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今になって思うと、「異世界なんてあるわけない」と思う。
それでもまだ、異世界に憧れている。
ガタン、ガタン・・・。
早瀬ルカ。今日から晴れて雲南男子高校の生徒だ。
スマホをポケットから取り出して、アニメアプリを開く。
指でスクロールして、最近ハマっている「異世界転生物語」とか「異能至上主義」を見る。
今でも、「異世界があったら〜」、「異能が使えたら〜」と空想するのが大好きだ。
今日は、アニメの最新話が4つ出る日で、テンションが上がっている。
「舞阪駅ー、舞阪駅ー」
(乗るか・・・)
スマホをポケットにしまう。
周りには、数人、学生がいるぐらいだ。
この時間帯は、人が少なくて快適だ(人混み大嫌い)。
騒ぐ奴もいないし・・・。
(げ・・・)
電車のドアの向こうに、明るい赤髪が見える。
電車、早く閉まれ・・・。
「やばっ、閉まるじゃん!!」
『ドアが閉まります。』
(よし・・・)
「うおぉぉー!!」
「!?」
一瞬だった。瞬きしたら、電車の中に入っていたのだ。
(げ・・・)←本日2回目
「ルカー!今絶対、「げ」って思っただろ!」
「ああ。思った」
「あぁ!やっぱな!このヤロー!!」
「やめろ」
赤髪のウザい同級生、アイキ。
中3で同じクラスになってから、何かとつっかかってくる。
「つーか、なんで置いってたんだよ!」
「お前と一緒に行く約束をしたか?」
「何となく、そういう雰囲気になってたじゃんか!!」
「どういう雰囲気だよ?」
「そういう雰囲気!」
・・・アホ丸出しか。
スマホをポケットから取り出し、さっきと同様にアニメアプリを開く。
「お、ルカも「Animes」登録してるんだー?」
「ああ」
「で、何見るのー?」
(・・・アイキに見せたら、引かれそうだな)
こんな冷たい顔した奴が、空想とか異世界系が好きとか。
「見せない」
「見せてってば!」
「・・・見せな―」
「何の音ー?って、おい、どこ行くんだ、アイキ」
電車のイスから立ち上がる。
(何があったんだ?)
俺には理解できなかった。
でも、アイキにはこの状況が理解できているようだった。
「ちょっと、おい!」
電車が、何かに押されている。
とんでもない重力がかかっている。
「きゃぁぁぁっ!」
「うぇぇぇー!!」
子連れもいる。
(どういうこと)
窓が割れる音がした。
一瞬だけど、赤髪が割れた窓から外に出た光景が見えたのだ。
(アイキーいない!?)
幸い電車は止まっていて、俺も外に出れそうだ。
割れた窓から、顔を出す。
目の前には、信じられない光景があった。
アイキは黒いマントを羽織って、高身長の男性に剣を振るっている。
「は―?」
だが、その剣をくねくねと避ける男性。
(どういう状況?)
「アイキ!!」
俺は電車の凸凹に手を掛けて、アイキのいる上にのぼる。
「あ・・・?」
アイキの視線が、後ろにいる俺へ向く。
その時だった。
(・・・あ?)
生暖かい血が顔にかかった。