殺し屋パロ④
⚠️注意⚠️
今回ものすごく長くなります(約3500……)
🍌side
空を眺める。
嫌という程の曇り空。
これから愛する人を手がけなければならないという事実しかそこにはなかった。
ぶわ、とひときわ強く風が吹いた。
髪が大きく揺れる。
懐かしいこの感覚。
いつだったかは思い出せない。
🍌「ぁ……!」
声になりきれなかった空気が口を出ていく。
目が捉えたのは…🍆と☃️の姿だった。
いつぶりに見ただろう。
いい意味で変わっていないように見えた。
……今からこんな泣きそうになってちゃだめだな。
俺は今日戦わなければならないんだ。
武器を手に取るために振り返る。
🐷「?!🍌、後ろ!!!!」
🍌「っ?!」
彼の叫び声に応じて後ろを振り返れば、向かってくる鋭い弾。
明らかにスナイパーライフルだ。
急いで身を捩り、間一髪のところで銃弾を躱した。
相方の声がなければどうなっていたことか。
🍌「どこか、別のとこから打たれて……る?」
🐷「い、いや……」
“☃️だった。”
🍌「は……?」
🐷「なんでかは分からないけど、確実に☃️が撃ってた。」
🍌「そんな、だって俺たちのターゲットじゃ……」
🐷「……」
本来なら、僕達はあの二人をこの場で一方的に殺してしまうはずだった。
B・Bが裏でどうにか口実を作ってこの場に呼び寄せていた……はず。
なぜ向こうがこちらを?
武器なども見せていなければ、情報の漏れなどたったのひとつもない。
その時
🐷「っくる!」
🍌「ぁ、🐷……!!」
銃声がない。
仲間だった頃から優れていた☃️の技術によって改造されているのだろう。
けど確かにそれは向かってきていて
🐷「っ……てぇ」
🍌「🐷!今、腕……!」
彼の腕を、鋭い銃弾が小さく掠めた。
左上腕部が裂けた黒いワイシャツの上から分かる。
少しずつ滲む鮮血。
あれだけしか触れていないのに、こんなに……
さっき自分が撃たれた時、躱せていなければ。
当たっていたのは胸部。
間違いなく命はなかっただろう。
🐷「これくらいならすぐ止血できる、痛みも少ないし幸い撃たれたのは左腕。」
🍌「……無理はしないで」
🐷「わかってる。……ありがと」
血の匂いが鼻腔を擽る。
何度も嗅いだ匂いだが、やはり慣れにも限界がある。
🍌「……☃️先撃つ」
🐷「りょーかい」
ならば先手を取られぬうちに。
スコープを覗き、照準を合わせて。
引き金に手をかけ、指に力を込める。
🍌「っ……と」
引き金を引くと同時に、腕から全身へと巡る衝撃。
これだけの勢いの弾を撃つには、相当な労力がかかる。
しかも音を出さないための細工がしてあるため、極端に重い。
素人など、できたものではない。
🐷「……避けたな、今の。」
🍌「くっ、……今の避けられたのか、」
反射神経は、最期に会った時から変わっていないのか
相変わらず感覚は鋭いようだ。
上手く当たらなくて悔しい……フリ、だったのかもしれない。
心のどこかで、弾を躱しつづけて欲しいという思いが渦巻く。
撃ってるのは自分なのに。
死なないで、とか馬鹿みたい。
悲しくて、恋しくて。
でも、もうどうにもできなかった。
🐷「🍌、……無理すんなよ」
🍌「ぁ、ごめ……ありがと」
なぜこうなってしまったのか。
4人で活動していた頃の記憶はあるのに。
🍆と、☃️と決別した時の記憶が消えていて、分からない。
ずっと。
自分が何故この職に至ったのかも、脳にはなくて。
怖いのに、手は動く。
動かないといけない気がしてる。
そして再び
🐷「よし、☃️に一発あたって……?!っい……た」
🍌「?!🐷……!!」
彼の腕を、銃弾が掠めた。
さっきより少し深く、弾も
鋭い。
恐らく、……🍆の銃弾だ。
声すら出ない様子の彼。
ビルの灰色に滴る、あかいろ。
少し目眩がした。
🐷「……」
🍌「……わかった、気をつけてね」
「一回下がる」と、彼からのジェスチャー。
了解の合図を出す。
端正な顔は悔しげに、痛みをこらえるように歪んでいた。
2人がいるビルに目を向けると、そこには🍆の姿が一つだけ。
さっき🐷が「☃️に当たった」と言っていたから、☃️は手当でもしているのだろう。
向こうのビルとの距離は、50メートル弱と言ったところか。
銃を握る手が震えて、上手く撃てそうになかった。
早く、撃たなければ。
早く、早く……!
今すぐにでも撃たなきゃいけない。
自分の相方だって、かなり追い込まれた状況。
一刻も早く撃たなきゃいけないのに。
手が動くより、涙が零れる方が早かった。
こんなに泣いてるところを見られてたら今頃、
「はは、泣くな泣くな。やっぱり🍌はまだまだだな」
なんていつものように……今までのように茶化してくれていただろうか。
考えれば考えるほど、苦しいほどに恋しくて。
でも……ここで殺されたら、🐷に負担がかかってしまう。
微かに震えの残る手で、スナイパーを手に取った。
涙で歪む視界を拭って、スコープを覗く。
スコープの円形レンズいっぱいに、🍆の横顔が映っていた。
気づかれぬように、と気配を消した……のに。
レンズ越しに目が合った。
あまりの驚きに、手が硬直する。
でも自分の驚きとは反対に、貴方は何故か微笑みを浮かべていた。
優しい表情をしているのに、その瞳はどこか切なげで。
哀を帯びたその表情までもが、愛しい。
涙腺がまた緩む。
🍌「🍆、さ……っ」
口にしない方が、楽になれただろうか。
でも、心に刻み込まれてしまった名前と顔はもう手遅れだった。
彼の口元が優しく緩む。
変わらず魅力的な動きに魅了されたのも束の間。
スコープに映る彼の口元が、柔和な動作でこう告げた。
『お れ を こ ろ し て』
🍌「、ぇ………?」
声を発していた訳ではなかったけど、はっきりとそう言っていた。
スコープ越しの彼の瞳は、哀しげに揺れている。
その表情に心を奪われて、息が止まりそうな感覚を覚えた。
苦しい。
🍌「っ、……」
引き金に手をかける。
やっぱり手は震えていた。
引き金を引く直前、脳を巡ったのはあなたと活動していた頃の記憶。
……
貴方は一度も「名前」を呼んでくれなかった。
活動中も、拠点に帰った時も。
記憶の限り、一度も。
職業上、個人情報の漏洩を最も恐れていた当時の状況からすれば無理もない話。
コードネーム……俺なら🍌とか。
これだって個人情報を洩らさないため。
本名では、呼べない。
呼んではいけない。
分かってたし、どうしようもない事だった。
それでも
名前を呼んで欲しかった。
貴方の口から、俺の本名を。
聴きたかった。
もし殺し屋として出逢わなければ。
何か別の場面で、世界線で出逢えていれば。
名前を呼んでもらえていただろうか。
貴方を手にかけることなど、なかっただろうか。
結ばれていただろうか。
……
考えても仕方ないのに。
脳を渦巻くのは後悔と、やり場のない悲しみと、やるせなさだけ。
🍌「ふ、っ……」
そんな思考を追い払うように。
息を大きく吸い込んで、引き金に手をかけ直す。
切なげな微笑みを浮かべる貴方。
何度見ても、何度思い返しても
……大好き。
🍌「ぼん、さん……
「『ばいばい』」
引き金を引くと同時。
自分と貴方の声が重なった、気がした。
鈍く冷たい銃声が、雨雲に覆われた藍の街を独占する。
貴方が紅に覆われて、倒れていく様子が見えた。
銃声の抑制をしていない……というよりできない、すごく強力なスナイパー。
貴方が苦しまないよう、一撃で殺せたかな。
🍌「ぼんさん、……大好き、でした。」
最後ぐらい、名前を呼んでもいいよね。
ぼんさん、もし何年も後に天国で
いや、たくさんの人を殺めているから……地獄、かな。
会うことが出来たら、その時は、名前で呼んでくださいね。
この気持ちも、ちゃんと伝えさせて。
🍌「、……」
労力のいる銃を何発も撃って、身体も精神もとうに限界を超えていたようだ。
頬に雨粒が触れた感覚が最後、俺の意識は途切れた。
コメント
6件
...これもう終わりだろうけど続きが気になる..
感動!、、、クオリティが高すぎる、、、