――激突。
その瞬間、空気が裂けた。
吉田の拳が閃き、雨宮がそれを迎え撃つ。衝撃だけで地面はひび割れ、周囲の建物が軋む音を立てた。
雨宮:「お前は変わらないな……。相変わらず拳だけか?」
吉田:「お前こそ変わらねぇ。口だけは達者だな、雨宮。」
バキィッ!!
吉田の拳が、雨宮の顔すれすれをかすめ、風圧だけでその頬を切り裂く。雨宮は笑って後退し、舌で血を舐めた。
雨宮:「フッ、やるじゃないか。だが――」
その瞬間、雨宮の周囲に無数の黒い糸が現れた。
雨宮:「俺の異能を、忘れたとは言わせない。」
《傀儡縫い》――人でも物でも、魂すら縫い止めて意のままに操る、恐るべき異能。
吉田:「チッ……厄介だな。」
シュバッ!!
糸が一斉に吉田を襲う。だが、吉田は全てを拳で叩き落とした。それぞれの糸が地面に叩きつけられてめり込んでいく。
雨宮:「相変わらず化け物じみた力だな……だが!」
糸が一瞬にして霧散し、今度は空中から無数の針となって降り注ぐ。
吉田:「無駄だ。」
ドンッ!!
吉田は地面を強く踏み込み、拳を振るった。その一撃の風圧だけで針は弾き飛ばされ、空間ごとねじ曲がる。
――しかし。
雨宮:「甘いな。」
ザクッ。
吉田の腕に、一本の黒い針が突き刺さっていた。
雨宮:「俺の糸は、ただの物理攻撃だけじゃない……これは魂を縫い止める針だ。」
吉田:「……ッ!」
その瞬間、吉田の腕が動かなくなる。力が抜け、重さだけが襲いかかってくる。
雨宮:「これで、お前の力も半減だな。」
吉田:「……誰がそう言った?」
ボゴォッ!!!
次の瞬間、吉田の片腕だけで繰り出された拳が、雨宮の腹にめり込んだ。
雨宮:「……がっ……!」
内臓が悲鳴を上げる音が聞こえた。雨宮はそのまま吹き飛び、建物の壁を三つ突き破ってようやく止まった。
吉田:「片腕でも、十分だろ?」
瓦礫の中から、血を吐きながらも立ち上がる雨宮。
雨宮:「……ククッ、やっぱり、お前は最高だな、……。だが、そろそろ本気を出してもいい頃合いだ。」
その言葉と共に、雨宮の周囲に黒い糸の嵐が巻き起こる。
吉田:「望むところだ。」
――戦いは、まだ終わらない。