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感情は、何の意味も成さず。心に響くものは感情のない固形物だけだった。空を渡り歩く光の残映達が黄熟した光跡を残していた。私が筆を持たされてもあの空自体を描く事など、なんとおごかましい事か。本物を越える感動を産むのは何事も不可能だ、光の軌跡を掻き分けて今度は雲を観てみる。何時もは雲が多く、月はその背後に隠れている。だが今日は違う、星が贅沢な程に敷き詰められている、そしてその頂に月がいる。
「嗚呼。」
声が漏れだすのも不自然じゃない位のこの手に描けぬこの絶景。何度観ても感慨深いもんだ、と脳に反射される。思想は結びつけられたまま、情が湧く。
「っ…アッハハハハ!!」喉仏が大きく震える感触を身に伝わせ、月明かりの思うがままに踊り狂うというのは、ある一種の幸福感を覚えた、腹から熱が全身に伝わって地べたに倒れ込む。ドタッと大きく砂埃が舞い散る、純白の服は砂まみれで肌触りが悪くなった。だが悪い気一つせず、幸悦な面のまま命限りにもがく。光の残響は未だ此方に訪れる予定はないようで、小さな華のまま、頂にいた筈の月はまた太陽に引き摺り落とされる、そんな時刻の事だった。嗚呼夜よ、留まってくれ。
「……ハーッ…。」
肺に溜まっていた酸素が全て枯渇する程の溜め息が口から溢れる、空はまた太陽の元に動かされるだろう。「此方の意見は何一つと聞いてくれないのか」と、思わず地団駄を踏む。それと同時に砂まみれの服を見て落胆する。砂に紛れた石が皮膚にめり込んできて喧しい、と立ち上がって全身をパッパッとする…気力もない。鬱蒼な気分を払い落とすのも”今”なら無理だ、何時もこの時間になると不思議な位、血の気が引く感覚がある。「あ~あ…」それともなんだ…?ひとしきり笑ったから冷静になっただけか?