手を振り続ける光
「 あ 、ごめん 」
「 まじお前最近変だよ? 」
そういう話も一日に数回される。
家でも箸が進まなかったり、宿題も手につかなくてそれは大変。
「 わりぃわりぃ 」
「 思ってねーだろ笑 」
それでも手を離さず話しかけてくれる光はたぶんかけがえのない存在だろう
「 煌ー!帰ろうぜー!! 」
「 あー、ごめん寄りたい場所あって 」
「 … どこ行くの 」
少し、息が詰まる。
もし、教えてライバルになったら?
もし、盲目のこと馬鹿にしたら?
もし、光と仲が悪くなったら?
たぶん、俺の心臓は元に戻らない。
「 も、少し待って。
いつか話すから 」
「 おっけー! 」
そう言って他の奴を誘って帰る光を見ながら、支度をする。
左肩にスクバを掛けて、真っ直ぐあの花屋さんへ向かう
チリン、とお決まりのベルが鳴ってあなたの元へと駆けていく。
「 早乙女さん 。 」
息を切らしながら、ズルズルと落ちたスクバを左肩に乗せて話しかける。
「 桐谷くん 。 」
すっかり常連となった俺は今日も人が疎らな店の中であなたと2 人きりで話し尽くす。
「 もうすぐ梅雨ですね 」
季節は夏へと変わり行く。
「 桐谷くんのお誕生日は 、何時ですか ? 」
「 え 、あー 、2 日です 」
今日の日付は6 / 10 。
つまり8日過ぎている現状
「 え 、ごめんね祝えなくて 」
「 いや 、伝えてないので仕方ないですよ !! 」
明らかにしょんぼりする早乙女さんに俺は少し心が痛んだ。
「 じゃあ、俺の事名前で呼んでください !! 」
口をぽかんと開けて、今にも「 え 」と言いそうな貴女に続けて言った。
「 早乙女さんともっと仲良くなりたくて 、 」
「 うんっ !!
煌くん 。 」
そう呼ぶ貴女は誰よりも笑顔だった
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