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シンデレラが消えた日の空は、とても綺麗だ。
君は、シンデレラのようだった。
お金持ちだが、継母に虐められ、父親はすでに病死。
姉は優しく、常に君のことを思っていたらしいが。
決定的に違うのは、君には迎えに来てくれる王子がいないことだろうか。
今なら、その役目は僕の役目だろう。
僕も、社会人になってからは、割と成功を収め、大富豪となっている。
妻もいないし、君を迎えに行けるレベルにはなった。
「でも、さすがに黄泉の国にまで迎えにはいけないなぁ…」
君は、もういない。
どうして逝ってしまったのかは、僕にもわからない。
継母の虐めに耐えきられず、というのは警察の判断だ。
僕としては、あんなに我慢強く、明るい子がそんな理由で、ことを起こすはずがないと思う。
継母は逮捕。姉は、静かに暮らしているという。
僕は、ただただ呆然としていた。
『いつか、迎えに行く』
そう言ったのは、3年前。高校の卒業式が終わってすぐ。
君は、いろんな感情で涙ぐみながら、頷いた。
その涙には、卒業したらさらに虐められるという悲しさと、僕が迎えに来てくれる嬉しさとかがあっただろう。
ただ、僕は貧乏だった。
お金持ちの君に結婚を申し込むべき人物じゃないし、継母を黙らせられる財力や力がない。
そんな男に逃げようと言われたら、君はどんな顔をするだろう。
それがずっとこべりついて、行けなかった。
でも、諦めたわけではない。
毎日、できる仕事はやっていた。サラリーマン、清掃員、商談、小説家……。
そこまでしてお金を貯めていたのも、君のため。
でも、君が死んでしまったから。
縄は、痛かっただろう。
時間がかかっただろう。
この3年間は、君にとってどれほど辛いものだったんだろう。
君は確かにいたはずで、ここには幸福があったはずで、あったからこそ、苦しみが生まれた。
僕は、馬鹿だ。
そんなお金に左右されず、さっさと君に会いにゆけば良かった。
君は、そんなことなにも思わなかっただろうに。
後悔しても、後の祭り。
泣き崩れたいけど、そんな資格どこにもない。
助けを求めるように上を見上げた。
とても、綺麗だった。
青く、深く、澄んでいた。
あの誓った卒業式の時のような春空。
君の優しい手のように、風がふわりと僕の頬を滑る。
シンデレラが消えた日の空は、とても綺麗だ。