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微笑む恋人を横目にドラマを見るのが好きだった。
夜、ふと目が覚めて横を見るとすやすやと眠る恋人の姿が目に映る。
白銀のふわふわとした兎の様な髪に長いまつ毛。表情がころころ変わる所も、泣き虫な所も、少しツンデレな所も全てが可愛くて愛おしい。
「、幸せだなぁ笑」
温かい家。美味しいご飯。綺麗な服。健康な体、そして愛し合う恋人がすぐ側に居る。
当たり前の幸せ。僕はそれがある事が凄く嬉しく思う僕はその甘いハッピーエンドに浸りながら、恋人のおでこにキスをする。
君の側はとても暖かくて、安心する事が出来る。だから、君の側で眠るのが好きだった。
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「ん、、」
窓から差し込む光で目を覚ます。窓を開けると、春には少しばかり冷たいそよ風が部屋の中に吹き渡る。
目の前に広がるオレンジ色の太陽を見て、朝になったのだと感じる。
二度寝をしようともう一度布団に潜ると先ほどのそよ風のせいか冷たくなっていて、寒かった。
こんな寒い中、外にも出たくないし、誰にも会いたくなくて太陽を睨んだ。
「、起きたくないなぁ、。初兎ちゃんも帰っちゃったし、」
僕は数時間前まですぐ側で寝ていた恋人の事を思い出す。
恋人ともう一度会うためには起きて仕事に行かなければ行けない。
はぁ、と溜息を吐きもう一度寝ようとした体を起こす。
朝ご飯を食べようとリビングに向かうと机に1枚のメモとラップで包まれたご飯が置かれた。
「、?何だろこれ?」
疑問に思いメモを開こうとするが少し考え、冷蔵庫からコーヒー取り出しコップに注ぐ。コーヒーを持ちながら椅子に座り、片方の手に先程のメモを持ち目を通す。
…………………………………
いむくんへ
この手紙を読んでるって事は起きたって事やんな。仕事あるんやからいつまでも寝てたらあかんで。(起こさなかった僕は優しい)
まぁ、どうせいむくんの事やから
「初兎ちゃん居ないし仕事行きたくない〜泣」
なんて思ってたんやろ。
もう、仕事行かんかったら僕に会えないんやで。寂しいとか思わんの。
僕は寂しいのに、。(やっぱ無しで)
だから、僕はそんないむくんの為に朝ご飯作ったんやで。
僕、不器用やから味は不味いかもやけど、いむくんの事考えて頑張って作ったから良ければ残さず食べて欲しいな。
今日も大好きやで。
初兎より
…………………………………
手紙を読み終えると自分の口の端から笑みが漏れた。自分の事を思い、ご飯を作った事を考えるだけで嬉しい。
僕はお皿からすぐさまラップを外し、包まれていたご飯を口に運ぶ。
「、、美味しい、」
どこか柔らかで温かいご飯を僕は一口一口味わいながら噛み締めた。
ふと、外を見ると
一瞬だけ結露越しの街に見える雲が白い翼の様に見えた。
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おやつの買ったドーナツを口に運ぶ。
白いホワイトチョコがまるで天使の輪っかの様だ。
「ん“〜!!美味しいッ!!」
顔を仰いだ僕に食べられていくドーナツは哀れな生贄。
「いむくんは、今日も元気やな笑」
ドーナツを口一杯頬張る僕を見て優しく微笑む初兎ちゃん。
細まる目の隙間から見える宝石みたいな紫色の瞳。
「綺麗、」
幸福の定義さえ覆るほどに綺麗で美しいその瞳に僕は全てを奪われた。
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もう嫌んなった。全部が。
積み重なっていくライブのダンス練習での疲労。溜まっていく音源の提出。
愚痴、弱音を全て初兎ちゃんに話す。初兎はそんな僕を優しく抱き締め、慰めてくれた。
、今はひたすら初兎ちゃんと居たいな。
もっと もうちょっと居たいなって思った。
僕は嫌な出来事から目を背け、初兎ちゃんの背中を強く抱きしめ返した。