コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「さて、では改めて自己紹介をしよう。私はこの学校の校長である鬼塚だ。堅苦しいのが好きでないなら全然鬼ちゃんって呼んでくれてもいい。」
「あっ……はい。」
「さて、それでだ。なぜ君がこんなところに飛ばされたのかを簡単に説明しよう。まず一つは、この状況になってなおパニックになっていないという精神力の強さを評価してる。」
「パニックにはなってますけどなんか感情が一周してきてもはや冷静になってるが正しいですね。」
「そして二つ目は君が『視える』という人間だからだ。」
「はぁ?」
「ユキちゃん説明をしてあげなさい。」
「はいはーい!」
「えっと……どいうことですか雪代さん?」
「前勤めてた学校のことはまだ記憶に新しいわよね?」
「そりゃまぁ……。」
「で、生徒の顔は皆覚えてるかしら?」
「何とか覚えましたよ。私ほかの人より物覚えはあんまりよくないんで結構努力したなぁって感じてますもん。」
「それじゃあその覚えた生徒の中に一人だけ名簿に載ってない子がいたのを知ってる?」
「あ~、いましたね。私は学校側のミスでこれ良くないんじゃないかなって雪代さんに話しましたもんね。」
「その子の名前は知ってる?」
「本人から直接聞きましたよ?『秋元渚』って話してました。」
「そう。その渚ちゃんなんだけど、彼女幽霊なのよね♪」
「……なるほど。雪代さん。エイプリルフールは大分先の話です。冗談にしてもそれはよくないですけどね?」
「いやいや、これが大マジなのよ。何なら彼女先週くらいにこっち来てたかな?」
「……。マジで?」
「うん♪まじで♪」
「幽霊だろうが関係なしに変わらず接することができる君はこの学園の先生にふさわしいということでユキちゃんに頼んでこっちに飛ばしてもらったってわけじゃ。」
「それに、前の校長っていうかあの学校真っ黒だからユウカちゃん狙われてたのよ?」
「……えっ」
「危ないなってことで申し訳ないけどありもしないことをあのおっさんに伝えて私がここに飛ばしてもらうように仕向けたってわけ。で、教育係の私も責任取りますって言って辞任してきた♪」
「つまり、私は助けられてもいたってこと?」
「そう!まぁ、別に感謝はいらないよ?私ら的にもあなたが欲しかったから。いうなれば引き抜きをしたってだけだからさ。その分こっちでもっと働いてもらうけどね。」
「……ですよねぇ。」
「まだまだ色々話すことはあるが今はそうじゃな疲れてるだろうし彼女のデスク周りができたら今日はもう帰ってもいいぞ。」
「え?」
「ここに来るのも大変じゃろ?後々行き来が楽になるように工夫したりはするが、すぐにはいかないからとりあえず設備が整うまでは早上がりしてもらって結構だからな。」
「は、はい……。」
「では、また明日以降よろしく!」
そんな軽い挨拶をして雪代さんと共に部屋を後にし職員室にまた戻ってきた。
「これ、どっきりとかじゃないですよね?」
「そんなわけないでしょ~?だとしたら大分手間暇かけてることになるじゃない?そんな暇教員にあると思う?」
「い、いえ……。流石にそこまで暇ではないでしょうけど。」
「でしょ?だからこれがリアルってわけ。さ、とっととデスク周りをきれいにして今日はもう上がっちゃいなさい。明日以降また色々お願いしたりするからさ。」
「わっ……かりました。」
こうして私はお昼過ぎにはもう退勤して、余った時間で久しぶりの休暇を楽しんだ。正直、いまのこの状況が怪しすぎるが雪代さんは一年足らずの付き合いではあるが彼女がそんな怪しい人物には私には到底思えないし、校長である鬼塚さんも私をハメようとしてるようにも思えない。ぶっちゃけ前の学校より待遇がよさそうな雰囲気まで感じる。まだまだ私が見たのは浅瀬かもしれないけど、その浅瀬の時点で感じるこのホワイトな職場感……。多分、これを口だけで伝えたら心配されるだろうけど同じ境遇になったら共感してくれると思う。それくらいには感じてる。まぁ、何はともあれ今日はいったん寝てまた明日以降の環境を見て続けるかどうか考えようかな。
翌日、いつも通り朝の六時には起床し準備をしているとスマホが鳴る。確認すると雪代さんからの連絡だった。内容は『そういえば伝え忘れたんだけど、うちの学校は基本夜間から始まるから朝はゆっくりして大丈夫よ~。』とのこと。つまり今私は無駄に早起きしてるということか?なるほど……。つまりは完全なやらかしってわけだ。でもまぁ、相手側が伝え忘れたっていうこともあるんだけど……。とりあえず暇ができたということで久しぶりに家のことやるだけやるか。
その後、家事を済ませるもまだ時間があまり、やることが無くなった幽華はとりあえず仕事に行く準備をして街に車を走らせる
「一旦腹ごしらえだけしてそのあと学校向かうかぁ…。」
適当な飲食店に入り注文をする。その待ち時間ふと自分が勤めることになった学校を調べてみることに。すると検索上位でヒットする内容は決まってこの言葉が入っている『行くな危険!?最恐心霊スポット!!』という文言である。それらの記事を軽く見ていくと『都市伝説だと思っていた口裂け女と遭遇した』とか『明らかに半透明の女の子がこちらに気が付きニヤッと笑って消えた』など、とにかくそういった恐怖を煽り立てる内容が散見されたのだが、まぁそうだろうな。ていう感想しか出てはこなかった。実際、昨日会った校長も文字通り鬼だし私の教育係を担当している雪代さんも雪女と話していた。何より、あんな山奥にある学校に普通の人は来るわけがない。一応車での通勤も可能で道は舗装されてるけど学徒が訪れるにしては酷すぎる。それに何より外装があれだけボロボロなんだから廃校と思われてもいいだろう。中は外装と比べて雲泥の差で綺麗だったが今見ている記事には内装もボロボロという風に書かれていて私が見たのと真逆のことが書いてあり頭の中に【?】が浮かぶほどではある。
注文した料理が届き店員さんに軽くあいさつした後料理を食べながら学校のことをもう少し調べてみると、とある自称霊感がある心霊系の動画を出している方の記事とその動画が記事に張り付けられておりそれをタップし動画を見てみる。動画が始まり冒頭を飛ばして本編である学校探索を見てみるが確かに映っている光景は昨日私が見た景色と何ら変わりはない。特に合成とかってわけでもなさそうだ。そのまま見続けると動画では物音がしたと投稿主が視聴者に向けて説明するが、私からすればそれはそうだろという感想が出る。なぜならそう話している時に撮っている動画に音を出している張本人が出てるのだから。撮影時の主は気が付いてないのは仕方ないが編集時でも気が付かないもんかねぇ、なんて思ったりする。そして動画が進むにつれてポルターガイストが頻発して撮影は困難と判断し撤退したと動画主は話しており、その後場面変わって別日の動画主はこの日のことを振り返っているがそこで「あの時物音がしたりものが勝手に動いたりしたのは霊を怒らせてしまったかもしれない」と話しているがそれを見て聞いて私は『コイツ適当な事言ってるな』とつい小さくではあるが声に出してしまったのだ。
というのも、この動画に出てきた(視えた)幽霊は全部で三人だがそのどれもが大体子供で音立てた後にビクつく投稿者を見てケラケラ笑っているのをしっかり撮られている。投稿者はそれに気が付いていないのだ。怒らせてというより、貴方がビビってるから子供たちに遊ばれてるんだと視える人からすれば『何言ってんだコイツ……。』状態である。現にコメントでも私と同じようなことを感じた人がいるがそういう人は決まって袋叩きにされていてご愁傷様ですという感想しか出ない。
ここまであの学校のことを調べたが得られたのは心スポとして有名である点だけだ。あの学校の実態が何にも分からないまま注文した料理を食べ終え会計を済まして、夕方前には例の学校に到着し自分のデスクに腰掛ける。
「結局この学校のことなんも分かんなかったなぁ…。」
そうぼそりとつぶやいたのを偶然入ってきたとある人に聞かれてしまった。その人は自分と同じく人間で年齢は恐らく同い年か少し上の青年だった。
「あっ……。は、初めまして。」
「え?あっ……。は、初めましてぇ。昨日こちらに飛ばされた西連寺幽華です。こんな形でしかもこんな態勢でのご挨拶大変申し訳ございません。」
「あ、あぁ…いえいえ。お気になさらずに、僕この学校の正式な教員じゃないので…。」
「……。はい?」
「分かりやすいくお伝えするならばバイトみたいなものですので。」
この学校……。いや、この学園のことがますます気になるし分からなくなる発言が出てきたなぁ……。