ギャァァァァァオォォォォォ‼︎‼︎
森の中から響く謎の鳴き声
その声の主に近づく1人の双剣使い
真っ黒なショートカットの髪とエメラルドの色をした瞳に体の至る所に傷の跡がある
両手にはボロボロの刃こぼれしている刀
強い風が吹き黒い髪の毛が荒れる
怪物が手を振り上げ、地面に叩きつける
土地は抉れ、当たれば確実にペシャンコだ
そんな化け物と出会ったとなるならば、逃げたりするだろう
“普通“なら
彼女の表情はさっきまでの無表情と変わり
口角は上がり、 緑の瞳は真っ赤に染まる
途端に魔物の元へ走っていく
「身体能力上昇…五感能力上昇…」
「攻撃力低下♩」
そう唱えた彼女は魔物の振り上げた拳を避けながら目の前に飛び上がる
血が錆びついた刀を魔物の目に投げつける
それは見事命中し血飛沫が上がる
刺さった刀を引き抜いて魔物の目の前の木に飛び移る
その頬を紅色にしてニンマリと笑う少女
「あーそびーましょー♩」
ー冒険者ギルドー
ギルドの大きな扉を開けて中に入る
「ゴブリンの群れ討伐完了しましt…」
「リトナさん!また任務じゃない魔物ぶっ倒しましたね!」
「…バレました?」
「バレバレですよ!なんせこの近くの森ですからね!目撃情報ありまくりですよ!」
今頬を膨らめて怒ってるこの子はマリトーナちゃん、ギルドの受付
そして今とてつもなく怒られてるのがこの私S級冒険者のリトナ
「…普通戦いたくなるじゃん、強そうな魔物が目の前に居るんだよ?」
「ふ・つ・う!戦う以前に逃げるんですよ!いつか死にますよ!戦い狂う双剣使い様!」
【戦い狂う双剣使い】
これが私の肩書きだ
物騒だろ?私も思うよ
「よっ!まーた魔物ぶっ殺したのかー?リトナ!相変わらずだなぁお前よぉ!」
だる絡みタイプのこのおっちゃんはトゥーメイト、こんな人でもB級冒険者の凄い人
「今回は魔物も魔物ですよ…A級魔物のゴブリンキングですよ…」
「ゴブリンキング!?ったくさすがだな!そんなボロ剣で勝つとは参ったもんだ!」
トゥーメイトはそう言って私の肩を思いっきり叩いた
「リトナさんはなんでそんな戦いにこだわるのですか?」
なぜ戦いにこだわるのか?
答えは簡単だ
「戦いが好きだから、それ以外なんも有りませんよ」
私は微笑んでそう言った
もう一つ理由はあるのだが
狂花 利斗奈『くるいばな りとな』
私の元の名前だ
元はただの高校生だった
戦闘アニメ好きの高校生の筈だったんだ
ある日クラスで1つ映画が話題になってた
戦闘好きの主人公の死に際がグロいとか何とか…
「あれはやり過ぎだよなw」とか「吐き気凄かった…」とか話題になってた
「狂花さんは見たー?やばかったよね!」
クラスの陽キャが笑いながら私に話しかけた
私は迷いなく言った
「かっこいいよね、自分の望みで笑って死ぬなんて、羨ましい」
周りが変な反応をした
その時にわかった
『私がおかしいんだ』
その日から避けられてばかり
元々周りに人は居なかったけど
明らかに変わった事と言ったら机に百合の花が置かれてたり落書きされたり…
そこから人が大っ嫌いになった
違うだけで嫌うそんな人が
死のうと思ったけど気にいる死に方が見つからない
いつもみたいに机の落書きを拭いていると私を呼ぶ声がした
でも知らない声だ
虐めてる子でも、知ってる子でも無い
「貴方でしょ?狂人ちゃん!私気になってたんだー!お友達にならない?」
「…どなたですか?」
「冷たっ!流石、噂通りの子だね!私は月明褒也!『つきあかりほなり』同じアニメ好きなんだ!」
ホナリはそうやって私に話しかけて来た
“虐められてる“私にだ
自分が虐められると思わないの?
その時私はホナリを馬鹿だと思った
「…ご遠慮します、私に関わると虐められるよ?」
ホナリは少し迷った後に不思議な笑顔でこう言った
『僕と君で契約しない?裏切らないし、裏切らせない、君にはピッタリじゃない?』
私は驚いた、私が好きなアニメの名台詞だ
「知ってる?同じ物好き同士仲良く出来るんじゃない?」
でも私は断った
こんな優しい子が私のせいで虐められて欲しくなかったから
でも話しかけて来た
毎週、毎日、放課後にも私の元に来る
「私はその狂人度も好きだよ?」
そんな言葉に騙されてしまった
ホナリの安全も気にできず何が友達だ
無理矢理にも引き剥がせばよかった
でも確かにいつも楽しかったんだ
虐めなんてどうでもよくなって
ただ楽しくて、 ただ嬉しかったんだ
でもいじめっ子は、知無藍奈『しむあいな』は気に食わなかったんだ
物を隠しても、暴言を吐いても、何をしても何ともない私が
アイナは苛ついたのかついにホナリに手を掛けたんだ
屋上に呼び出して
突き落とした
唖然とする私を見てアイナは笑う
ホナリはただ優しかった
なんで殺したの?
「狂人ちゃんのお友達は死んじゃったよ?あんたも死ねば自殺と見せれる、死んで」
「…そっか」
私はそう言ってアイナを掴んで身を放り投げた
「お前のお望み通り死んでやるよ、だけど私は狂人、狂った方法でお前に復讐してやる」
耳元でそう言って笑った
ホナリが好きと言ってくれた狂人として死ぬ
私は狂人として生きて、狂人として死ぬ
戦う理由はいくつかある
でもその中で最も大きいのが
ホナリが好きと言ってくれた自分で居たい!
そう強く思う今の私の顔は笑顔だった
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