コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ん、んん」
今日も上手く眠れなかった。
最近、調子が悪いんだ。
仕事はその真逆、ミセスは僕の想像もつかない所まで膨れ上がっていっている。
凄く楽しいし嬉しいと思う。
僕達はずっと頑張ってきた。
僕は死ぬ気で音楽をやってきた。
でも、最近、1人になると思い出してしまう。
ゆっくりとベッドを出て、髪を結ぶ。
顔を洗ったら濃いクマに気付く。
食パンを齧りながら思い出そうとする。
今日って何日?何があるんだっけ?
スケジュール帳をめくると「ナハトムジーク MV 撮影」と書かれていた。
なんでこんな大切なこと忘れられたんだろう?
考えてみたら昨日は演技指導をしてもらった。
やっぱり調子が悪い。最近の僕は変だ。
電話がなった。
もとき
「あ、もしもし?」
「涼ちゃん!もう家の前で待ってるよ!」
あ、
急いで荷物を持って部屋を出る。
昨日の僕はちゃんと荷物を用意してたんだ。
慌てて外へ出ると、黒い車が止まっていて後部座席から元貴が手を振っていた。
「ごめんね! 待たせちゃったよね」
元貴は微笑んだ。
「全然遅刻じゃないよ。いつも家の前で待ってるからさ。今日は居なかったから電話したんだ」
「あ、ありがとう…」
元貴の隣に乗り込む。
「お願いしまーす」
滉斗がマネージャーさんに言うと車が走り出した。
「緊張してる?」
滉斗が言った。
「うん…」
「僕もだよ!昨日なんて全然寝れなくてさー」
「楽しみだけどね!」
元貴が笑う。楽しみだなんてすごいな。
スタジオに着き、メイクと着替えが始まる。
目の下のコンシーラーがいつもより厚いこと、僕は見逃さなかった。
思い扉を押し開けてスタジオに入る。
暗くて、緑色で、冷たくて、沢山の機材がある。
全部が僕たちを撮るためのもの。
心臓が鳴りだす。ちょっと、怖い。
この大切な作品を、僕がぶち壊さないかな。
「Mrs. GREEN APPLEの大森さんです!」
元貴が1歩前に出てお辞儀をする。
「藤澤さんです!」
僕も元貴のまねをする。うまく、笑えてる?
「若井さんです!」
滉斗はすごくリラックスしてるように見える。
元貴はリップシンクをするけど、僕達はただ自由に演じるんだ。
「本日はよろしくお願いします!」
元貴が言ってみんなが拍手をする。
きっと大丈夫。打ち合わせの時もみんな優しい人達だったじゃないか。