⚠ワンク
※約6600文字 長い
※中太 太中じゃない
※太が乙女っぽい キャラ崩壊注意
※キスしてる
※太がまだポトマの時期
※終わらせ方雑
※相手を好きと発言してるシーンあり
※その他諸々自衛お願いします
「あーあ、中也とこーーーんなに長い間二人きりなんて…」
「ほんと死にたくなる」とお決まりの文句を云い、詰まらさそうに爪を眺める。
久々の明け方近くに行われた壊滅任務の帰り道。訳あってバス停でバスを待っている。
首領が面白がったせいで、伽藍とした殆ど人の居ない田舎での任務を任された。
二時に任務へと向かい、三時頃につき、五時未満に終わらせ直ぐに帰り報告書を書いて別の仕事に取り組む。
予定だったのだ。それが、実際に任務自体が終了した時刻は七時だ。さすがに時間にそこまで執着のない俺でもキレそうだ。
行きは運転手を連れて車で行ったのだが、途中太宰が駄々を捏ねて交代。そして事故る。終いには運転手のせいだと責任を押し付ける。
その運転手は別の件で太宰の機嫌を損ねさせ死んだ。
別の奴を呼ぼうにも電波が無く電話が出来ない。
それもこれも、さっさと終わらせたいと準備をせずに任務に来た挙句車も運転手も駄目にした太宰の所為だ。
そんな太宰の所為で、結局バスを待つことにした。
何せ、俺の能力で帰ろうにも太宰の異能力無効化の能力のせいで太宰をつれて飛べないのだ。
結局喧嘩をしていた事も相まって、今の時刻は八時半。
すっかすかのバス予定表に書かれた次のバスは一時間一五分後。
「こーーーーーーんな長い時間中也と二人きりな」
「うるせぇな!元はと言えば手前の所為だろうが!」
帰ろうと思えば俺だけでも帰れるのだ。だがしかし一応幹部の太宰を置いていく訳にはいかない。
こンなバスを待つより歩いていって電波の届く所まで行った方が効率が良い。だが太宰が幹部命令を出してまで止める。
「いや、マジで此奴邪魔過ぎだろ…」
「酷いなぁ」
爪を見ることに飽きたのか、顔を上げて俺を見つめる。真っ黒な、何処までも深い瞳で。
ずっと見ていると、自分の意思がぼんやりと消えていく。きっと、太宰が情報収集の時相手をじっと見るのはこの為だ。相手の心理を探ろうと、無理矢理奥まで入ってこようとする目を。向けて。
「ふふふ、今中也が何考えてるかなんて知っても別に何て事無いさ。どうせ『太宰の所為で帰れない太宰死なす』とかだろうしね」
くすくすと笑い乍ら莫迦にしたような目で此方を見る。先程の真っ暗な瞳とは違って、年相応の、でも少しばかり此方の世界の住人の、夜明けの様な瞳で。
この、俺だけに向けるこの瞳が、俺は少しだけ好きだ。太宰には一生云ってやらないけど。
「…………ねぇ中也」
吐息混じりの少しばかり甘ったるい声も、俺だけの。だったが、最近は色の仕事の時に使ってるらしいので、これは嫌いだ。
「なんだよ」と、少し無愛想に返事をする。
「私が、気分だけで車を壊して運転手を殺すと思うかい?」
いや、そう思うに決まっている。なんて言えば面倒臭くなる事は目に見えているため、「さぁ」とでも云うように肩を竦める。
「酷いなぁ。そんな事する筈無いでしょ?全く、これだから中也は」
「織田作だったらそんな事ないって云ってくれるのになー」とぶつぶつ聞こえるように独り言を云う。此奴、マジで面倒臭ぇな。
「わからないんならいーや」
そう云って外方を向き、頬を膨らまして態とらしく拗ねた様子を見せるものだから、最近の太宰の言動も相まって、何と無く理由がわかった気がした。
「…そんなンで構成員減らしてんじゃねェよ。キリ無ぇだろ」
「中也が悪くなーい?」
中てずっぽうで云ってみれば、どうやら中っていたらしい。
「そンくらい普通に云えよ」
「普通に云ったら、叶えてくれるの?」
田圃を詰まらさそうに見つめる太宰の顔は、俺からは包帯しか見えない。
だけど、こういう時はどうにも子供らしい顔をしているという事だけは絶対なのだ。
「ンー…」返答に迷いつつも、どうせ迷ったところで此奴相手に着飾った言葉は意味は無いのだ。
「まぁ…時と場合によるな」
「ほら」
「はぁーあ」と溜息をつき、顎をつくのを辞めた太宰は、俺の裾を小さく摘んだ。
「折角恋仲になったって云うのに…」
太宰が数週間行方不明になっていた期間の少し後、不自然ながらも、太宰が俺に告白をした事で、俺達の関係の名前は『相棒』から『恋人 兼 相棒』に変わった。
かと云って改めて逢引をした訳でも、手を繋いだ訳でもない。手を繋ぐくらいは前もしていたし、二人きりで出かけるのが逢引と呼ぶのなら、それくらい数え切れない程している。
接吻も、厭がらせと偽ってした事くらい、何度もある。
どれも、今更改めてする様なものでも無い。
「なんなら、前より構ってくれなくなったよね」
関係の呼称以外に変わったものと言えば、此奴の面倒臭さだ。
『恋人らしい事をしてくれない!』『接吻をしてくれない!』『抱擁してくれない!』『お姫様抱っこして!』
以前とは比べようの無い面倒臭さ。あれをしろこれをしろだの五月蝿くて仕様が無い。
「ったく。最近『白麒麟』って奴が暴れてんだ。ポートマフィアも何件か被害が出てる。その内でけェ抗争になる。構って欲しいんだったら最速で、最低限の被害で抗争を終わらせるように努力しやがれ」
額を人差し指で一文字ずつ刻み込ませるように突くと、「いてててて」と嘘臭い反応をする。
「ちぇ」
額を擦りながら落ち込んで見せた後、にぃと悪戯子の様に口角を上げた。……嫌な予感がする。
「でも、今は私といるしか無いよねぇ」
俺の腕をぐいと引っ張って、隣に座らせる。今までに見たことが無いほど嬉しそうな太宰の顔を見て、何となく黙る気になった。
「バスが来るまであと一時間五分。たっぷり私に構ってよね!」
くしゃりと自分の髪を撫で、溜息をつく―なんてことはせずに、「仕様が無ぇな」と、そう云うと、太宰は嬉しそうに口角をあげた。
「それでさぁ、織田作が不発弾の処理をしたなんて云うから、私興奮してしまって…!」
「……なァ、その話何回目だ?」
「ん?」
キョトンとした顔で、説明の為に動かしていた手を変に動かしたまま「七回目だよ」と答える。
「ちなみに、織田作と不発弾の話をしたのは十五回さ!」
「よく飽きねぇな…」
先程から聞いている太宰の話には、零から百までずっとオダサクという男が出てきている。
なんでもその男は天然らしく、面白いらしい。
「彼の話に飽きる?そんな事有り得ないね!織田作の話は例えば内容が同じで何百回聞こうとも飽きる事は無い。これは断言するよ」
よくもまぁそんな自信満々と。此奴は似たようなオダサクとの会話をずっと話してくる。話の内容には飽きた。
けど、随分と楽しそうに話して、ころころと変わる表情は、どれだけ見ようとも飽きそうに無い。
「にしても」ふと、田圃を眺めて太宰が云った。
「すっかり夏だねぇ」
カラカラと乾いた空気。地面をゆらゆらと曖昧に揺らす陽炎。鋭い日差しが日陰からほんの少し出ている脚先を焼く。
嗚呼そうだった。今は、もうとっくに夏だったのだ。
ここ最近は書類仕事ばかりで、外での任務は随分と気温の下がった夜にしていたものだから、夏を実感していなかった。
嗚呼、夏は、これ程までに乾いていて、暑くて、目も開けれぬほど眩しいものだったか。
夜を生きる俺達には、夏も、朝も、昼も、夕暮れ時も、夜明けですら眩しくて仕様が無い。
ふと、肩に重みを感じた。
暗闇を纏っていて、俺らの世界でしか生きられないような男が、俺の肩に寄りかかっていた。
「別にいいでしょ?」と云わんばかりにきゅるりと可愛い子ぶった顔で俺を見た。頬が少し色付いていたのは、きっと暑さの所為だ。
この暗闇は、俺にだけ夜明けの様な瞳を向けるのだ。この夜明けが、俺は堪らなく愛おしくて、でもその夜明けも纏めて此奴の全部が大嫌いで。
そんな曖昧な感情で、俺は此奴と恋仲でいるのだ。きっと、それはこれからも変わらなくて。此奴との関係はずるずると、ずっと此の侭なのだ。
「……眠いか?」そう聞けば、間抜けた声で「んーん」と返事が帰ってくる。
「暑いか?」
「んーん。…否、少し暑いね」
何時も飄々とした太宰の熱が、肩を通じてじんわりと伝わる。目を凝らして見れば、ほんの少しばかり汗をかいていた。
人間離れしてる此奴が、夏の暑さで汗をかくという人間らしさを、俺だけが知ってる。
(此奴も、人間なんだよな)
顔にかかった蓬髪をよけるように、さらりと頭を撫でる。太宰は、少し驚いて俺を見たが、嬉しそうに微笑んで、夜明けを閉じた。
「……………………ねぇ中也」
「なんだ」
「あのさ。……この抗争が終わったらさ、逢引しようよ」
迷った様に出された提案に、驚きながらも返事を返す。何せ、これ以上迷っていたら子供の此奴は拗ねてしまうのだ。
「……何処に生きてぇんだ?」
「んー。……普通に、てきとーに。中也と歩きたい」
「珍しいな」
「……どっちのこと」
明らかに不機嫌になった様な声に、相変わらず子供だなと笑いそうになってしまう。
「どっちもだよ。素直になるのも。歩きたがるのも」
「…疲れたらお姫様抱っこしてね」
「はぁ?……気が向いたらな」
「約束だからね」
―ミーンミンミンミンミー ミーンミンミンミンミー
蝉の鳴き声が、生まれかけた静寂を埋める。
太宰が、唇を甘噛みしたり、少し舐めたりを繰り返す。俺は、少し長くなった髪の先をくるくると指に巻き付ける。
最近の、俺達の癖。
「……ねぇ中也」
「ンだよ」
「接吻して……」
「……はぁ?なんで急に…」
「急にって!はぁ!?そういう雰囲気だったじゃん!中也が何時迄経っても接吻しないから云ってあげたのに!この餓鬼!チビ!」
「ンだと!今身長は関係ねぇだろ!それに餓鬼は手前も一緒だろうが!」
「ほーら煽られたら直ぐキレる!恋人に接吻の一つも出来ない!そういう所が餓鬼だって云ってるんだよ!」
「手前っ!わかったよ!すればいいんだろ!すれば!」
怒りに任せてネクタイをぐしゃりと掴んだまま引っ張る。「わっ」と驚きに少し声を出した太宰に、噛み付く様に接吻をしてやる。
数秒其の侭にした後、やけに舌触りの善い唇をひと舐めして唇を離す。
互いの吐息が重なる。数秒ぶりに肺に入ってくる乾いた空気を、必死に出し入れしようと肩を上下させる此奴は、惨めで好きだ。
首を吊ったって、首を絞められたって、水中で溺れたって、どれだけ息を止めてもものともしない此奴が、俺と数秒唇を重ねたくらいで必死に呼吸する様が、酷く無様で。
「……はっ。たった数秒接吻されたくらいで其の様かよ」
嘲笑うようにそう云えば、案の定言い返す筈の言葉の代わりと云わんばかりに睨まれる。
数秒息を整えれば、「はは、」と漸く太宰の唇から言葉が出てくる。
「あんな乱暴な接吻しか出来ないなんて。……中也らしい」
俺が舐めた唇に少し触れて、それからぼうっと俯いた後、俺に軽く触れる程度の接吻をした。
「可愛い恋人が接吻を強請ったならこれくらいはしてみせなよ」
「あれじゃあ接吻をするっていうより食べるみたいなものじゃん」とぶつぶつ文句云っていたが、そんなに頬を染めながら云われても、悪口を云ってる様には見えない。いじけていて、拗ねていて、ただの面倒臭い奴だ。
「……はははっ。何だよ手前、そんなに俺と接吻したかったって訳か?」
「はぁ!?なっ、いや、はぁ!?ちが、いや、えっと…。…………そうだって、云ったらどうするのさ」
分かり易くあたふためいて。頬を真っ赤に染めて。そこらの女より余っ程可愛い反応しやがる。
嗚呼、俺ってやっぱ此奴の事が好きなんだなって。
「俺手前のそういう処好きだぜ」
「……………………………………はぁ!?何急に!気持ち悪いんだけど!」
そんな事を云われたって、説得力が無い。
でも、例えばこれが此奴の演技だったら、俺はそれにまんまとハマっている莫迦な奴になる。
「俺は莫迦な奴でいいよ」
「……ほんと、今日の君どうしたの」
「さぁ?夏の暑さとバスの待ちすぎでどうにかなったんじゃねぇの。あと手前の話の長さ」
ぼすっと太宰の少し高い肩に頭を乗せれば、少しあわあわとした後、手を降ろした。
「……嫉妬?」
「さーな」
「あっそ」
頭を撫でてやれば出てくる言葉は「何?気持ち悪いんだけど……」で、抱き締めてやれば吐かれる言葉は「本当何なの!?きもちわる!」である。
あれ程恋人らしいことをしろと云ったのは誰だよ。手前だよ。
「……ねぇ、中也」
「ん」
「今日の任務の帰り道の途中さ、小さな神社があったでしょ?」
眠気が漂ってきた頭の霧をはらえば、確かに小さな壊れかけた寺があった。「そうだな」と目を瞑ったまま答える。
「彼処、神なんて疾うに消えて居なくなってそうだったから、中也が『俺が此処の神になってやる』なんて云ってさ。こんなチビな神がいたら迷惑だよね」
「潰すぞ」
人が真面目に話を聞いてやっていれば、こうやってだる絡みをしてきやがる。くすくすと笑いながら、太宰は俺の頭を撫でた。
「な―」
「中也はさ、神様なんでしょう?」
神様、だなんて態々云うような奴じゃない。神なんて、信じるような奴じゃない。そんな奴が、神様だなんて俺を呼びやがった。
顔をあげれば、やけに嬉しそうに笑っている青鯖野郎が、俺を見つめていた。
「何が云いてぇ」
「なら、私のお願い事叶えてよ」
祈るように手を重ねて、ずいっと俺の前に出してきた。日本の神に祈る時はこの手じゃない事くらい、多分、此奴は知ってる。
「云ってみろよ」
そう云えば、ふわりと笑った後、重ねた手を額に当てて、神に祈りを捧げるような姿勢で、云った。
本当に、本当に大事な願い事を、一欠片もこぼさないように、慎重に。決して、壊さないように。
「……私と、ずっと一緒に居て」
本当にちっぽけで、幼稚で、そんな願いを、大事そうに云った此奴が、どうしようも無く愛おしかった。
「……………そンくらい、神じゃなくたって叶えてやるよ」
「約束だからね?」
まだまだ幼子の様な、少し上擦った様な声で、そう確認される。
「おう」とぶっきらぼうに返すと、心底嬉しそうに太宰は笑った。
「中也は神様。私だけの」
また祈るような仕草でそう云ったあと、太宰は笑って云った。
「愛してるよ中也。あとね―」
蝉の鳴き声が、随分と遠ざかった。さらさらと靡く麦も、地面を揺らす陽炎も、脚を焦がす日差しも、全てがこのバス停から離れていく。距離をとるように、聞こえぬ様に。
「―世界で一番、君のことが大嫌いさ」
俺達なりの精一杯の愛の言葉を、決して穢さぬ様に、慎重に。神に誓うように、そう云った。
「俺も、手前が世界で一番大嫌いだよ」
離れた夏が、漸く戻って来た。「バス、来なければいいのにね」なんて呟く太宰に、否定の言葉を出そうとした。でも、来なければいいなんてそんなこと、きっと太宰がバスで行こうという提案を承諾した時から、俺もずっと思っていたのだ。
「ねぇ中也。接吻して」
今度は少しあっさりと云われた言葉に、俺はそのまま従う。
太宰の舌触りの善い唇に、軽く触れる程度の接吻をした。
物足りなさそうに唇を甘噛みしてたものだから、少し噛み付くように、もう一度接吻をした。
そうやって、何度も何度も接吻をして、抱き締めて。文句を云っていた太宰は、もう何も云わずにただ俺を抱き返していた。
遠くで、車が走る音が聞こえる気がした。バスなんて、ずっと来なくてよかったのに。
「ねぇ中也」
太宰の細い手を引いて、バスに乗った時、太宰はまたもやそう声をかけてきた。
「約束、守ってね」
不安気な表情でそう云った太宰の手を、強く、でも壊れないように優しく、握った。
「手前も、ちゃんと守れよ」
「……勿論」
この暑い夏の、片隅の記憶でしかない今日が、埋もれて消えてしまうなんて、そんなことが無いように。互いに今日の約束がただの記憶になってしまわないように。
はたまたこれから起こる物語に、ただの記憶に過ぎない夏の日が、埋もれて消えてしまわないように。
この世界を作った神なんてものが、本当に居るならば、どうか、どうか。罪深い俺達の、この小さな約束だけは、守らせてくれ。
がたがたと不安定に揺れる、誰もいないバスは、子供を二人乗せて、田圃の中を走っていく。
目的地など、知らぬまま、兎も角遠くに。此の子供等が何時の日か周りと同じく穢れを知りきってしまった大人になる事も解らずに。ただただ、走っていくのだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!