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繁華街をとおりすぎて喧騒の中を進んだ少し先、路地裏の一見普通のビルに見える建物の扉を開ける。
そこは初見お断り、会員でなければ入れない所謂ゲイバー。
学生時代、俺はあるきっかけでこの世界に足を踏み入れた。
初めはよくあるソウイウコトをしてくれる店にいっていたが、ひょんなことからこの店を知ってからは、ずっとこの店に通っている。
下手したら自宅よりもここにいたかもしれない。それくらい入り浸っていた。
今日誘ってくれたキルちゃん…キルシュトルテはその頃からの友人である。
(“キルシュトルテ”は、この世界での芸名みたいなものだ。自分も”ボビー”と名乗っている)
ズバズバと物怖じせずになんでも言ってしまうが、それ故に発揮される誰にも真似出来ないトークとエピソード力。
かと思えば、案外に周りが見えていて盛り上げたり、声をかけたりする常識人的な面も持ち合わせている。
彼との呑みはどんな人も飲むよりも楽しいのである。
彼のさっぱりとした性格のおかげなのか、人間関係が長続きしない自分の中で、1番と言っていいほどの付き合いだった。
そんな彼とも、自分が教職についてからは会う回数がめっきり減っていた。久しぶりの再会に少し胸が踊る
(あぁ、今日キャメさんもいるんだっけか)
同じく学生時代、良くしてくれた男性店員の顔が脳裏に浮かぶ。
今日は絶対いい夜になるに違いない。
その2人のどちらかがいるなら、やはり今日中に家に帰ることは無いだろう。
期待のせいか少し体温が上がる。
はやる気持ちをおさえて、扉の先にいた係員に会員証を提示する。
少し薄暗い廊下を進み、店内へとはいる。
ゲイバーとはいうが、内装や仕組みはただのバーと何ら変わりない。
少し違う点と言えば、客が男しかいないことと、店内で出会った者同士が”ソウイウコト”をできるような部屋が奥にあることくらいだろう。
手前の席で飲んでいる、自分が通っていた頃には見なかった顔の男性たちからの視線を無視して、さらに奥のカウンター席へと向かう。
「いらっしゃ….おお!せんせーだ!久しぶりだね??」
「久しぶり、キャメ、一旦その呼び方やめれるか?」
「ごめんごめんwついねwキルちゃんこっちだよ」
そう言って指さされた先には、バーカウンターの1番端でスマホをいじるキルシュトルテの姿。
昔と何ら変わらない….が….
「いや誰やねんこいつ」
俺が座る予定であったであろうキルの隣の席には、白髪の小柄な男性…
いや、少年が既に腰掛けていた。