『愛されるって、どんな感じですか?』
朝学校に来たら、机の中にこんな”手紙”が入っていた。
“手紙”とも言えないような、そんな物が。
おそらく、なんかのノートの端をちぎったのを折って入れたような。
最初の4〜5文字を大きく書きすぎて、あとの部分がつめにつめて小さな字で書いていた。
不格好のその文字から、思いつきで書いた悪戯かとも思ったが、おそらく違うだろう。
なぜなら、その紙の裏に、学年クラス、名前まで書いていたのだ。
悪戯なら、名前なんて書かないものだろう。
なら、マジなのか?
でも、なぜ俺に?
紙の裏に書いている
『3−1 清水 叶』
という文字。
どう読むのだろう?
『しみず きょう』
か?
でも、そんな奴は俺の記憶の中に存在しない。
それに、3年だと?
俺は今年入ってきたばかりの一年だ。
中学。もしくは小学校の頃の知人か?
いや、そんな奴はいない。
もし、小学生の頃の知人で、俺が1年のときに6年だった場合ならば、あったかもしれないが。
この『清水』という奴とは俺は2才差。
きっと、机か学年を間違えたのだろう。
そんなことをブツブツと小声で考えていると、後ろから、
「よっ。」
そんな声がした。
ガシッと腕で肩を組まれたので、俺の数少ない友達2人の中のどちらかだろう。
『村上 涼』だとしたら、俺の小学4年生からの友達だろう。
でも、
『柳 沙汰』だとしたら、産まれてからの腐れ縁の人間だ。
そのどちらかの1人だと思って後ろを見た。
だが、そこに入っていたのは
知らない男性だった。
いや、正確に言えば、きっと校内で何度も見たことはあるのだろうが、認識はない人物だ。
俺が険しい顔でマジマジと相手の顔を見ていると、急にデコピンされた。
俺が意味のわからないまま手を振り払うと、相手が再び口を開けた。
「お前〜、部活の顧問に対していい度胸してんなー。」
あ!
俺の脳内にビリッと雷のような電流が刺さった。
漫画で見るより、ずっと刺激が強い。 気もせんでもない。
ちょっと頭が痛い。
漫画を見すぎたからだろうか。
きっと普通は痛くないのだろう。
「お ま んなー。」
「は?」
あ、口が滑った。
やばい、起こられるだろう。おそらく。
「フハハハッ! お前ほんとにいい度胸じゃねぇか。 」
「嫌いじゃねーぞ!」
スゥゥッ
この人は、おかしいのか?
普通、怒るものでは?
まぁ、怒られなかった分、良かったのか?
いや、そもそもその思考がいけないのか。
「……..お前、陰キャ?」
ピキッ
一番キライな単語が出た。
陰キャじゃない。
1人でいるのが好きなだけだ。
「..いや、違いますけど?」
「怒っちゃってる?ww」
「別に怒ってません。」
「そー?」
「っていうか、何のようですか?」
「あー、そうだった。 いや、お前だけ前回の部活休んだだろう?その時に他の奴らに配ったプリント。 渡しに来た。」
「あ、そーすか。」
ビラッ
大量の紙。
俺が嫌いなプリンターの紙だ。
あまり触ったときの感触が好きではない。
これ、絶対一回分じゃない。
教員あるあるのプリント溜まってた分、一気に渡しちゃうタイプの量だ。
「あ、ありがとうございます。」
「ほーい。 じゃねー あ、次回は絶対来いよ!」
…………….ちょっと待て?
俺は入部なんてしてないぞ?
なんか、勘違いされてない?
それより、この手紙だ。
入学式で3年生全員の自己紹介カード、105枚の束を渡された。
俺は暇なときにちょくちょく読んでいたので、もう全員分の自己紹介カードを読み切っている。
大体の名前は把握したが、そんな『清水 叶』なんて人、居なかったぞ?
本当に誰なんだ。
ますます授業に集中できねぇじゃねぇか。
高校生での間に結果を出して、父さんに認めてもらわねぇといけねぇっていうのに。
俺の家系は優秀な人間が多く、
いとこの双子はイギリスに留学。
兄貴は灘中高等学校卒業。
弟も同じく難中学校へ進学。
俺は将来の夢のため、別に偏差値の高いわけでは無いが、俺の好きな動物についての授業がある北海道の高校で寮生活。
なのに、、、、
『清水 叶』はどれだけ俺の学習の邪魔をするんだろうか。
とんでもねぇ奴だなぁ。
『清水 叶』は!?
コメント
1件
にゃははは!