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「以上だけど。だいたいの流れはわかった?」
検査員のヘルメットの下から紫雨が由樹を見上げる。
「まあ、ここは分譲地だし、地盤堅いから4箇所取れば十分なんだけど、もしお客様の家で地盤が柔らかかったり、変形している土地だったりするときは最低6箇所かな。多ければ多いほど正確なデータが取れるから」
その明るい声が遠くで聞こえる。
「……はい」
「あれ、新谷君、どうした?」
また顎を包まれ、バックルを外しヘルメットを外される。
「わ。顏、赤いよ?」
紫雨の両手が由樹の顔を包む。
「やば。これ、熱中症か?」
言いながら林を見る。彼はあいまいに首を傾げた。
「ちょっと管理組合の事務所の日陰に車移動して休ませてくるわ」
紫雨は軍手を外してポケットに突っ込むと、由樹の二の腕を掴んだ。
「林は使い終わった器具洗ってて。そこの立水栓借りていいから」
「……わかりました」
林が少し肩を落として頷く。
「休ませたら、俺も手伝うから。まず、一人でできるところまでやってろよ」
言いながら、由樹を後部座席に寝かせる。
(あー、やばい)
頭がクラクラする。
これが熱中症というやつなのだろうか。
(でもこれって………まるで)
「大丈夫か?新谷君」
運転席に回った紫雨がハンドルを握りながらキーを回す。
「……迷惑、かけて、すみません」
言うと、紫雨は笑った。
「いえいえ。礼には及びませんよ」
謎の反応をしながら、マニュアルギアをローに入れ、走り出した。
ひんやりとするシートが火照った顔に心地よい。由樹は頬を擦り付けた。
(……まるで、酔っ払っているみたいだ……)
車の揺れが、眠気を誘う。
由樹は怠い体とシートの心地よさの感覚に耐え切れず、重い目蓋を閉じた。
ーーーーーー
ーーーーーー
何だろう。
下半身が生温いような。
くすぐったいような。
と、突然、そこが熱くなる。
足が何か重いものに下敷きになっていて、動けない。
「う。うう……」
由樹は唸りながら、顔を右へ左へ動かした。
重苦しさと、体の中心を襲っていた熱い何かが一瞬離れた。
と思えば今度は上半身に硬い重みが移ってくる。
だらんと左右に広げていた手首をつかまれ、頭の上で一つにまとめられると同時に、唇に何かが吸い付いてきた。
(……俺、キスしてる……?)
熱い舌が入ってくる。
付け根から強く扱きあげるような感覚に思わず顎が上がり身体が浮く。
くねらせた下半身。
体の中心が、ひんやりとやけに寒い。
先ほどまでは熱かったのに。
(なんで……?)
頭の芯がぼーっとして、よくわからない。
嘗めとられる口内が気持ちよくて、漏れる息が耳に響いて、何も考えられない。
手は左右に分かれ、今度は腰の近くで押さえつけるように握られた。
重みがまた下半身に戻っていく。
と、先ほどまで冷たかったそこが、また熱に包まれ、
「は………」
由樹は思わず声を出した。
これは…………夢?