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おはよう、大好きな君へ。

1 - 第1話 俺にとっての幸せ

♥

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2024年04月23日

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おはよう、大好きな君へ。


1.俺にとっての幸せ


「ばあや、レストランを予約したいんだ。」

「勿論です、指定はありますか?いくつかお店をリストアップ……」

「いや、もう決めてある。凪と2人で話したんだ。ここ、ここがいいんだ。」


スマホからとある公式サイトを押して画面をばあやに見せる。

ばあやは画面をゆっくりとスライドさせ、下の方へと目を移し替えて行く。

そして何枚かの画像が出てくると納得したように声を出した。


「なるほど。」

「この景色を見たいんだってさ。凪が主張するなんか珍しいからちゃんと叶えてやりたい。」

「…変わりましたね、坊ちゃん。」


ソファに座り直してサイトの詳細を細かく見ていると窓の外を見ながらばあやが呟いた。


「サッカーはまだ続けられるつもりですか。」

「あぁ、もちろん。凪とW杯で優勝するよ。」


夕方の真っ赤に光にに照らされてばあやは目を閉じたまま深く何度も頷いている。

満足したような微笑みで目を開けると黙って部屋を出ていってしまった。


「…あ、」


ばあやの出ていった後のドアが閉まっていくのを目で追っているとスマホが突然音を出して振動しだした。

着信画面には凪誠士郎の文字だ。


「凪!予約、ばあやにお願いしたから来週の土曜日でいいか? 」

「うん、その日はオフにしてもらう。ありがとう、玲王。」


いつも通り眠たそうな声がスマホの向こうから聞こえてきた。

この声を聞くたびに嬉しくなる。

凪という宝物を俺が見つけたこと、父に納得させる為に凪が協力してくれる。

そして今ある限りの幸せを感じることができるからだろう。


「そうだ、玲王。寄りたいところがあるから当日は迎えはいいよ。」

「寄りたい所まで連れてってそのまま直接向かうのじゃダメなのか??」

「うん、俺1人で回りたい場所なんだ。」

「そっか、分かった。じゃあ後でLINEで場所だけ送っとくな。」

「ありがと〜。じゃあまた。」

「ん、またな。」


凪が電話を切るのをじっと待つとブツっと言う音の後声は聞こえなくなった。

ソファに寝転がるとその勢いのまま体を丸めてしまう。

凪の声の余韻に抱かれながらいつのまにか眠りについていたようだ。

目が覚めたのは夕食の時間。役1時間ほどだった。ばあやのノックの音で目が覚めた。






「坊ちゃんがお眠りの間、お父様の飛行機の便が出発されましたよ。」

「そうか。」


器用にフォークとナイフを使ってばあやの言葉を適当に流した。


「…坊ちゃんはいつ頃帰られる予定ですか?」

「明日の昼には帰るよ。来週の為に新しく服を買っておきたいから。コーチの体調不良のおかげで急遽オフになっただけだからさ。 」

「そうですか、ではお荷物の確認は今日中に済ませておくとよろしいかと。」

「あぁ、やっとくよ。ごちそう様。」


フォークとナイフを左右にそっと置くと手のひらを合わせる。

窓から入り込む風が心地よく思いついた。


「ばあや、屋上の鍵を貸して欲しい。」

「ええ、勿論です。お風呂の準備は整っているのでお好きなタイミングでどうぞ。」

「ありがとう。」


ばあやから鍵を受け取ると部屋を出て階段へと向かった。


(…凪のこと、父さんにいつか話さないといけねぇよな。せめて凛みたいに功績があればいいんだけど凪はまだ認められてねぇし。)


お互い練習の日々で予定が合わず潔と最後に会ったのは2年ほど前だっただろうか。

カフェでオレンジジュースを手に凛のことを話す潔の表情は今でも覚えている。

2人が上手く行っている中、俺と凪は順調でも問題は父だ。

サッカーを無理矢理突き通してきた上に凪と付き合ってるなんか父さんは許さない気がした。

今までも何度かお見合いの話を出された。

だからこそ男となんか話も聞いてくれない。



気がつくと階段は途切れ屋上まで辿り着いていた。


「寒ッ…」


夏の終わりを迎える冷たい風が俺の髪を優しくなびかせる。

隣に凪がいてくれたら…なんて妄想はさておき手すりに手をかけて街の明かりを覗いた。

真っ暗な世界に所々のあかりが溢れる。

この景色が昔から好きだった。

サッカーを反対されて退屈を壊せない時、泣きそうになりながらここに来た。

いつか凪にも見せてやりたかった景色。

ここに来たのは何年ぶりになるだろうか。

ブルーロックで俺は初めて何かを失った。

凪という自分だけの宝物を手放してしまった。

いや、俺が手放されたんだろう。

あの日、ブルーロックの最終日のこと。

俺は泣きながら凪の手を握って…いや、この話はまた今度にしよう。







「…今の凪がいるのは、一度裏切られた俺が動いた証であり証拠になる。捨てられてから俺は強くなった。誰よりもな。」


冷たい風は止む気配はなく、真っ暗な世界を横切っていく。

そっと目を瞑って手すりを握りしめた。




おはよう、大好きな君へ。

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