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屋敷の廊下を歩く足音が、やけに大きく響く。
「……ゾム、ほんまに……今日、うち、泊まってええんか?」
ロボロの声は、普段の元気さが影を潜めて、少しだけ震えていた。照れ隠しに頭をかくと、ゾムがちらりと振り返る。
「ええよ。お前が帰るっつっても引き留めたん、俺やし」
言いながらも、ゾムの耳もほんのり赤くなっているのをロボロは見逃さなかった。
**
客間ではなく、自室。
「今日はここで寝たらええ」って言われたとき、ロボロは一瞬「えっ」と固まった。
「お、おう……」と返したはいいが、部屋に入ってからは空気が張りつめて、どちらからともなく黙りこくってしまう。
テレビの音もつけず、ただ静かな部屋。
窓の外では風の音。
距離感は……布団一枚分。
「……なあ、ゾム」
「ん?」
「今日、なんで……急に、うちを泊めようと思ったんや?」
ゾムは少しの間沈黙した。
ロボロが、ちらと横目で見たとき、彼は天井を見ながら答えた。
「……なんでって。……お前が、最近やけに他のやつとばっか喋っとるから……」
「……はあ?」
「ちょっと、ムカついたっつーか……なんやろ……」
声が小さくなっていく。
ロボロはふと気づいた。ゾムの手が、微かに布団の上で揺れている。そっと、自分の手を寄せる。
「嫉妬、したんか?」
「……したわ。悪いか」
その瞬間、ロボロの顔が一気に赤くなった。
思わず布団にもぐる。
「なんで今さらそんなん言うねん……!」
「言わな伝わらんやろ! アホか……!」
言い争いのような声も、どこかくすぐったくて。
照れ隠しの応酬のあと、ふたりの間にまた静けさが戻る。
だけど今度は、温かい静けさだった。
ロボロが布団からそっと顔を出すと、ゾムの顔がすぐそばにある。
「な、なあ……その……」
ロボロの声が消え入りそうになる。
ゾムも、わかってるようで、わかってないような表情をしてたけど、そっと手を伸ばした。
「こっち、来いよ」
その手に、ロボロはそっと身を寄せる。
**
まだ触れ合いは不器用で、距離感もたどたどしい。
けれど、互いの体温に触れたとき、どんな言葉よりも素直な気持ちが伝わった。
今夜が、ふたりにとっての“はじまり”なんだと、ただ、そう思えた。
ふふっ
難しいな