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荒廃した王国「アバロン・オブ・ラグナロク」の隣村。廃れた酒場の片隅で、刺青を持つ一人の少女が机に肘をつき、ため息を吐いていた。

桃内みりん。

両親にマフィアギルドへ売られ、過酷な日々を送りながらも、自分を失わない強さを持つ少女。だが、今日も彼女は雑用として村の男たちにこき使われていた。

「また酒場の掃除か……あーもう、男どもホンマ最低やわ。なんで僕ばっかこんなん……」

彼女の右腕から首元まで彫られた青薔薇の刺青が、彼女の生い立ちの苦しさを物語っている。その刺青を見るたび、彼女は両親への恨みと自分への苛立ちを思い出していた。

そんな中、酒場の扉が勢いよく開いた。

「おーい、ここって泊まれるところあるか?」

金髪の青年が立っていた。疲れた様子だが、目の下のひどいクマを隠しきれない。その男――サブ――は転生してこの地にやってきたばかりの“勇者”だった。

「……なんやねん、この金髪のクマ男は?」

みりんは思わず小声で呟いたが、サブはその言葉を聞き逃さなかった。

「おい、そこのお姉さん。金髪のクマ男って俺のことか?」

「はぁ? 誰があんたなんか呼んだんよ。勝手に話しかけてこんといてや!」

みりんの刺々しい態度に、サブは少し戸惑ったように笑った。

「まあまあ、そう怒んなって。俺、ちょっと困ってんだよ。泊まる場所探してんだけど、この村に宿とかないのか?」

「……あんたみたいな男を泊めるとこなんか、この村にはないわ!」

一瞬で拒絶されるサブ。だが、彼の善意の塊のような性格は、そんな対応にも動じなかった。

「じゃあさ、手伝えることがあったら言ってくれよ。俺、意外と働けるぜ?」

「手伝えること? ……そんなん、あるわけ――」

その瞬間、酒場の奥から荒々しい声が響いた。

「おい、そこのガキ!掃除が終わってないぞ! さっさと働け!」

みりんは舌打ちをしながら、面倒くさそうに掃除道具を手に取った。

「……ほら、これや。あんた、これ手伝えるん?」

「おう、任せろ! ……掃除なら得意だからな!」

不器用ながらも懸命に掃除を手伝うサブの姿に、みりんは少しずつ警戒心を解いていく。

「……意外とマジメやん。」

「だろ? 俺、昔から努力だけは取り柄なんだよな。」

少しずつ会話が弾む二人。サブの人懐っこい笑顔と純粋な態度に、みりんは少しだけ心を許し始めていた。

「……でも、あんたみたいな奴がなんでこんなとこ来たん?」

「俺もよくわかんねぇけど、気づいたらここに転生してたんだよな。受験行く途中で轢かれたと思ったら、このザマだ。」

「……転生? ……あんた、もしかして――」

みりんの瞳が鋭く光る。

「もしかして、僕と同じ……?」

「え、同じって――」

みりんの胸の中に湧き上がるのは、初めて感じる“同胞”の予感。そして――

「せやけど、男ってだけで、僕は認めへんからな!」

「ええっ!そこはなんとかならないの!?」

出会いは最悪。けれど、二人の運命はここから動き出していく――。

第三話 完

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