君と頑張る今日晴れる

さて、今夜は悠が書いた原稿用紙の確認からだ。

悠と一緒に確認しながら読んでみると、多少誤字があったものの内容はとても良い。

私が以前、研究会に自分の実践資料を提出した時は、何週間もかけて書く内容を考えて、やっとの思いで書いた資料を提出した。

膨大に時間を使って悩んだ私と違い、悠にとって資料の内容を考えることは、わずか一時間のことなのか。

これも、得意不得意だな。と、思いながら原稿用紙に赤ペンで誤字のチェックを入れたり、疑問点を悠と精査していく。

「これでよし！内容はこれでオッケーだよ」

私は、確認が終わった原稿用紙を机に置いた。

「ぷはー。よかったー」と、悠が安堵する。

「あとは、パソコンに打ち込んでいこう」

「これが大変なんだよな」

ぼやきながら、悠が慣れない手つきでパソコンのキーボードを打ち出す。

「2000字なんだから、すぐ終わるよ」

私は、今日もクローゼットの中に乱雑に放置されている服を畳み直しながら言った。

それにしても、悠の畳み方は、畳むとは言わない。これは折っているだけだ。

クローゼットの中を綺麗にして、夕食の皿洗いも終わらせてやることがないので、私はギターを弾いた。

夜だし、アパートなので優しく弦を撫でるように音を出す。

すると、悠が「もう限界。ギブアップ」と机に突っ伏した。

集中力の限界がきたようだ。悠が、今打った字は200字だった。

提出期限まで一週間以上あるので、このペースなら大丈夫そうだ。

それに、流石に毎日文字を打ち込んでいれば、慣れてスピードも早くなってくるだろう。

「さて、悠がどれだけギターできるようになったか見てあげるよ」

「やったぁ。パソコンよりギターのほうが、ずっと楽しい」

悠が、笑顔になり肩を上げて伸びをした。

ギターを受け取ると、悠は床に座ってギターを太ももの上に乗せ、左手をネックに回した。

ここ数日、毎日、弾いているので少しは様になったように見える。

悠が曲のイントロを弾く。

数日前には、上手く鳴らなかったCコードも、綺麗に鳴っている。

弾きながら歌うと、まだズレてしまうけれど、ここまでできれば上出来だ。

「私が、言った通りちゃんと毎日練習してるみたいだね」

「へへへ。晴と同じギターが弾けるのが嬉しくってさ。毎日一時間以上やってる」

「二十分くらいでいいって言ったのに凄いじゃん」

「ほら、指の皮も硬くなったんだぜ」と、左手を見せる悠。

最初は痛いと言っていた、彼の左手の指先は皮が厚くなり努力を物語っている。

「ちゃんと頑張ってるね。あとは弾いた数！悠なら必ずできるよ」

「もう少しできるようになったら、保育園で子どもたちと歌ってみるね」

「それがいい。頑張れ悠」

研究会の資料も終わりが見えてきて、保育参観のギターもあとは練習した数だ。

最後に、誕生日会のペープサートのセリフを悠と確認して、私は家に帰ることにした。

初めはどうなるかと思っていたが、なんとかなりそうだ。

しかし、まだ油断ならない。

あとは継続だ。と、私は帰り道で気を引き締めた。