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いつのまにか寝ていたのか、どうだったか。とにかく起きた。手足は動かせない。椅子に縛られている状態で、目の前には机と…ヒト。「…起きた?」
長く黒い髪を耳にかけた。
「ここは…?」
「ここはMEAの地下よ。」
「そっか。ねぇこれほどいてくんない?」
一応聞いてみる。
「無理なお願いね。わかってるでしょ」
だろうね。
「…で、あなた、誰?」
誰と言われてもこう答えるしかない。
「小林琉夏。」
「ほんとうに?私たちの知ってる琉夏は、人間よ。」
このヒトは声が震えてる。そんなにか。
「ニンゲン?本当に?なんでそれが確証付けられるの?」
「それは…」
目の前のヒトは口籠る。
「別にこの姿で殺してもいいんだよ。でも、嫌でしょ。思い入れのあるこのもので殺されるのは。」
「ねぇ?にんげんさん?」
表情は無。けど俯いている。やっぱり面白い。
突然、目の前に電流が走った。
電気を流された。
「いてぇな…急になにすんの」
「私の質問に答えなさい。あなた、何者?」
「小林琉夏」
また電気が流れた。流石にこの体の作りじゃきつい。目の前のヒトは電気銃をおれの額に突きつけてくる。
「何者かと聞いている。」
答えるしか、ないか。バレたらめんどくさいけど。
「うーん、君らで言う喰型のバケモノ。」
自分で聞いたのになんでそんなショックな顔すんのかなぁ。やっぱり、面白いなぁ。
「私たちを最初から騙していたの?」
「いや?お前と今日この人格で初めて会ったな。」
「…どういう事。説明しなさい。」
「はーいはい。小林琉夏は、おれが喰べた。喰べた後はどのバケモノも二つの人格を持つ。一つ目は小林琉夏の人格。この人格は自分がバケモノだと、おれたちの人格さえも気づいていない、いわば偽物だと気づいていない人格。二つ目はおれたちバケモノの人格。この人格は最初の喰べる時とある条件をクリアしないと出てこない人格。だから、わざわざ殺さなくても良いんだよ。」
「じゃあ、今までの人格は全て琉夏だったという事。」
「そゆこと。」
「その条件は?」
「喰べたニンゲンの本物、つまりは死体を見ないこと。」
「じゃあ、なんであなたは出てきたのかしら。」
「見たんだよ。本物を。まあでも、この人格が出てくるのは写真とかでも反応するから多分それ見たんじゃない?あんまり詳しくは知らないよ。」
額に突きつけてくる銃が銃口をグリグリと押し付けてきて痛い。
「どうして知らないの?」
「琉夏の人格は、もし琉夏が生きていたらこんな風に生きていたんだろうなと勝手に動くんだよ。おれたちはそこに干渉できない。できたとしてもせいぜい、身体のなかから見ることぐらいしかできない。」
拳銃を持っている力が緩んだ。
「記憶とかもないのね。」
「そゆこと」
ついには、拳銃を下ろした。悲しそうで憎らしそうな目を向けながら、こう言った。
「…琉夏に、変わって。」
「それは…」
これは言えない。
「さ〜ぁ?おれの中のどっかにいるんじゃなぁい?」
また銃口が向けられる。
「はやくしなさい。」
声が震えている。隠しているつもりなのかわからないが、明らかに顔が真っ青だ。この顔を見れば、おれはもう大丈夫だ。楽になれる。
「わかったよ。じゃあ変わってくるからちょっと待ってろよ」
勝った。おれは遂にあそこへいけるんだ。やっと、やっとヒトへ戻れる。やっと人間に
…は?なんでいる?なんでお前がここに。やめてくれ。お願いだから。やめろ!
「んん〜!もう朝…?」
目の前には班長。周りを見渡すと四方八方コンクリートの狭い部屋。いつもの雰囲気と全く違う班長に恐怖を覚える。
「琉夏の振りか?」
「ふりって何?班長、どうしたの…?」
怖い。何か怒らせてしまったのだろうか。
ビクビクと怯えていると、後ろのドアが開いた。
「…じゃーん!ドッキリ大成功!!」
入ってきたのは中山くんで、手にはドッキリ大成功!!の文字が書いてあるでっかい看板を持って大笑いしていた。
「いやぁ、琉夏まじで引っ掛かっとったんおもろかったで。まじ傑作やわぁ」
笑いすぎて死にそうになっている中山くんを横目に黒井が言う。
「ごめんね〜。遊がしてみたいって言い出すから…」
溢れていたものがどっと出てきたのがわかる。
「怖かった…!!ほんとに!びっくりしたんですよ!!」
「あはは…ごめんごめん。後でなんか買うから」
「え、じゃあ新作のバケモノ専用小型ナイフ買ってくださいよ!」
「え、あれ一個9万せんかったっけ?」
「遊、4万5000円ずつ出しましょ。」
「なんで俺まで」
「企画したの遊でしょうが。」
和気藹々?と出ていく班長達に琉夏はこう言った。
「あ、さっきの人格は消滅したんで大丈夫ですよ!」