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4,618文字…がんばっちゃ
The・小説みたいな書き方!ちょっと空気どんよりだから苦手な方ばいばい
長いから時間あるときに読んでね!!
「藤の子よ、我が妻にならぬか?」
手作業をしている合間に担当している神様から一言。そんなことを言われた。神様のお顔を伺うと困ったような、けれど笑顔を忘れてはいない顔をしながらこちらを見る。
神様の言っていることがわからず、インコの様に同じことを言い、聞き返してしまった。
「ぇ?つま…ですか?」
「嗚呼。我が妻になり、一生を隣で過ごしてほしいのだ」
「で、ですが!私にも大切な仲間や家族が…!」
「我の隣にいてくれればそれで良い。仲間にも家族にも何回か合わせるぞ。それでもか?」
言い訳などを考え、妻への一歩を引き下がろうとする。が、やはり神様、僕の思っていることをわかっているかのように対策をとってくる。
言い訳がなくなり、オドオドしながらも頭をフル回転に何かいい案がないか考える。が、それさえもできなくなり、一人称を繰り返し言う機会のような人になってしまう。
「私は……わたくし、は…」
「藤の子の意見が聞きたい。我も身勝手ではないのでな」
僕の意見も聞いてくれる神様の配慮。感激しながらも、どう返答しようか悩ましい。承知してしまえば日課の魔の手づくろいの手伝いも、VΔLZみんなでのたわいのない会話も1年に数回程度になってしまう。かと言い、断ってしまえば僕の命や記憶、体の一部などを高確率でなくしてしまう。
とてもとても悩ましいことだ。けれど、その悩ましいことでも一つ昔から願っていることが叶えられるならば話は別だろう。叶えてもらいたいものを餌に、神様を釣ってみる。
「わたくしが……ぼくが妻になれば桜魔は、桜魔は良くなりますか?」
「きっと、良くなるであろう。藤の子と一線を超えたらだがな」
一線をと聞き、動揺が隠せなくなる。一線ということは、恋人たちがするようなことを今目の前にいるお方としないといけないと言うことだろう。
一線を超えたくないが、魔という危険な生物がいる桜魔では、良くなることが第1優先。正直その言葉を聞いてしまえば妻にならざるを得ない。
今の考えを保留にはできないか?と控え気味に問いてみたら、やはり駄目な様で。
「我は今、藤の子から直接返事を聞きたいのだ」
「ですが、急には頭が混乱していまして…」
「桜魔がより良くなるのだぞ?桜魔の一員ならば望むものであろう。我の妻になればいいだけの話。よかろう?」
「ですが…!!」
「藤士郎」
静かな声で、けれど圧迫感が凄まじい様に言葉を発する。官吏の本名を言うときは大体神様の逆鱗に触れたときだけ。
僕はここでこの世を去るのだろう。と思い瞳を閉じる。けれど苦しい感覚が何時までたっても襲ってこない。恐る恐る瞳を開き、神様の様子を伺う。
神様はこちらを見ているだけで何もしてこない。確かに逆鱗に触れてしまったはず。口を開き、言葉を発する。
「ぁ、あの!確かに逆鱗に触れてしまったはずです。どうして何もしてこないのでしょうか?」
「ん?嗚呼。藤の子の戯言が多かったものでな。逆鱗には一切触れてはおらぬ。安心しなされ。それで、返事はどうだ?」
「へ、んじ…は……」
「……妻に、成らせて頂きます。」
「そうかそうか。我は嬉しい限りだ。いつ正式に妻ということにしようか」
「わたくし…本当に、本当に妻という存在に成れるのでしょうか…?」
不安が頭を真っ白にさせ、つい言葉を零し言ってしまった。初めての神様への傍につくことへの誓い、そのことを許してくれなさそうな景くんと晴くん。
誓いでの服や、2人への説明、ライバー活動など色々なことが頭によぎる。
けれど、もう約束をしてしまったため、今更約束を破棄だなんてできない。ましてや神様に。もう諦めて残りの時間を2人と、魔と一緒に過ごそう。そうしよう。
「嗚呼成れるとも。これからよろしく頼むな。藤の子よ」
「弦月最近おかしくねー?」
「ん?そうかな?普通じゃない?」
「いやいや、前までは頻繁に寝泊まりしなかったし、そんな遊ばなかったじゃん!」
「確かに。けどお弦寂しいからじゃないのー?」
「ちょ、晴くんまで…」
「僕そんなんじゃないからね?」
「ホントか?」
なんて優しい笑顔をこちらに向け、優しい声で言ってくる。その顔にすごく弱いんだよなぁ。とか思いながらも景くんと晴くんの言っていることを否定する。
2人は今さっきの会話をネタに話題を広げる。この時間が世界で1番大好きかもしれない。だって幸せをずっと五感で感じられるから。全てが幸せだと思えること、そうそうない。
「みんな疲れてるし一緒に雑魚寝すっかー!!」
「それじゃもっと疲れるだろ」
「はー??それはハルだからじゃないの?」
「お前っ!!おいまてっ!!!」
「んふふ、ぁはははっ!!」
2人のいつもの光景を見て、笑いと悲しみが込み上げてくる。いつもは「あー、はいはい。怪我には気をつけてね」の言葉だけで終わるものが、今日は少々違った様。
涙を流しながら笑う僕の姿を見て、心配そうに眉を八の字にし、僕に駆け寄る。
「どーした藤士郎!!どっか痛い?」
「僕たちが喧嘩したから泣いちゃった?」
「ううん。なんか、幸せだなあって思っちゃって…」
いつかこの会話が、行動が、全て全てできなくなってしまう、できても年に数回程度になってしまうと思うと、涙が止まらなくなる。
2人して焦りながらもフォローを入れたり、泣いてしまった原因を見つけたりしている。またその姿に胸を打たれ、泣いてしまう原因に一つ加わる。
正直話そうか話さまいかずっと考えている。話してみようか…でも2人に迷惑がかかってしまう。けれど今の気持ちを、苦しみを2人に打ち明かしてしまいたい。そう思ってしまう。
がんばって口を開く。はくはくっと口を動かしては閉じて、動かしては閉じての動作を繰り返す。2人は笑わずに、引かずに隣に座って優しい眼差しでこちらを見つめ続ける。
「ぼ、くね、あのね、ぼくっ!」
「ゆっくりでいいぞ」
「ぼく……かみさまの、かみさまの妻に、なります…」
「「は?」」
「つ、つつつ、つま!??」
僕の言葉を聞き明らかに動揺する2人。何個も質問を投げかけられる。
いつからなのか、妻になぜなるのか、僕の気持ちは、などと沢山のことを聞き、心を落ち着かせている様だった。
「ぼくね、2人と同期でよかったよ。」
「なんでそんなことっ!!」
「……明日、あした神様の妻に正式になるから」
「明日は早く家出ないとだから、朝起きたらいないかも…ごめんね」
「だから、今まで思ってたこと言わせて?」
「いやだ」
「へ?な、なんで…」
1人にそのことを否定される。声色的にたぶん景くんだ。理由を聞いてみると、案外納得できるようなものだった。
理由は明日の朝、弦月が家を出る前に聞きたい。とのことだった。
晴くんもそれがいいと賛成。僕も別にそれなら、と喉まで出かかっていた言葉を飲み込む。明日の朝になるまで、幸せな時間をめいいっぱい楽しもう。
朝起きると隣で寝ていたはずの弦月がいなくなっていた。家のどこを探しても見つからない。庭にも、弦月の家にも。たぶんだが、もう神の元へ行ってしまったのだろう。
弦月を探しているとき、ふとダイニングテーブルを見る。テーブルの上には、弦月が書いたであろう手紙が置かれていた。
「…拝啓。長尾景様、甲斐田晴様って書かれてる」
「弦月の字、だよね」
「嗚呼」
沈黙が続く。次に言葉を発したのは甲斐田だった。
「今ならまだ弦月の晴れ舞台、間に合うんじゃない?」
「……は、?今行くのかよ!?」
「だ、だって!!!最期の姿だよ!?そんなん見たいに決まってるじゃん!!」
なんて言いながら玄関側へ走っていくハル。ハルの背中を追いかけて、続いて玄関側へ走っていく。
ハルは藤士郎の居場所がわかるかの様に、すぐに藤士郎の場所へ足を運んだ。
「とうじろっ!!」
俺が言いかけると、ハルは上から言葉を被せてきた。その言葉は、彼に直接言ったらとても喜ぶ言葉だろう。
「弦月、きれいだね」
「メイクも、いつもより時間かけたんだろうね。すごく丁寧に仕上がってる」
ハルの額には涙が浮かんでいた。ハルも悲しいのだろう。昨日まで一緒にバカ騒ぎしていた彼が今日になっては綺麗な、儚い姿で神の嫁になる準備をしているのだ。
「弦月、僕たちのこと忘れちゃうのかな…」
「俺らのこと大好きなのに?」
「…多分だけど、忘れても俺らの姿みて懐かしいとは思ってくれるだろ」
「そうだよね。今は弦月の晴れ舞台に魅入らなくちゃ」
「拝啓。長尾景様、甲斐田晴様。」
「朝起きたら隣にいなくてびっくりしたでしょ?今日からは僕は現世にも、桜魔にもいません。いや、正式には桜魔にいるんだけど。多分というより、絶対に2人は来れない場所にいるし、記憶も少しなくなってるかも。」
「けれど大丈夫。VΔLZ3人で写っている写真を大切にポケットにしまっておいたから。」
「今の僕を見てどう思うかな?綺麗?儚い?恐い?前者2つだったら嬉しいな。今から僕のお願い、聞いてくれる?」
「1つ目、僕のことを忘れないでください。2人なら大丈夫だろうけど、一応言っておくね。記憶の片隅でもいいから僕のことを覚えておいて。時々、僕との思い出を振り返ってくれたら嬉しいな。」
「2つ目、僕の私物品は何個か持っていってくれていいからね。僕の私物品を持っていって懐かしんでください。スマホには写真とか動画入ってるから大丈夫だろうけど、ぜひ持っていってね。」
「3つ目、幸せになってください。僕以外にも素敵な人は沢山いる。VΔLZの僕の枠を別の人で賄ってくれても構わないよ。2人が幸せならなんでもいいから。僕に未練を残さずに心を切り替えてね。」
「最後のお願い、生まれ変わったら僕を見つけてください。僕は鈍感で、絶対2人を見つけようと思っても見つけられないだろうから2人で僕のことを見つけて。見つけてくれたら僕が絶対幸せにするから」
「全部叶えてとは言わないよ。けれど、僕がこんなこと言ってたな。って思い出して、僕のことちょっと想ってくれるだけで嬉しいよ。」
「絶対幸せになってね。 弦月藤士郎より。」
「絶対叶えてみせるから。ハルと一緒に」
✕✕年後
「ハルー!!!おーいどこだハル!!!」
「全く、迷子になりやがってぇ!ここ学校だぞ!?」
「ん?なんだあれ……あぁ!学年のテスト順位表か!!1年生は…どれどれ……1位、弦月藤士郎…?」
「なーんか聞いたことあるようなぁ?んんー??」
「おいっ!!長尾ぉぉ!!!」
「あ!ハルきゅんじゃーん♡」
「それやめろっ!!!」
「1年生の1位、弦月藤士郎だって!」
「へぇ、弦月…ねぇ……」
「? ハル知ってんの?」
「いや、親近感があって…」
「なんかわかるー!!けど気のせいやろ!!早く教室行こーぜ!」
「あ、ちょ!早いって長尾!!!」