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待って!?色々感想とか言いたいのに……!羊右様の作品と羊右様の素晴らしさを伝えたいのに…!! 前園のせいで全部どっか行った!!!!!!どーしよ…w でも前園のあの感じマジで好きです💓 そして知成!君はさっさと京佳さんと幸せになれ!!! そして知成なかなかにアレな性格してるな……
女って難しい。今更知ったことではないが、知成はがっくしと落ち込んでいた。その理由として京佳の心の声が聞こえず、なんだか失敗に失敗を重ねた様な、そんなもどかしい思いでいたのだ。
「ただいまっす! うお、知成さん、なんすか、どうしたんすか。今にもカビが生えそうな雰囲気を纏って……」
「失礼だな」
「ところで橘家との縁談は上手くいったっすか?」
「……自信はない、今にも吐きそう」
「ええ! あ、なら、吐きそうになったら、おれが受け止めてあげるっすからね。安心してくださいっす!」
「やめろ、汚ねえぞ」
「知成さんのなら汚くないっす」
(貧民街のものより、知成さんの方がずっとずっと綺麗っすから大丈夫なのに)
「……だとしても、人の吐瀉物を受け止めようとするのはやめろ。」
「はいっす!」
知成は純一郎の持っている大きい風呂敷に気が附き、
「それはなんだ?」
「ああ、これっすか? あの、前園前園さんの、その、荷物っす……」
「ああ、またか……」
「はいっす……」
前園というのは、知成と同じ仕事をする部下であるのだが、なかなかの趣味をしている為、少し厄介な奴でもある。
「ちなみにどんなのが届いてたんだ?」
「……ぶっとい、縄っす」
「ああ……そうか」
純一郎は泣きべそをかきながら、
「受け取るこっちの身にもなってほしいっす……」
と呟いていた。俺もだよと首を縦に振った。
「とりあえず、その荷物は前園の机に置いておいてあげて」
「はあいっす」
純一郎が前園の荷物を持ち上げ、机の上に置こうとした時、突如慌ただしく戸を開ける音が個室内に響いた。
「私の荷物は届いておりますか!」
「もう少し静かに扉を開けられないのか、前園!」
「ああん! 白河さんの罵声を浴びせられるだなんて……こんな幸福なことこの世にあるでしょうか……!」
「静まれ、変態!」
前園は膝をカクカクさせ、聞くに堪えない嬌声を出しながら、知成に跪いた。鳥肌がぞぞぞと出てきて、なぜ自分はこんなやつに跪かれなくてはならないのだと嘆く。こんなにも知的そうな美丈夫なのに、なぜ話すとここまで変態な生物へと成り下がってしまうのだろう。
「私、前園は知成様の畜生野郎になりたい所存でございます……どうぞ私を殴り罵倒してください……!」
「……そろそろ暇を出すぞ……?」
嬉しそうに唸る声を背に鳥肌が出た腕をさすりながら、足速で部屋から廊下へ出ていった。もうすぐ本格的に妻となる京佳がこちらへ来ると先日の顔合わせの時に聞いていたから、迎えに行こうと思ったからだ。
蝶子から、聞いたことがあった。お金持ちのお嬢さんが、良き嫁でいようと努力するのは、男の家が良いか、はたまた顔がいいか、お金をいかに稼いでいるかで決まるという。知成は京佳にわずらわしくなく、わがままでなく、従順な妻でいてほしいと願っている。こんなことを口にしてしまえば、蝶子の怒鳴り声により、三日間はまともに耳が機能しなくなってしまうだろうが、知成にはそう願わずにはいられない理由が過去にあったのだ。それが知成の心を蝕み、記憶が脳に染み付いてしまった。だから、許容してくれと心で呟くのだ。
(……俺と京佳さんはお金で結婚しているものだろう)