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「っえ…?」
目の前で鮮やかな血を出して、ぐったりと倒れ込んでいる人の姿。
その人の青白い肌に、生気は宿っていなかった。
「なんで、なんで…っ!!」
俺はその人に駆け寄って、肩をゆする。
「開けて、目を開けてよ…っ!!」
肩を握った手に、真っ赤な血がべったりとつく。鉄のような、生臭い匂いがただよう。
ドクドクと未だに溢れている血は、俺の靴を赤色に濡らす。
「ねぇ、開けて、目を覚ましてよぉ…っ!!」
俺が涙目になって視界がぼやけている…その時。
「__君!!」
「大丈夫!?」
__窓から、誰かが入ってくる。
大人の男の人…だ。
「っ…なに…っ」
「大丈夫、俺らは敵じゃないから」
「やめて!!」
男の人が伸ばしてきた手を、俺は思いっきりはたいた。
俺も殺されるかもしれない、と感じて、部屋の隅へ走る。
「ほら…凸さんは強引すぎるんだよ」
「さもさん!?俺はこれで今まで子ども助けに来たんだよ!?」
「知ったこっちゃないよ…」
鮭?のヘアピンをしている男の人は、凸マークのピンをしている人にため息をこぼす。
「怖くないよ。俺らと一緒に行こう?」
鮭のヘアピンをしている人は、俺に手を差し伸べてそう言う。
冷汗が止まらない。逃げたくても逃げれない。まるで、金縛りにあったみたいだ。
「……」
「なに、凸さん」
「さもさんも強引じゃね?」
「うっさい」
「口悪っ!!」
__なんで…。
なんでこの人たちは、目の前に人の死体があるっていうのに、こんなに平然としていられるんだろう。
「ってか、早くしないと〝アイツ〟ら嗅ぎつけて追ってくるよ?」
「あ、そっか。おどろくさんにも早くって言われてるし…」
「嗅ぎ、つけて……」
とりあえず、と呟いた鮭のヘアピンの人は、俺の手を無理やり握ってくる。
「っ…!!」
ゾクッと背筋が凍る感覚。離したくなる手を、男の人はもっと力を入れて握る。
「さもさん、強引…」
「凸さんには言われたくないね」
「さもさん、俺そんな風に育てた覚えないよ?」
「俺凸さんに育てられてないから」
この人達いつまで言い争い続けるんだ…。
「…ねぇ」
俺は黒い車の後部座席に座らせられた。
ルームミラー越しに、男の人と目が合う。
「どうしたの?」
「…あなたたちは…一体何者?」
「……今はまだ、言えないかな」
「〝まだ〟?」
「うん。君、ニグって言うんだよね?」
「ぇ」
なんで、俺の名前知って…。
「ニグ、大丈夫。俺らが来たから」
助手席に座っている凸マークの人は、わざわざ振り返って俺の手を握る。
「あれ、凸さん珍しくいいこと言うじゃん」
「珍しくはいらない」
「明日槍でも降るかな」
「今日さもさん言葉の刃物すごいよ…??」
そんな言い合いを聞きながら、疲れているのかまぶたが降りてくる。
俺はそのまま、深い眠りについた。