──放課後。
チャイムが鳴り終わると同時に、京志は一人で帰路についた。だが、学校の門を出て少し歩いたところで──
「おーい、転校生さんよぉ!」
背後から、ぞろぞろと足音。振り向かなくても分かる。5人。前に立つのは春也。その背後に、いかにもなヤンキー崩れの仲間たち。
似合わないサングラスをかけた眉毛のない川上がガムをくちゃくちゃと噛みながら言う。
「ちょっと待てや。オレら、いちおうこの学校の“流れ”ってやつを大事にしてんのよ。分かるやんな?転校生が、朝からあんな態度とってたらさ──」
「何が言いたい。」
京志の声は低い。だが、春也はまったく怯えない。むしろ楽しそうに口元を歪める。
「簡単や。オレと、手合わせしてこ。ここの“掟”、身体で覚えろや。」
周囲がククッと笑う。次の瞬間──後ろの一人が京志に飛びかかる。
だが。
──ズガッ!
その手が届くより早く、京志の膝がその男の鳩尾に突き刺さった。
「……ッ、げほっ、ぐぅ……!」
一撃。完全に沈黙。周囲がざわめいた瞬間、京志が静かに春也に目を向けた。
「順番に来るか? まとめて来るか?」
春也が目を細める。その目に、ほんのわずかに…笑いが混じる。
他の少年が狼狽する中、春也だけは違った。
「へぇ──おもろいやん。」
場の空気が変わった。これはただの新入りイジメじゃない。何か、始まる予感。
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