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まりあが「華嶺家の秘密」とやらを知った日から、数日が経った。
正直、俺にとってはどうでもいいことだった。
まりあの家が昔どんなことをしていようが、誰かと敵対していようが、それが今のまりあに関係あるわけじゃない。
だけど――。
まりあは、その「事実」を自分のものとして受け止めようとしていた。
強い。
本当に、こいつは強い。
怖くて泣きそうなのに、それでも前に進もうとする。
俺は、その姿が好きだった。
だから、そばにいたいと思ったし、支えたいとも思った。
そう思っていた矢先、事件は起きた。
—
夕方、まりあと一緒に学校を出た時だった。
背筋がゾワッとするような違和感を感じた。
「……まりあ、ちょっと待て。」
「え?」
俺はまりあの腕を引き、後ろを振り返った。
すると――そこには、あのストーカー男が立っていた。
「……またお前か。」
まりあの体が小さく震えたのを感じた。
男はゆっくりと近づいてくる。
「まりあちゃん……どうして……どうして俺の言うことを聞いてくれなかったの?」
その声は、前に聞いた時よりもずっと異様な響きを持っていた。
「君のために忠告したのに……君の周りは危険だって言ったのに……なんで俺を遠ざけるの?」
その目は、まるで何かに取り憑かれたように狂気じみていた。
「……っ、李斗……」
まりあの声が震える。
俺はゆっくりと前に出た。
「お前、いい加減にしろよ。」
「何?」
「お前の言う『危険なもの』って、結局なんなんだよ。」
「……それは――」
男は一瞬、口ごもる。
そして、まりあをじっと見つめた。
「……まりあちゃんが、華嶺家に生まれたせいで、どれだけの人が不幸になったか、知らないんだね。」
その言葉に、まりあの顔が凍りつく。
「俺の家も……君の家のせいで、壊されたんだ。」
「え……?」
まりあが驚いて目を見開く。
「君の家の決断一つで、俺の家族はバラバラになった。君は何も知らないまま、幸せに生きてるかもしれないけど……俺はずっと、そのせいで苦しんできたんだ。」
男の声は次第にヒステリックになっていく。
まりあが震えるのがわかる。
「……で?」
俺は冷たく言い放った。
「お前の家がどうなったかなんて、まりあには関係ねぇだろ。」
「何……?」
「まりあは、何もしてねぇよ。」
「でも……!」
「お前、ただまりあを怖がらせたいだけだろ。」
男はギリッと歯を食いしばる。
「違う……俺は……!」
「帰れよ。」
俺はまりあの肩を抱き寄せた。
「これ以上、こいつを巻き込むな。」
男は一瞬、何かを言おうとしたが、次の瞬間、何も言わずに踵を返し、そのまま去っていった。
まりあの肩が、小さく震えているのを感じる。
その顔は少し赤くなっていた。
「……怖かったな。」
「……うん……」
「でも、もう終わった。」
「……李斗……」
「お前のせいじゃねぇよ。」
俺は、まりあの頭をそっと撫でた。
「お前は、これからも笑ってればいい。」
李斗の腕の中で、私はゆっくりと呼吸を整えていた。
「もう、大丈夫だぞ。」
その声に、私はそっと顔を上げた。
「……李斗……」
「ん?」
「私……ずっと怖かった。」
「……あぁ。」
「自分の知らないところで、私の家が誰かを傷つけてたかもしれないって思ったら……すごく怖くて……。」
「……。」
李斗は黙って聞いてくれていた。
私は涙をこぼしながら、続けた。
李斗は涙を促すように背中をさすってくれた。
「でも……それでも私は、私の人生をちゃんと生きたいって思うの。」
「……そりゃそうだ。」
「だって、もう知ってしまったんだもん。知らないふりはできない。でも……だからこそ、私はちゃんと向き合いたい。」
「……そっか。」
李斗は、少しだけ笑った。
「それなら、もう大丈夫だな。」
「……え?」
「だって、お前はもう、強くなったじゃねぇか。」
「……っ。」
私は、涙を拭いながら、ふっと笑った。
「……うん。」
李斗がそっと、私の手を握る。
「お前のそばには、俺がいるからな。」
「……ありがとう、李斗。」
「当たり前だろ。」
「ふふっ。」
私は、ぎゅっと李斗の手を握り返した。
翌日。
私は今まで通りの私に戻っていた。
李斗と一緒に学校に行き、普通に笑い合って、他愛もない話をして――。
**やっと、日常が戻ってきたんだ。**
「李斗。」
「ん?」
「私ね……やっぱり、李斗のことが好き。」
「……知ってる。」
「えぇ、素っ気ない!」
「バカ、お前何回目だよ。」
「何回でも言いたいの!」
「……ったく。」
李斗は少し照れたように、そっぽを向いた。
「……俺も、好きだよ。」
「え?」
「……だから、何回も言わせんな。」
その言葉に、私は思わず笑顔になった。
もう、「お試し恋愛」じゃない。
これは、本当の恋。
これからも、私は李斗と一緒に歩んでいく。
未来がどうなるかなんて分からないけれど、それでも――
**李斗がいるから、私はきっと大丈夫。**
**「恋してください華嶺さん」**
**――完――**