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「さっき警察に行ってきた。伝えたら警察が調べてみるって言ってくれたよ」
「よかった!」
「事件解決も近いですね!」
澤井が関係しているかもしれない。そう警察に伝えてみると捜査する、と言ってくれたこともあってやはり彼が犯人か、と安堵した六人。だが、その後赤羽が警察に呼ばれて行ってみた所、取り調べの結果澤井は事件とは無関係だった、と告げられた。
「しかも、その時知らない男も一緒にいて、だれかと思ったら澤井だったんだ。そしたら警察が『澤井さんも俺に話があるみたいなので、あとはお二人でお願いします』って言ってきたから、近所のファミレスに入って話してきた」
「なんで疑ってるのか聞かれて、三人と仲が良かったこととか起きた事件のこととか、いじめの噂から疑ってたこととか言って謝ったよ俺」
澤井は二人が亡くなったことも一人が行方不明になっていたこともしらない上、いじめられていたのは本当だが転校してからは三人のことはすっかり忘れていて、今はそこまで根に持っていなかったそうだ。
「タイムカプセルのことも知らなかったっぽいから多分犯人じゃないと思う」
「なんか、犯人に繋がりそうな話は聞けた?」
「それが…実はあの三人結構やんちゃで、澤井以外の生徒にもよく嫌がらせとかしてたらしくて…。だから、クラスの半分くらいは三人のことあんまりよく思ってなかったんだって」
澤井には本当に申し訳ない事をしたと思っている。赤羽はそう話を締め括った。
「恨んでる人物そんなにいるなんて…」
「犯人が余計わからんくなったな」
予想よりずっと多い容疑者に六人は頭を抱える。クラスメイトについて考えようにもこちらはなんの情報も持ち合わせていないためどうしようもできない。そんな状況の中、桃宮がまず原点に帰って、タイムカプセルを埋めた時の状況について考えてみよう、と発言する。
「二十年前誰かがタイムカプセルに指輪入れたんだったらその現場見てる奴一人はいるだろ」
「いや、多分誰もみてない。先生がこれだれの?って聞いてたけど誰も知らない感じだったし」
「タイムカプセル埋めた後に誰かが掘り返したとかは?」
「でも、テープでぐるぐる巻きにされてたし開ける時も大変だったから掘り返したとかは無いと思うけど…」
「じゃあやっぱクラスメートがこっそり入れたってことになるな」
やはり聞いてみた方がいい、という空気の中、黄星はある懸念を抱いていた。
「っていうか、このままだと莉犬も危ないんじゃ…」
「俺は大丈夫!だっていじめのことなんて知らなかったし、誰かに恨めれるような事をした記憶もないもん」
「ほんまか…?」
「莉犬くんの家にネックレス送られてきたりしてない?」
「それは分かんない。しばらく実家帰ってないし、俺宛の何か届いてるかは帰ってみないと」
「それフラグだよ」
「ホラー展開だったら絶対届いてる」
「この後重要な場面で出てきて襲われるんだろ」
メンバーから煽られ、もともと怖がりな赤羽は本当に心配になってきて実家に連絡をとった。しかし、やはりネックレスは届いていなかったそうだ。フラグクラッシャーと憎まれ口を叩きながらも、五人は赤羽が標的ではないと知って安心していた。
「…いや、待って、違うかも」
「え?何が?」
「俺、高校生の時に一回引っ越ししてて、小学校の同級生だと俺の住所知らないから送りたくても送れなかったのかも…」
「マジか」
「じゃあ全然安心できないね…」
むしろ、犯人は小学校の時の年賀状か何かから赤羽、健斗、はる、美羽の住所を調べてネックレスを送ることにした。しかし赤羽の家は引っ越していたのでネックレスを送ることができなかった。そこでタイムカプセルにこっそり忍ばせて赤羽の元へ届くように仕向けた。こんなストーリーも考えられてしまう。これは本当に赤羽が危ないのではないか。危機感が一気に高まる。それと同時に当の本人も生来の怖がりを遺憾なく発揮し、がたがた震えて気を紛らわせるようにスマホの画面を意味なくタップし始めてしまった。
「とりま警察行け」
「うん、早く行った方がいいよ」
「え…でもさ、犯人が莉犬くんのこと狙ってるかもしれないんだよ?迂闊に外に出るのは危ない」
「それもそっか」
「俺家でじっとしとく…家の鍵も窓の鍵も閉めたし大丈夫だよね…?でもこのままじゃまずいしどうしたらいいんだよぉ…」
メンバーの家同士そんな数分や十数分で行けるような近場にある訳でもない。今から行く、と五人は言ったが、赤羽はバレるかもしれないと彼等がくる事を拒んだ。じゃあどうするんだ、と心配する彼等に向かって赤羽は、「先生呼んでみる」とLINEをし、「今から来てくれるって」と安心した様子で報告した。
「先生ならネックレスのことも知ってるし、家も近いらしいからいいなって」
なんだそれなら…と引き下がろうとする五人。その瞬間、紫月があることに気づく。震える声で、「タイムカプセルに指輪を紛れ込ませるタイミングって、タイムカプセルを掘り起こした時にしかないって事だよね」と確認をとり、それがどうした、と反応するメンバー。確かにみんなが見ている前で紛れ込ませるのは至難の業だ。赤羽は「タイムカプセルを中心にみんながその周りを囲んでた感じだし、開けた直後はみんなそっちに注目がいっていた。自分もずっと周りの様子を見ていたため指輪を入れる隙はないと思う」「自分は最後に名前が呼ばれたが、配り終えたと思った時に奥にネックレスがあるのが発見された」と言っている。しかし、入れるとしたらそこしかチャンスは無かっただろう。別に不思議なこともない、という彼等に対し、紫月はこう言った。
「タイムカプセルにさりげなくネックレスを仕込める人物が一人いるよね…?」
「……!」
「まさか…」
「そういうこと…⁈」
「え、まってどういうこと?」
「だから…タイムカプセルの中身を生徒に配ってた先生しかネックレスは仕込めないんだよ」
「…あ……確かに、俺配られた後手紙に夢中で、タイムカプセルから目話してたからその時に…?」
盲点だった。しかし、担任が三人を殺したとなると動機が思いつかない。混乱する赤羽をよそに、
ーーチャイムが、鳴った。
「やばいチャイムなったよどうしよう⁈出る?」
「絶対出んな!死ぬ!」
「今警察呼んだ!」
「いやでも、ずっとチャイム鳴ってて先生が『おーい、大丈夫かー』とか言ってる…マジで怖いたすけて」
「やばいやばいやばい」
「頑張って!莉犬くん!」
「ここ頑張んないとマジ死ぬで!」
立て続けに鳴るチャイムの音に怯えながら、必死にサイレンの音を探して四つの耳をそばだてる赤羽。ついに、その耳はサイレンの音を感知した。
「サイレンの音聞こえる!警察来たんだ!」
「おぉ!」
「よかったーー!」
「一安心やな!」
その後、赤羽との通信は途絶えたが、五人は「警察と話をしているのかもしれない」と考えてディスコを開けっぱなしにしておいた。よくは聞こえなかったが、遠くから怒鳴り声が聞こえた気がするのでおそらく大丈夫だろう。
翌日ディスコに戻ってきた赤羽は早速、昨日のことについて報告を始めた。
「サイレンの音が聞こえたから警察だ!って外に出ようとしたら、ドアの向こうから『大人しくしろ!』って警察が言ってるのが聞こえて、怖くなってちょっとだけドア開けてみたら警察と先生いた。で、そこまでしなくても…って思ってたら、よくみたら先生の手に刃物が握られてて…」
「……マジ?」
「本当に危なかったんだ…」
「一歩間違えたら死んでたよ…」
あまりの九死に一生ぶりに驚く五人。あそこで通報していなかったらどうなっていたことか、と背中に冷たいものが走った瞬間でもあった。その後、赤羽が警察に聞いたところによると、
「先生は健斗とはるを事故に見せかけて殺した」
「二十年前、俺が転校してくる前先生は三人から嫌がらせを受けていた」
「でも、俺たちがあの頃やってた探偵ごっこやリアルケイドロが先生の人生をめちゃくちゃにしていた」
「探偵ごっこというのは、帰宅途中の先生を尾行するという今考えるとやばい遊び」
「その時、一人が先生が浮気してる現場を目撃して学級新聞で発表した」
「先生の話では、その女性はただの知り合いだったらしい」
「それのせいで、噂が他の先生にも伝わり、最終的に先生は離婚されてしまった」
「リアルケイドロは、先生の私物をこっそり盗んで泥棒役がそれを持って逃げ回るっていうこれもやばい遊び」
「俺は見てただけだったけど、その時盗んだものが先生の亡くなった母親の形見のネックレスだったらしい」
「先生は大事な形見をなくして、家族とか親戚から白い目で見られる事になった」
「それから先生は『二十年後四人の人生が楽しいであろう時期に殺してやる』って復讐を誓ったらしい」
「美羽はその中でもリーダー格だったから、滅多刺しにされて庭に埋められてた」
「あの頃はただの遊びだと思ってたけど、先生があんなに辛い思いをしてたなんて思わなかった…」
先生の意外な過去に、全員が複雑な感情を抱いていた。果たしてこれは、先生が悪、と言えるのだろうか。子供の純粋な遊びにより、一人の人間の人生が狂わされるなど、あって良いことなのだろうか。
「……タイムカプセルにネックレスを入れたのは、あの事を覚えているか、確認するためだったのかもしれない」
誰かがそう呟いたのを最後にディスコが沈黙し、やがて全員が退出した。最後に画面に映ったのは例の黒いネックレスの写真だったという。