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「せやかて工藤!」
響き渡る声。京都の町屋の一角にある居間に、桃内みりんの元気な声がこだましていた。
桃内みりん(17歳)――生粋の名探偵。小さい頃から謎解きと推理小説が大好きで、「名探偵みりん」を自称していた彼女は、学校でも一目置かれる存在だった。学業優秀、運動神経抜群、刺繍と剣道が趣味というマルチプレイヤー。だが、唯一の欠点は……
「またお菓子作ったん?うわっ、これ絶対に食べたらアカンやつや!」
目の前に置かれた手作りクッキーを見て、みりんの幼馴染の工藤拓海は顔をしかめた。
「ちょっと何よ!味見もしてないのに失礼じゃない!これには新しいスパイスを入れてみたの!」
「新しいスパイスって……カレー粉とか入ってそうな味やろ!」
「……正解。」
彼女の料理の腕は壊滅的だった。それでも、探偵としての勘と大胆な発想で、地元ではちょっとした有名人だった。
ある日、みりんは依頼を受けて近所の廃屋を調査することになった。地元の都市伝説では、「この家で過去に不可解な失踪事件があった」と言われており、幽霊屋敷と呼ばれていた。
「廃屋の中で行方不明になった人たちがいるって話、ほんまなんかな?」
「せやかて、都市伝説やしなあ……まあ、僕が解明したら一件落着や!」
剣道の竹刀を背負い、ノートとペンを手に、みりんは意気揚々と廃屋に向かった。
薄暗い廃屋の中、みりんは慎重に足を進めた。床はギシギシと軋み、不気味な風音が耳に響く。だが、彼女の表情には好奇心が勝っていた。
「この部屋は……何かあるな。」
床下収納のような隠し扉を見つけたみりんは、すぐさまそれを開けた。中には古い日記と、何やら奇妙な絵が描かれた紙があった。
「これは……呪いの絵? いや、違う。儀式の図式か何か?」
その瞬間――背後で激しい物音がした。
振り返ったみりんの視界には、大きな黒い影が迫っていた。
気づいたときには、みりんは地面に倒れていた。激しい痛みとともに意識が遠のいていく中、彼女は最後の力を振り絞り、言葉を呟いた。
「せやかて……工藤……これ、ヤバいやつや……」
彼女の意識が完全に途絶えたとき、世界が光に包まれた。
次に目を開けたとき――彼女はアバロン・オブ・ラグナロクの隣村で、雑用を押し付けられながら生きる14歳の少女になっていた。
腕には青薔薇の刺青が彫られ、体には傷跡が残る。
「ここは……どこ? なんで僕、こんなとこに……?」
みりんの転生後の過酷な生活が、ここから始まるのだった――。
第二話 完