初めまして。
あなたたちには、今から
『誰も死なない死ゲーム』
をしてもらいます
──────
高校1年生春、やっと学校生活に慣れてきた頃、 私は意味のわからないデスゲームに参加させられた。なんでも、それは『誰も死なない』んだそう。
真っ白な部屋に8人、人が集められている。
「はじめまして、私は紬野はやせ」
綺麗な金髪ストレートの子が話し始めた。
いかにも陽キャって感じ。
「えっと、わ、私は…るい。」
るい、と名乗った女の子は黒髪おさげの優等生ちゃんってかんじ。
私も自己紹介しなくちゃな。なんて、デスゲームに参加してる割には冷静すぎじゃない?
そんなことを思いながら、言葉を発した。
「私は如月さゆな、好きに呼んでね」
私が名前を言い終わると、金髪男が口を開いた。
「てか、死なないデスゲームってなんなの?何すんの?」
「それな」
はやせと金髪男は知り合いっぽかった。
ああ、私も知り合いがいれば心強かったんだけど。
「デスゲームなんて存在するんだね。ものすごく興味深いよ。」
うわ、tha、サイコパスみたいな男がいる。
垂れ眉吊り目の、笑顔で人を殴ってそうなタイプの男。
『私語はやめなさい。』
どこからか、声が聞こえる。
『今からこのゲームについて説明する。』
『さっきも説明した通り、君たちは絶対に死なない。
正確に言えば、死んでも生き返る。』
「は?こういうのって、人間が殺し合う姿をみたい頭のネジが外れたやつのするやつだろ」
『何も話すな。俺は許可していない』
「ちっ。」
『早速だが、慣れてもらうために、第1ゲームをしてもらう。 』
みんなの表情が一瞬だけ緊張したような顔になる。
『第1ゲームは、 』
『world of two。お互いをキルする。』
world of two、 二人の世界。お互いをキルする?
『このゲームは、2人1組になってお互いをキルしてもらう。』
「えっ、」
黒髪おさげのるいちゃんが驚いたような声を上げた。そりゃそうだ。こんなところにいきなり集められて、誰も死なないって言ってるのに、第1ゲームが「お互いをキルする」?驚くに決まってる。
『こちらでチームを決めさせて貰った。』
『Aチーム。紬野はやせAND東宮ひかる』
あの金髪男、ひかるっていうんだ。Aは金髪チームだ。
『Bチーム、東野るいAND森素すずね』
「るいちゃん、よろしくね」
始めて声を聞いた「森素すずね」は、陽キャまでは行かないけど、誰からも嫌われていいいい子ちゃんって感じだった。
『Cチーム、神崎とうやAND神堂はやと』
2人とも静かそうな男の子。
え、てかまって、じゃあ私、
『Dチーム、如月さゆなAND堕音せいま』
サイコパス男(偏見)
この人と殺し合い?負けるに決まってる。
あぁ、でも死なないんだっけ?
「せいま…さん、よろしくね」
「うん、よろしくね」
ニコニコと笑うその顔さえも怖く見えた。
『もう一度繰り返す』
『Aチーム、紬野はやせAND東宮ひかる』
『Bチーム、東野るいAND森素すずね』
『Cチーム、神崎とうやAND神堂はやと』
『Dチーム、如月さゆなAND堕音せいま 』
『いまから、それぞれの部屋に移動しろ。』
──────
私は、せいまさんとひとつの部屋に入った。そこには包丁がひとつ。
「これで刺すの?」
死なないと分かっているからか、それとも怖すぎて頭がおかしくなっているのか。声が震えることもないし、心臓がバクバクすることも無い。
『いまからその包丁でお互いを刺せ。』
私の予感は的中したようだった。
せいまさんは、ニコニコと笑いながら私を見つめている。
「ねえ待って、私があなたを刺すの?」
「ああ、そうするしかないんだと思うよ。」
やっとここで、手が震え始めた。
「緊張しないでよ。ここは死なないはずなんだ。」
どうしてこの状況で笑っていられるのか。
どうしてあいつの言葉を信じられるのか。
私には分からなかった
「いい? 」
「ああ」
───
私は、人を刺した。
もちろん、人生初。
「ぁ、」
気付いたらせいまさんは倒れていた。
「ひゃっ!!」
自分でも驚くくらい高い声が出た。
『さゆな、1度、包丁を置け。』
私は言われるがまま、包丁を机に戻した。
すると、せいまさんの体はバグが怒ったようにモザイクがかかり、消えた。
「わっ!! 」
「うわ!!」
後ろからせいまさんが驚かせてきた。
確かに私が刺した人。確かに、今ここで倒れていた人。
まだ手に感覚が残っていて気持ち悪い。
「ぁ…」
きっと、誰にもバレていない声を出した。
─────────
「ぁ、ぐ」
後ろから、強い痛みを感じた。
「恐怖を感じるまもなくやられた方が君にとってもいいだろう? 」
痛いのに、熱さが勝つ。人間の血液ってこんなに熱かったんだ。
「ぁ…う…」
足に力が入らなくなり、倒れた。
どくんどくんと音が聞こえ、私は今ここで初めて、『死』と出会った。
ばちんっと目の前が真っ暗になる。
でも、それはほんの一瞬で、私はすぐ目覚めることが出来た。
これが、『死』。私は1度死んだ。死んだ。死んだんだ。
「さあ、ぼくたちは終わったし、戻ろう」
「ぇ…あ、うん…」
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