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1年越しか…水さんからなのかな…? クローバーの花言葉って 復讐とかいいますよね
半年前。
彼の死……から、半年とちょっとが経って。
学年は一つ上がり、あの忌々しいクラスは離散した。
🐇「…僕は2番で、うしろは……大神さん、か。」
🐇「もう、いむくんの席は…ないんやね。」
彼がいなくなってからも、僕の一個後ろの出席番号は空席のままだった。
もういない彼の面影をそこに残したまま季節は流れた。
…今日から彼はこの学校から姿を完全に消してしまう。
そう考えると、心に空いた穴がさらに抉れていく気がした。
🐇「…可笑しいよなぁ…?笑」
彼を消し去ったのは、紛れもない僕自身。僕のせいで、僕のせいで彼は命を絶った。
…誰も知らない。僕が主犯だったことを。
…1人で抱え続ける、僕の罪。
🐇「いむくん…」
💎___信じてたのに。馬鹿。
なんでお前がのうのうと生きるの?
なんでお前は僕を虐めたの?
許さないから。全員。全部。
💎__ねえ、だから。_______________
🐇「…稲荷、ほとけ…」
彼は「稲荷」という名字が嫌いだったらしい。
母親の再婚相手の名字。
💎 __ 心から嫌いなあいつらと同じ名字とかさ、最早地獄じゃん。
そう自嘲気味に笑っていた。
なんでそこまで両親を恨むのか。
僕が知ることは無かった。
そう考えたら、僕は彼の何も知らなかった。
ただ恋焦がれて、走っただけ。
なんだっけな、彼の元の名字は。
綺麗な字でしょ、と明るく笑ってた彼。
彼の瞳によく似合う、綺麗な名字だった。
ああ、確か……
ふ、ととある名字が浮かんだ時、後ろから遠慮がちに声を掛けられる。
🐤「っ、あの…‼︎」
🐇「…え、僕…ですか?」
クラスメイトから声を掛けられることなんて、この半年無いに等しかった。
だからか、反応する声が少し上擦った。
が、そんなことを気にする様子もなく、男の子は続ける。
🐤「はい、えっと…有栖くん、ですよね?」
🐇「ああ…そうやけど…」
🐤「あの!俺、とある人に頼まれて…これ、有栖くんに渡すように。」
🐇「ええ?…あ、ありが…とう?」
少しおどおどした雰囲気で包み紙を渡される。
半ば押し付けるように手渡し、彼は背を向けてどこかに歩いて行こうとする。
🐇「ちょ、待ってや…!これ、頼まれたって誰から…」
🐤「俺も名前は知りません。…でも、中身を見たら分かるって言ってました。」
🐤「俺はこれで。頼まれただけ、なので。」
こちらを振り返って申し訳なさげに眉を下げる彼は、到底嘘を言ってるようには見えない。
本当に見ず知らずの人に頼まれたのだろう。
が、そもそもこんな包み紙を僕に渡そうとする知り合いなんていない。
顰めかけた眉をなんとか制御し、今度こそ去ろうとしている彼に声をかける。
🐇「えっと、君…!!」
🐇「…名前、は…なんて言うの?」
いきなり声をかけられた彼は少し驚いた表情をして、ふわりと笑った。
🐤「大神。大神りうらです。」
🐇「…大神って、僕の後ろの…名簿の?」
🐤「あ、そうです!3番の大神です。」
🐇「ああ、君が噂の……」
🐤「…噂?」
🐇「ああ、いや…なんでもないんよ。ただ、手紙の主さんには感謝せななって。」
危うく口が滑りかけたところを、半ば強引に話を変える。
ただ、彼はいぶかしげな表情を浮かべる。
🐤「感謝って…、そんな見ず知らずの人に…?怖くないの…?」
🐇「んー…いや、こうやって大神くんと話す接点ができたんやし。」
🐇「中身も分からんし、相手の素性もわからんけど…まずは、感謝かなって。」
そう言うと、彼は少し目を見開いた。
そして口を開く。
🐤「有栖くんって、冷たくて話しかけづらいって噂だったけど…全然そんなことないね。怖がって損した気分。」
🐤「出席番号も前後だし、……何かあったら相談して下さいね。特にその、手紙の…こととか。」
そう言って、話しかけてきた時とは段違いににこやかに去っていった。
🐇「…前向きに、考えなあかんやろ…?」
そう自分に言い聞かせる。
いつのまにか縛っていた紐が解けた手紙からは、大量の四葉のクローバーが舞い上がった。