コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「りうらおはよう!!」
元気に笑い私に微笑みかけるないくん。
「…はよ……」
わざとめんどくさそうに挨拶をする。
それを元にいつも通りないくんとのくだらないやり取りが始まる。
「……りうら冷たいッ!!
酷い、俺こんなに好きなのに泣…っ………」
ないくんはわざと被害者ぶる様に泣く振りをして私に抱き付く。
「ちょっ、!!暑いんだけど!!離れて!!」
私は力いっぱい体を押しないくんから離れようとする。
「…はぁ、ないこも飽きんなぁ…」
突如、後ろから聞き慣れた関西弁が聞こえ私に抱き付いていたないくんの姿が消える。
後ろを見るとないくんがクラスメイトであるまろに襟を掴まれ、持ち上げられていた。
「え〜、別にいいじゃん。まろのケチ…」
ないくんはぷくーと頬を膨らませ、まろに悪態を付く。
「あのなぁ、りうらは女やぞ?もうちょい距離感いうもんを考えろよ?」
そんなないくんに呆れたという風に溜息を付くまろ。
……、止められちゃった。
このやり取りを止められた事を少し残念に思う。
もうちょっと続けていたかった…なんて。
怒りながらも楽しそうに話す2人の様子を見ているとなんだか胸が痛む。
「…何だろ、。この気持ち……」
最近気付いた自分の初めての感情に頭が上手く働いてくれない。
もう少しで分かりそうなのにはっきりとは輪郭を現してくれない感情に溜息が出る。
そんな事を考えていると一時限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
結局、今日も私の感情は分からないままなのかな……。
放課後、一緒に帰ろうと思いないくんを探す。
「おーい!!ないくん〜?」
私は名前を呼びながら体育館、教室と様々な場所を周りないくんを探す。
等々全ての場所を探し終えるという時ないくんの声が何処からか声が聞こえてきた。
「…?」
私は声が聞こえてきたであろう方向にある校舎裏に向かう。
「…君の気持ちは嬉しいんだけど、。
付き合うことは出来ないんだ。ごめんね……」
「あ、いえ気持ちを聞いてもらう事が出来ただけでも嬉しかったので…気にしないで下さい笑」
其処に女子からの告白を断るないくんの姿があった。
告白を断られた女の子は目に涙を溜めながらもないくんに笑いかけている。
やっぱ、モテるんだな。ないくん。
告白されているんだからきっとそうなのだろう。
私の幼馴染なのに…。
そう考えるとまた胸が痛んだ気がした。
「あの、最後に1つ聞きたいんですけど。
その告白を断った理由って聞いてもいいですか、?
あ、別に怒ったりとかしてる訳じゃなくてただ少し気になって……」
女子はそう言いないくんに質問をする。
確かにそうだ。
なんでないくんは告白を断ったんだろう。
あれだけ顔が良いのに彼女が居ないのだから了承すれば良いのに。
それに告白した女子は学内で1,2番を争う程の美女。
断る理由がまったくもって見つからない。
「…それは……」
ないくんが口を開き、話出そうとしたその時だった。
「ないこ」
誰かにないくんの名前が呼ばれる。
気がつくとないくんの後ろにはまろが立っていた。
まろはかつかつと足音をたて女子の元に歩み寄る。
「あんま、無理に聞かんといてあげて?ないこ困っちゃうやろ?」
にこって笑いながらも何処か有無を言わさない笑みを浮かべるまろ。
「は、はい…!!//」
女子は至近距離でイケメンの顔を見たからか少し顔を赤らめる。
「ん、ええ子笑。今日はもう遅いからまた今度な?」
女子はまろの言葉にこくこくと頷きその場を去っていた。
…そろそろ声かけても大丈夫かな、?
女子も居なくなったし。
そう思いないくん達の方を見る。
「え、?」
嘘…?何で?
喉がカラカラになり体温が急速に冷えるのを感じる。
其処にはまろがないくんの唇にキスをしていた姿があったのだ。
「ちょっ、まろ!!此処学校…/」
「んー笑?何照れてんの?」
「…っ馬鹿ッ…/」
悪戯っ子の様に笑うまろの胸板を叩きながら顔を真っ赤にするないくん。
あぁ…そう言うことか……。
つまり…ないくんはまろと付き合っているんだ。
女の子ではなく男の子のまろに。
…何だ、最初から叶う訳なかったんだ……。
「あれ…?何で涙なんかっ、?」
気が付けば自分の頬に涙が伝っている事に気が付く。
今までにない程苦しくなる胸に目から溢れる涙。
そしてようやく自分の感情が理解できた。
………そっか、私はないくんの事が好きだったんだ…
「、今さら、か…」
私は幸せそうに微笑む2人を暫く見つめた後、鞄を持ち家への帰路を急いだ。
家に帰った後、私は棚に鞄を投げ付けた。
バサバサと落ちる様々な雑誌。
その中にはおしゃれ研究の為に買った可愛い女の子が映った雑誌。
全部全部、よく考えてみればないくんの為に可愛くなろうと必死だったんだ。
ほんと、馬鹿らしい。
制服のスカートなんてもう履かない。
好きなピンクの私物も全部いらない。
全てをゴミ袋に詰めていく。
…この長い髪も。
ハサミに通した紅く長い髪を見つめる。
ないくんが綺麗な髪の毛だと言ってくれたから伸ばしていた。
でも、これも今はもう
「要らない」
一息にハサミで髪を断つ。
はらりはらりと髪の毛が散る。
私の思いが散る様に。
私はその日、女という“性”を捨てた。
高校生活が始まっていつ頃だっただろうか俺のクラスに転校生が来た。
「大神りうらっていいます。良ければこれから仲良くして下さい」
赤い髪に人を引き込む様な大きな瞳。
なんだか……
「…りうらに似てるな……」
りうら。
俺の幼馴染。
突如、数年前に転校してしまった。
未だに何故転校してしまったのかは分かっていない。
「ないこ?どうしたん?」
隣にいる恋人のまろに声をかけられる。
「え?あ、いや何でもないよ笑」
はは、と苦笑いをしながらなんとかその場を誤魔化す。
そんな俺に転校生が声をかけてきた。
「君、内藤ないこって言うんだっけ?」
「はは、はい!!」
突然の事に思わず変な声を出してしまう。
「笑ないくんって呼んでも良いかな?」
「全然良いよ、?じゃあ俺はりうらって呼ばせてもらうね?」
「………うん!!これからよろしくね」
転校生は微笑みながら手を出し俺はそれを握り返した。
少しの違和感を抱きながらも俺は転校生と友達になった。
その転校生からは微かに……
幼馴染のりうらと同じ百合の香りがした。
???
叶わない恋なら、貴方の側に居られるなら。
せめて”俺“友達のままで、
男の子のままでいいよ。
ないくん…好きだよ。
幸せになってね。