──《白階》、到達。
中層第11区の廃墟に、まるで塵芥を掃除するような、無音の一閃が走った。
「えっ……?」
その音は、風よりも速く。
光よりも冷たく。
一撃で、“市民代表”ナダレ・トウドの胸を貫いた。
《轟反撃》の蓄積が一瞬で霧散する。
「な、ん、で……?」
彼の表情には、「納得のいかない死」が刻まれていた。
叫ぶ暇も、反撃の時間もなかった。強さの積み上げを、何一つ披露する前に――《白階》により処理された。
現れたのは、全身を白銀で包んだ女――
護井会所属、《白階特務隊》所属
コードネーム:《流鏡》。
無機質な仮面の奥から、何一つ感情を浮かべず、倒れ伏すトウドの遺体を一瞥。
「中層環境、阻害因子:削除済。対象、一毬――回収対象に移行」
その場にいた《スナイパー一毬》が反射的に銃を構えるが、構え終える前に、腕ごと切り落とされる。
続けて《格闘家一毬》が駆け寄るが――斬撃一つで消滅。
《無窮自己列伝》の召喚体たちが、まるでプログラムのバグ修正のように、順に消去されていく。
「や、やめてっ! これは……これは私の、私の戦いなんです!!」
ついに、焦燥の色を隠せなくなった本体・一毬が叫ぶ。
「トウドくんは、まだやれるはずで――!」
「彼は“やれる状態”ではなかった。“そうあるべき”でもなかった。それは君の錯覚。……そう記録しておく」
《流鏡》は、足元の地面を踏み割り、術式領域を展開。一毬の周囲が歪む。あらゆる召喚記録が、“編集され”、抹消されていく。
「やっ……やめてよ……! 一毬はッ、間違ってないもん……!!」
「その評価は、君ではなく、我々《白階》が決める」
次の瞬間、光に包まれて――《一毬、回収》完了。
回収された一毬が、拘束具付きの診断椅子に座らされていた。
そして、その背後では《灰階評議官》ミルゼが紅茶を啜る。
「トウド・ナダレ。市民代表としては及第点だが、予定より動きすぎた。……あの男、使うにはやかましすぎる」
その言葉に、別の評議官が皮肉っぽく応じる。
「結果的に、《白階》の介入を招いた。まあ……“誤差”だろうが」
誰もが、トウドの死を惜しまなかった。
ただの道具として処理されたその死に、意味はなく。
だがその時、遠く、遠く――
中層の闇に潜む残党たちが、その処理に違和感を覚え始めていた。一人の正義が、一撃で葬られたという、その事実に。
コメント
1件
今回も神ってましたぁぁぁぁぁぁあ!!!! まあ...一毬たんは可愛いから!!ね!許して貰えると思うよ!多分!! てか誰よその女!!←前々から居ました めちゃつおい...すげぇ...かっけぇ...憧れるぜ...!!!(?) 次回もめっっっっさ楽しみいいいいいいいいいいぃ!!!!!