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*R18です。苦手な方はお気をつけください。
寝台に優しく押し倒された蒼翠は、近づいてきた無風の唇を柔らかく受け止めた。
心地好い温もりに唇の重なりを開くと、すぐさま無風の舌が口腔内に侵入してきた。
無風はキスが上手い。まるでこちらが感じる部分を全部把握しているみたいに弱い部分ばかりを狙ってきて、蒼翠の欲を掻き立てる。
「んっ……」
このまま理性を揺さぶられ続けたら、自分でもどうなるか分からない。そんな不安を片隅に無風が与えてくれる口づけを堪能する。
と、不意に下腹部に何かが触れた。
薄い寝衣の上から自分の分身ともいえる膨らみを掌全体で柔く揉まれる感触に気づき、蒼翠は密かに視線を泳がせる。
「無風、ちょっ……」
男の欲を刺激する背徳的な感触に、羞恥心が拙い抵抗を生む。
「怖いですか?」
「いや、怖くないけど……」
「蒼翠様の珠の肌を傷つけるようなことはしないと誓いますが、もし不快なことがあったら言ってください」
こちらと同じで初めてなのに、まるで玄人のような口ぶりでそう告げた無風は、吐息で蒼翠の耳朶をくすぐりながら下腹を弄る指の動きを顕著にさせる。
「ここ、気持ちいいですか?」
「っ……んっ……っ」
男の一番弱いところを絶妙な力加減で揉み解されて、気持ちよくないわけがない。そうでなくてもこの世界ではどこに人の目があるか分からないし、日があるうちは常に誰かが傍にいる生活だったから『そういった個人的な時間』がなかなか取れないのだ。こんなふうに刺激されたら、反応してしまうに決まっている。
現に寝衣に隠れた蒼翠の雄はもうすでに変化を見せていた。
「ンっ、っぁ……」
寝衣の隙間から内側に忍びこんできた無風の手が直接肌に触れると、自分でも出したことない吐息混じりの変な声が漏れてしまった。
恥ずかしい。
しかし、そんなふうに理性を働かせられたのはそこまでだった。突然、蒼翠の下腹を撫でるように愛撫していた無風の手が、滲み出た先走りで濡れる性器を激しく揉みしだき始めたのだ。
これには蒼翠も耐えらきれず、声を上げてしまった。
「アァッ!」
さすがは同性と言わんばかりに、無風は的確に気持ちいい場所だけを狙って手を動かしてくる。性欲を人に支配されることが初めての蒼翠は、迫る快楽の影に惑わされると同時に小さな恐怖も覚え震えたが、無風の指先に亀頭の先端を弾かれた途端、体感したことのない強い刺激に襲われ背が勝手に跳ねた。
下腹の奥深くから、凄い勢いで熱が込み上げてくる。
次の瞬間、蒼翠に訪れたのは男なら誰でも知る刹那の快感だった。
「ああぁぁっ!」
無風の手中で健気に震えた陰茎から、白い熱がほとばしるのが分かった。
「気持ち……よかったですか?」
乱れた息を整えようと荒い呼吸を繰り返す中で問われたが、応えをかえす余裕などなかった。
するとそれを肯定ととった無風が、再び下衣の内側で手を動かし始める。
蒼翠が放った精液でしっとり湿った指が、足の付け根を伝って奥へと滑り込んだ。その指先はほどなくして臀部の重なりに隠れた窄まりへと辿り着く。
同性の、しかも男同士の交接で繋がる場所といえばそこしかない。知識では分かってはいるものの、実際を目前とするとやはり緊張を覚えてしまう。
「蒼翠様、御着物のほう失礼させていただきます」
無風のもう片方の手によって菖蒲色(あやめいろ)の羽織の紐が解かれ、続けて内着の襦袢の合わさりも丁寧に開かれていく。
肌が灯の下に曝されると、慣れない羞恥に負けた蒼翠は咄嗟に視線を逸らした。
続けて御御足も失礼しますと声をかけられた後、片足を持ち上げられ、先ほど触れられた窄まりを指の先で円を描くように撫でられる。その時に感じたねっとりとぬるついた感触は、蒼翠自身の白濁のそれとは少し違う。そんな素振りなど少しも気づかなかったが、おそらく香油かなにかを用いたのだろう。
「ん……っ」
形よく骨張った男の指が、目的を持った動きでゆるりゆるりと蕾を開こうとする。だがこれまで一度も開かれたことのない場所は、当然ながら容易に緩まるはずもなかった。
しかし無風は根気よく香油を足しながら窄まりの口を解し続け、ようやく指先の侵入に成功すると、修行で初めて術が使えた時みたいに喜びを見せて微笑んだ。
その笑顔を目にしてこちらも嬉しくなるなんて、自分は相当な無風バカだと思う。
「蒼翠様、少しだけお身体の力を抜いていただけますか?」
わずかに開いた入口の機嫌を損なわないよう、無風は優しく指の腹で拡げながら少しずつ内側に潜っていく。そんな丁寧な愛撫のおかげで痛みは感じなかったが、自分でも触った経験のない場所を拡げられる感覚と異物感にはすぐに慣れることができず、逃げるように身動いでしまった。
こんなことで本当に無風を受け入れることができるのだろうか。無風を落胆させないだろうか。不安を覚えるうちに肉襞を弄る指の数をもう一本増やされる。
「っあ、っ……っ」
香油でたっぷり濡らされた新たな指が、襞を優しくなぞるように隘路をやや強引に進んだ。やはりその時も腹を内側から圧迫されるような不快に耐えられず、蒼翠は眉を顰める。と、まるで幼子を慰めるように無風の唇が蒼翠のこめかみに落とされた。
「大丈夫、大丈夫ですよ……」
柔らかな声に不思議と身体の強張りが解れ、重苦しさが軽くなる。
ホッと安堵の息を吐けば、蒼翠の緊張が緩和されると知った無風の唇が口づけを繰り返し始めた。
「んっ……」
くすぐったい感覚がゆっくりと降下し、鎖骨、胸、肋骨の一つ一つに薄紅の痕をつけていく。だが、やがてそれだけで飽き足らなくなったのか、無風はたっぷりと唾液をまぶした舌先で胸の盛り上がりを捏ねだし、蒼翠に新たな刺激を与えた。
「んっ……は、ぁ……っ」
じんじんと腰骨からせり上がってくるような快楽が止まらない。そんな中、不意に無風の指が奥襞のある部分に触れると無意識に腰が揺れ、足の指先が勝手にぎゅっと丸まった。
「んっ!」
それはあまりにも突然で、蒼翠自身も何が起こったのか分からなかった。無風も同じで蒼翠が反応したことに驚いて身体を起こしたため、二人で情交の最中に顔を見合わすなんて間抜けな格好になってしまう。
「蒼翠様……?」
「え……あ、いや、なんか……急に身体が……」
上手く説明できず視線を彷徨わせていると、無風は少し考えてから何かに気づいた様子を見せて、おもむろに蒼翠の内襞を弄る指をぐるりと大きく動かした。
「ん、あぁっ!」
今度は射精に似た衝撃が臍の奥あたりから性器の先へと一気に駆け抜け、愛撫に連動するように腰が揺れた。
なんだ、これは。こんなの知らない。
だが、これが快楽であることだけは本能が悟った。
無風が指を巧みにうねらせる度に腰が抜けるような快楽が広がり、同時に強すぎる背徳感と羞恥に襲われる。生まれて初めて親に隠れて自慰をした時のように切なくて、まるで罪でも犯しているかのような感覚だ。
「ここ、気持ちいいですか?」
全身から汗を噴き出しながら未知の快楽に翻弄される蒼翠の耳に舌を這わせ、無風が囁いた。
耳の奥が吐息で甘く犯される。しかも今の蒼翠の脳はそれでさえも快感と認識しているらしく、熱く吐かれた息に耳孔を炙られるたびに潤んだ襞がぎゅっと締まった。
そうしているうちに三本目の指が増やされ、内襞を容赦なく捏ねられ、蒼翠の理性は風前の灯火となる。瞳は酩酊したかのようにとろんと蕩け、恍惚の光を点し始めた。
きっと今の蒼翠の姿を見たら十人が十人ともに、悦びを覚えていると答えるだろう。
「や、そこ、もう触……っ、な……」
凶器のような快楽に、一度精を放出して萎えた性器もまた揺さぶり起こされる。
「大丈夫です。もっと、もっと気持ちよくなれますから」
煮て溶かした蜜のように甘く囁きつつも、無風はたった今見つけたばかりの蒼翠の性感帯を執拗に苛め、なけなしの理性をどんどん殺していく。
まるでお前は今から雄を受け入れる雌になるのだ、と命じられているような気分だった。
指数本だけで身体を、性を、根本からすべて作り変えられていく。それは男としては屈辱であり、恐怖でしかないのに――。
「あっ、あっ、や、あ……っ」
悲しいかな、蒼翠の肉襞は無風から与えられる快感をさらに求めるように、内側で身勝手に求愛のダンスを踊る始末だった。
「蒼翠様、そろそろよろしいですか?」
何がそろそろなのか、と問うような視線を向けると、無風は柔く目を細めながら自らの下腹を蒼翠の太股に押しつけてきた。
服越しでもそそり立っているのが分かるほど硬く、かつ確かな質量を主張する無風のソレが、蒼翠の肌を淫靡になぞる。
「貴方様の中に、私を入れてください」
「や……むり……こんな……壊れる……」
指だけでもあれほど取り乱したというのに、それ以上のもので攻められたら狂ってしまう。顔を真っ青にしながら首を振ると、無風は何も言わずに蒼翠の中から指をそっと引き抜いた。
「んっ! は、ぁ……」
最初に指を入れられた時は異物感を不快に思ったのに、抜かれたらたちまち物足りなさが後孔全体に広がり、さらに強い快楽を求めてじんじんと熱を帯び始める。
「蒼翠様、私は貴方様を絶対に傷つけたりはしません。もしわずかでも怪我を負わせてしまったらならば、死んでお詫びすると天に誓います」
「天に……って……」
「ですから一度だけ……一度だけ私を信じてくださいませんか?」
この世界では天に誓った言葉は反故できないと言われているため、必ず守らなければならない。その誓約を口にしたということは、相応の覚悟を固めているという意味だ。
「お前は、バカか……なんで俺にそこまで……」
「蒼翠様のことが命よりも大切だからです」
「……っ……!」
迷いもなく言い切った無風に蒼翠は目を見張る。湧き上がってきたのは呆れとかではなく、これほどまで一心に求めてくれているのかという感銘だった。
今や誰もが羨望の眼差しを送る男が、命を差し出してまで願ったのが自分。そう思うと嬉しさと誇らしさで胸がいっぱいになる。
ここまで求めてくれるのなら、叶えてやりたい。
内から湧き出た感情が、蒼翠の背を押す。
「わかった……お前を信じる」
蒼翠は力の入らない腕を伸ばし、掌で無風の頬を撫でてやる。それから両腕を無風の首に絡ませて、自分の胸元へと抱き寄せる。
「蒼翠様……っ……ありがとう、ございます……っ……」
声を詰まらせながら心からの礼を述べた無風が、蒼翠の胸元に惜しみない口づけを繰り返す。嬉しいが少しだけ擽ったくて身動ぐと、それが合図になったのか無風がゆっくりと半身を起こし蒼翠の足をそっと持ち上げた。
両膝裏を掬い上げられ、片方の足が無風の肩に乗せられる。そうして空けた片方の手で無風は自分の衣服を緩め、おもむろに下肢をはだけさせた。
予想はすでについていたが想像どおり、いや、それ以上のどっしりとした質量のある陽物がそこにあった。しかも無風のそれは太さだけでなく、そそり立った亀頭の先が臍に届くのではと思うほど長くて、思わず驚きに呆然としてしまう。
あんなすごいものが今から中に入ってくる。無風は傷つけないと約束してくれたが、自分はどうなってしまうのだろう。
不安を過らせていると、カチカチに張り詰めた陽物の頭がぬるりと蒼翠の解された肉輪の入口を擦った。
「んっ……」
来る。怖い。
けど逃げたくない。
蒼翠が覚悟を決めた瞬間、これでもかという存在感を主張しながら、無風の陽物がぬるぬるに濡れた窄まりを押し開いた。
「ぃ、ああぁっ!」
一際大きく叫んだ後、息を吸おうとしてその喉が詰まった。それほどまでのとてつもない異物感に蒼翠ははくはくと下手な息継ぎを繰り返す。
自分の肉襞が、ギチギチと無風の形に拡張されていくのが分かった。
腹が裂けるような激痛ははない。だが腹の中の臓物が口からすべて出てしまいそうな苦しさは死ぬほど辛かった。こんなものやはり耐えられない、と無意識に腕を振り上げようとしたその時。
「っ、ゃあぁっ!」
先ほど腰が勝手に跳ねた箇所に無風の亀頭が触れたらしく、全身にビリリと大きく痺れる快感が走った。しかも今回のほうが断然に強い。
「やっ、だめ、っ、そこっ」
無風はその場所を刺激すれば快楽に繋がることをすっかり覚えてしまったらしく、秘奥まで腰を進め、蒼翠の雄膣に甘噛みをするかのような感覚の印を残すと、すぐに陽物を引き、再び突き入れるを繰り返し始めた。
「ひっ、んあっ、あっ、あぁっ」
ズン、ズン、と一番弱い部分を雁首で擦られる度に、いつの間にか勃ち上がった蒼翠の性器の先からピュッ、ピュッと透明の汁が飛び出す。まるで無風の手によって射精を管理されているみたいで恥ずかしさが増したが、それもすぐに迫り来る絶頂への期待に吹き飛んだ。
もういい。ここまで来てしまったのだ、今さら恥も外聞も関係ない。暴走の末に制御不能となった欲望が快楽という選択を掴み取ると、蒼翠は教えられたわけでもないのに無意識に腰を揺らし、無風の律動を巧みに助けた。そうして――――。
「あ、あ、来る……っ」
再び、下腹の奥から急激に迫り上がってくる感覚に襲われる。そして。
「ぃや、ぁっ、ああぁぁッ!」
ほんの欠片だけの理性が弾けた瞬間、もう残っていないとばかり思い込んでいた白濁が蒼翠の性器から勢いよく飛び出した。
背と腰が寝台から離れるほど大きく跳ねると、連動するように目の前にチカチカと眩しい星が散り、視界が生理的な涙で何も映さなくなった。
限界まで仰け反った首の骨が、キリキリと音を立てる。
両眼を見開いたまま時を止めた眦から、一筋涙が零れ落ちた。
その刹那だった。
「っ、蒼翠……っ、さまっ」
苦しそうに名を呼んだ無風が、蒼翠の最奥に自身の巨塊を突き入れたところで腰を止める。
「くっ、ぅ」
数瞬の間に蒼翠の腹の中で灼熱が駆け抜けるように広がり、すでにグズグズにされていた雄膣をさらに蕩かせた。
「あ、や……ぁ、なか、あつ……い……」
無風の欲が爆ぜたのだ。悟った途端に蒼翠の肉壁は勝手に激しい収縮を繰り返し、男の巨杭を絞った。
続けて艶っぽく吐かれた息とともに無風の熱種の残りが、蒼翠の薄い腹に容赦なく注ぎ込まれていく。そのまま最後の一滴までを流し入れるように身体を揺すられ、ようやく気が済んだ頃に雄膣から肉塊を引き抜かれると、蒼翠はその刺激だけで背筋を淫らに震わせた。
未だ快楽の余韻で細かく痙攣する腰が、寝台に深く沈む。と、蒼翠は持ち上げた両腕で己の顔を覆い隠した。
――ああ、もう……なんてことだ。
指先一本すら動かしたくないほど全身の節々は悲鳴を上げているし、どこもかしこも汗だくだし、腹なんて中も外も粘りの強い液体でべとべとだけれど。
――気持ちよすぎて、興奮が収まらない。
心臓の高鳴りが抑えられない。しかも蒼翠の肉襞はさらに苛められるのを期待し、一人で勝手にグニグニと蠢いている。
「蒼翠様……? 大丈夫ですか?」
「…………大丈夫じゃない」
ただ内から湯水のように溢れる羞恥心にはどうしても勝てなくて、無風を見ることができない蒼翠は、顔を隠したままむくれた態度で返す。
「どうかお顔を見せてください」
蒼翠の反応で重篤な支障は出ていないと汲み取った無風が、困った様子で蒼翠を抱き起こす。そして耳元でもう一度柔らかく「蒼翠様の顔が見たいです」と懇願してきた。
「…………お前、ずるい」
恥ずかしくて今すぐにでも逃げ出したいぐらいなのに、無風の頼みとなるとどうにも断れない。蒼翠は頬を膨らませながらもそっと腕を降ろし、こちらに向けられる眼差しを見上げた。
すると視線の先には幸せいっぱいだといった笑顔を浮かべた無風がいて、思わずその美麗さに見惚れてしまう。
ああ、やっぱり無風は格好いい。
「ようやく……貴方様とひとつになれました」
「…………うん」
そう、とうとう無風と繋がった。
これで二人は正式に魂の婚姻を結んだことになり、誰もその仲を割くことはできなくなった。
「蒼翠様のことはこの聖界一……いえ、世界で一番幸せにするとお約束します」
「何言ってるんだよ……幸せにする、じゃなくて二人で幸せになる……だろ?」
もう、与える与えられるだけの関係ではなくなったのだ。
これからは二人で一緒に幸せになっていく。きっとそれは何よりも尊い日々となるだろう。
未来を思い描くだけでも心が躍ってしかたない。
――しかし……まさかこんなに予想外な人生になるなんてな。
この世界に転生した時は、ただただ無風に殺されないよう考えるばかりで、婚姻することになるなんて微塵も思っていなかった。
葵衣が知る金龍聖君(ドラマ)の最終回とは似ても似つかない結末。
でも、今はこれでいいと思っている。
これは蒼翠(じぶん)と無風が紡ぐ、新しい物語なのだから。
「大好きだよ、無風。一緒に笑顔いっぱいの未来にしような」
蒼翠が淡く笑む。
その花が咲いたように眩い微笑みは、傾城の美妃と謳われた蒼翠の母よりもうんと麗しく、すでに捉えた無風の心をここでさらに深く魅了したことはもういわずもがなであった。
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