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「ワタシ、宇宙人なんです。」
初対面でいきなりぶっ飛んだ発言をしてきたこの女、宇佐美ソラは俺の高校生活で初めての友人であった。
まだ肌寒さが残る4月。新品の制服が賑わう入学式。クラス分けを終え皆が談笑に勤しむ中、俺はいわゆる「ぼっち」だった。
理由は明白、この険しい顔つきだ。この悪人面のせいで人が寄り付かない上に、緊張しいなので余計に近寄り難いオーラが出てしまい孤高の存在となってしまうのだ。そんな俺に簡単に友達が出来るはずも無く中学では体育の授業で先生とペアを組んだり、落し物を拾っただけで女子に泣かれたりなど散々な嫌われようだった。がしかし、この高校生活ではそんな日々とは必ずやおさらばしてやるのだ。目指せ友達100人!
……と意気込んではいても、結果はこの通り。無事初日から誰とも話すことが出来ずにいる。勿論自分から話しかける努力はした。しかし緊張するあまり最大限に強ばった顔により声をかけるやいなや距離を取られてしまい、結局友達100人計画は夢とまた夢の存在へとなってしまったのだ。
「どうせこのまま教室にいても無駄だろうし、そろそろ帰るか…」
そう思い席を立とうとした途端、話しかけてきたのは隣の席の女子だった。
「もう帰るんですか?」
青みがかった髪に良く似合う明るい瞳に吸い込まれそうになった。
「えっ、あ、うん……」
「じゃあ帰ってしまう前に自己紹介でもしませんか?確かまだ話してませんでしたよね?ワタシ、宇佐美ソラって言います」
「俺っ、は、龍川ミコト…です」
思わずの出来事に緊張のあまり声がうわずってしまったが、俺の名前を聞いたその子はいい名前ですねとニコリと微笑んだ。今日一日、誰とも会話することなく終わる事を覚悟していたから 初めて話すことが出来たことに思わず感動してしまった。もしかしたらこのまま友達になれるんじゃないかと 期待してしまう。
「あの…!良かったら俺と友達に…ぃ」
まずいまずいまずい。思わず口走ってしまった。初対面で自己紹介したばかりなのにいきなり友達になって下さいは失礼すぎたか?いやそれよりも俺の顔、今とてつもなく強ばっているよな?自分でもわかるぐらいの凶悪人面になっているだろこれ。どうにか表情を和らげないと
「あぁ、急にごめんねこんなこと言っちゃって。驚いた…よね 」
微笑もうとしたが緊張はとけず。それどころか変な汗が出てきてしまう。せっかく俺なんかに声をかけてくれたこの子に怖がられるのも嫌だし、もうこのまま逃げ出してしまおうかと弱気になってしまう。
「そんなこと無いですよ!私も、貴方と友達になりたかったんです!」
夢にまで見た台詞。感動のあまり俺は立ち上がった席にまた座り込み、しばらく呆気にとられていた。どうしよう。こういう時、なんて言えばいいんだっけ…
「よ、よろしくお願いします…っ」
「はい!よろしくお願いします。実は私も友達作れるか不安だったんですよ」
そう言って差し伸べられた彼女の手にぎこちなくも手をのばした。こんなに明るい子なのに友達出来なかったのかな?もしかして遠くから引っ越してきたとかかな?
「地元ここら辺じゃないんですか?」
「はい、宇宙から来ました 」
「え?」
浮かれ気味だった俺の脳みそに何やらトンチキな台詞が聞こえてきた。緊張と嬉しさで上手く頭が回らないせいか、聞き間違いでもしたのだろうか。いや、聞き間違いであってくれ。
「ごめん……今、宇宙?って聞こえたんだけど…」
「はい。ワタシ、宇宙人なんです。」
聞き間違いじゃなかった。はっきり聞こえてしまった。宇宙人だと……。 酷く動揺する俺とは対立に彼女は以前変わらずこちらを見つめている。
何故だろう。握手した彼女の手から離れられない気がした。何も変わらずただにこやかに笑う彼女がどうしてか急に怖くなった。どうやら俺の高校初の友達はとんでもない「電波女子」だったようだ。