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「茶、しばくぜ?」
彼が何を言っているのかわからない。
俺たちは知らぬ間に機関の一員になっていた。同じタイミングで。
安心したが、同時にこいつのお守り役になるだろうとも思った。戦い以外ではちっぽけなやつだからな。
「レイ?何ぼーっとしてるの?」
「アランの言っていることがわからなかった。」
「ええ、俺普通に喋ったよ。」
「茶をしばくってなんだ。慣用句か?」
「慣用句って何?茶をしばくってお茶を飲むってことだよ。最近知ったんだ。」
「嘘だ、絶対。」
「嘘じゃないもんね。」
彼は頬を膨らませ、こちらを見た。本当に阿呆っぽい。しかし、戦闘面では俺より上なのが信じられない。やはり才能なのだろうか。
「お茶しばいたらまた練習しような。」
「言い方を変えろ。紛らわしい。」
「ええ、かっこいい方がいいじゃん。」
「はいはい。」
空が曇っていて少し暗い。
俺はカフェへの道を進んでいった。
「死人が蘇るわけありません。」
「でも見たんだよ。研究者様にもわからないこともあるんだな。」
彼は突然この話をしてきた。前振りもなく、表情の変化も感じられず。
「けれど見たんだよな、さっき街を歩いていたら。」
「そうだよ、見たんだよ。」
天使と少年は近づいてくる。
「そんなに言っても聞きませんよ。そんな研究結果ありませんから。」
「研究したことがないだけじゃないの?」
「そうだぞ、お前の言う通りだよ。」
「はぁ、研究すればいいってもんではありませんよ。さっさと帰ってください。」
2人ともどうにか私の家に居座ろうとする。彼らには家がないのだろう。初めは仕方がないと思っていたが、日に日にうざったく感じてきた。絶対家が見つかる時間は経っただろうに。
「ほら、救ってやったよしみでさ?いいだろ。」
「そんなこと言われてもないものはないんです。」
「でもおじさん、探しに行こうよ。最近外に出ていないでしょ。」
「まぁ確かにそうですけど…。」
つい黙ってしまった。確かに運動不足は良くない。程よく日光を浴びなければいけない。
「さぁ、死人探し行くぞ。」
「怖いよ、その言い方。」
「わかりました、ついて行きますよ。」
雨が降りそうなので傘を準備する。
私は玄関へ続く廊下を進んでいった。
「はぁ…練習しないんですか?」
「しないよ、面倒だもん。」
「先輩ってまるで生きた出来の悪い石像ですね。」
「ひどいよ、ぼこぼこにされたいのか?」
「後輩虐めようとするし。」
「普段はしてないし。」
先輩はとても面倒くさがりだ。俺はとにかく努力してここまで来た。だが、こんな先輩より弱い。世界は不公平だ。
「君だけは弱いと思えるよ。本当に。」
「ああ、その笛チートですって。」
「他の戦い方もあるんだよ。」
「見たことないから弱いんですね。」
「…そうかも。」
先輩は少し顔を曇らせて言った。この人のこんな顔は思っていたより見たことがないかもしれない。
「うわっ、雨降ってきたよ。」
「ほら、帰りますよ。」
「石畳って滑りそうだな…。」
「そんなこと言ってないで立ちましょう。」
先輩の手を掴み、なんとか立たせた。
濡れた石畳の上を進んでいった。
平和になってからは久しぶりに訪れた。花の香りが鼻をくすぐっている気がした。
「あ、久しぶりですね。」
「だから敬語はいいんだって。」
「いやぁ、やっぱり抜けませんね。」
隣に立っていた少女が頷いた。
「しばらく来ていなかったね、何か変わった?」
「いいや、歳をとったくらい…かな。」
「未来人から変わったね。」
「恥ずかしいからやめてよ。」
彼らは昔よりも表情が柔らかくなった。今より忙しい毎日を過ごしているはずなのに。
「いやぁ、私も歳をとったよ。」
「これ、栄養薬持ってきたよ。」
「なにそれ。」
「いやぁ、高貴なあなたには合わないって言われた薬だよ。」
「だからわざわざ持ってきたって話。」
「おいしくなさそうだね。」
「だから高貴なあなたにはやめてくださいって言われたんですよ。まだ壁を感じますし。」
「あなたが敬語をやめればいいはずなのに。」
あれから数年間経って壁は無くなってきたが、やはり悪い伝統と言ったところか綺麗になくなることはなかった。
「まぁしょうがないですよ。さぁ、中に入ってください。」
「失礼します。」
花が香る庭を進んでいった。
「お腹空いたなぁ。」
俺はそう呟いて立ち上がった。周りの人は楽しそうな生活を送っているのに事件の張本人がこんなだと知ると国の調子がおかしくなりそうだ。
雨が降っていたらしく、湿った匂いがする。黒い雲の跡も見られる。
風で傘が飛んでいる。周りには人がいないので誰かが飛ばしてしまったのだろう。
花びらが飛んでくる。ああ、終わったんだな。
今日は何をしようか。