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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「………まして〜!あ…………さま!」


とぎれとぎれに聞こえる男性らしき声が頭に響き、目が覚めた。


先程も同じようなことが起きた。デジャヴ…と言っていいのだろうか


「…あ!はじめまして!睦月凛子様!」


目を完全に開くと、天井を背景にキャンドル頭の化け物が写った。


初めて見る光景に思わず声を上げてしまった。


「だ…誰!?」


彼は不思議な顔をしてこちらを見つめた。


「誰って…見たらわかるでしょう?ここの車掌のキャン・ドリーです!」


確かに彼、頭以外は、駅長のような見た目をしている。


だがこの一瞬で状況を理解する力は先程に全て使ってしまったんだ。


私の額から汗が流れ頬を通る。


彼の頭についてはもうどうでもいい。とりあえず飲み込むことにした。


ここはきっと現世ではない。私はきっと死んでしまったんだ。


だから彼のような化け物がいてもおかしくない。


そんな下手な設定で無理やり情報を咀嚼し飲み込んだ。


揺れる体をゆっくりと起こし、周りを見渡すとここは列車の一室ということが分かる。


「列車!?」


数秒間を開けて、また私は大きい声を出した。


あの場所でもっと考えるべきことがあったのに。


「はい!あぁ…状況説明してもいいですか?」


少し心配げな声を彼は出した。


「私はさっきから状況の説明を求めてるの!」


転々としすぎている出来事に腹が立って声を荒らげてしまう。


初対面の人に酷いことを言ってしまった事実には少し罪悪感が生じた。


彼は指を立て、「でも」と話を始めた。


「まずはこちらに来てもらう必要がありますね!」


「はあっ!?」


早く話を始めて欲しかったところにそんな言葉を投げかけられて、私は先程より声を荒らげた。


「あぁ…!申し訳ございません…凛子様!」


焦り始めたのか、彼の火のどこかから汗のようなものが滝のように出てくる。


そのせいで、彼の火が音を立てて小さくなっていく。


どう見ても演技にしか見えない。


「はっ!このままじゃ火が!!」


彼の脅しのような言葉はものすごい腹が立つが、可哀想なので付き合ってあげることにした。


まあ、そうしないとここから出るのは難しそうだ。


私は『呆れた』という感情が相手に伝わるような声で喋り始めた。


「あーはいはい!わかったわかった!行くから!」


めんどくさいし怖いし帰りたいで最悪だ。


だがこれも売れる小説のため、とまた言い訳をした。


「わ〜!よかったです〜!」


曇っていた声が晴れ、汗のようなものもピタッと止まった。


全部演技だったらしい。本当にめんどくさい人だ。


呆れて立ち上がると、「着いてきてください」と私の前を歩き始めた。


私は後ろ髪を引かれる思いで彼の後ろを続けて歩いた。


数分後、彼が急に足を止めた。


「つきました」というので、彼が手を指す方向に目線を向けた。


そこには、列車の椅子に4人の男女が座っていた。

月時雨を君と見る。

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