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アトラス号

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アトラス号

第16話 - 第16話　亡霊使い

118

2025年03月20日

#SUBくん

#参加型

#一次創作

#船

みさ(SUB)

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みさ(SUB)

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葵の冷徹な笑みがさらに深くなる。

彼女はゆっくりと歩み寄り、詩音の目の前に立った。

「見せてあげるわ。」

葵の声は静かで、でもその響きには恐ろしい冷徹さが含まれていた。

葵が片手を軽く掲げると、その手のひらから薄い霧のようなものが広がり、目の前の空間が歪み始めた。

詩音はその変化に気づき、恐怖の表情を浮かべた。

「これが、私の力。」

葵の声が低く響く。その言葉に詩音は震え、すでに視界が変わり始めていた。

一瞬で、空間が変わる。

目の前に現れたのは、詩音が過去に何度も見た、恐ろしい光景だった。

父の顔。

「お前は俺のことをどう思ってる？」

父の声が、どこか遠くから響く。

その表情は、冷徹で、無表情。

過去に何度も聞いた言葉を、葵の魔法が現実のように引き出してきたのだ。

「お前なんか、クズだ。薬でも何でも飲んで、どうしようもないゴミだ。」

父の言葉が、詩音の脳内に鮮明に蘇る。

そして、目の前の父は笑っていた。

その笑みは、詩音にとって、最も恐ろしいものだった。

「お前は、私のために何もできない。だから、これからも従え。」

その言葉が響くたびに、詩音は胸を締め付けられるような感覚に襲われた。

彼女は、泣きたいのに、涙が出ない。

それどころか、彼女の心は燃えるような怒りに満ちていった。

「違う！もう……」

詩音が声を震わせながらも、必死にその幻を払おうとする。しかし、幻は消えることなく、続いていく。

「お前は逃げられないんだよ。薬を飲まないと、力を出せないじゃないか。」

父の声は冷たく、どこまでも絶望的だった。

葵はその様子を冷ややかに見つめていた。

彼女は無言で、詩音に更なる幻を送り続ける。

詩音が涙を流しそうになった瞬間、葵が低く告げる。

「これが、お前の”真実”よ。”弱さ”を隠して生きることが、どれだけ惨めか、わかるでしょう？」

詩音の顔は歪み、膝をついて崩れ落ちた。

心の中で、父の言葉が繰り返され、彼女はその言葉に支配される。

彼女が抱えてきた過去の闇が、さらに深く、恐ろしいものとなって浮かび上がる。

その時、葵は微笑みながら言った。

「どうせ、こうして見ることすらできるのは私だけなのだから。」

詩音は、心が壊れそうなほどの痛みに耐え、顔を上げようとするが、足が震え、どうしても立ち上がれなかった。

葵はその姿を見下ろし、冷ややかに笑った。