いつの間にか空は茜色に染まり、時計は午後4時を知らせている。
🍝🍷「…もうかえるじかんかぁ。」
♦️☕️「せやねえ…。」
それから少し静かな時間が続いた。
♦️☕️「ねえ、かなと!」
🍝🍷「ん?」
♦️☕️「行きたい所があるんやけど…、良い?」
🍝🍷「うんっ!」
雲雀が連れてきたのは海だった。
潮風のしょっぱい香りと、ふっと吹く心地良い、軽やかな風。
♦️☕️「ここ、おれのおきにいりのばしょなの!」
空のメラメラと燃える茜色を、そのまま移したような海の水面。
こちらへ来ては、引っ込んで、それを何回も繰り返す波。
僕にはこの景色が眩し過ぎて、綺麗で、暖かくて、辛くて、思わず目を瞑ってしまった。
♦️🍷「かなともここおいでよ!」
そう言って雲雀は砂浜の上にでーんと座り、その隣をぽんぽんと叩いた。
♦️🍷「なに〜?かなと眩しいの〜?」
目を瞑っているのに気づいた雲雀が問いかける。
🍝🍷「…ちょっとね。」
♦️☕️「なら、おれが手でぼうしみたいにつばをつくる!」
♦️☕️「そしたら、まぶしくないやん?」
雲雀は僕の目の上につばをつくる。
すると、今まで眩しくて見えなかった景色がだんだん見えるようになってきた。
…あぁ、なんて綺麗なんだろう。
ただ、その一言しか出てこなくて。
🍝🍷「きれいだね…!」
🍝🍷「とっても…とっても!」
♦️☕️「せやろ〜!」
♦️☕️「あ!ここにヤドカリが〜!!」
🍝🍷「え、なにそれ!?」
♦️☕️「これこれ!」
雲雀が指さす所を見ると、うずまき状の殻をかぶり、両手にハサミを備えたカニみたいな生き物がいた。
🍝🍷「うわあぁ!む、虫!?!?」
♦️☕️「ちがうって〜!」
♦️☕️「こいつ、いがいとかわいいんよ〜!」
♦️☕️「ほらほら〜!かなともさわってみ?」
🍝🍷「ちょ、わ!こっちもってこないで〜!!!」
帰り道、僕は雲雀にひとこと言いたくなった。
🍝🍷「ひばり!」
♦️☕️「ん〜?」
🍝🍷「きょうはありがとっ!」
♦️☕️「こちらこそっ!」
屈託のなく笑う顔が夕焼けに反射して、とてもまばゆく、儚かった。
家に帰ると、両親が仁王立ちして僕を待ち構えていた。
その後、こっぴどく説教され、1週間外出を禁止された。
両親に怒られることは想定済みで、雲雀とは家に着く前に別れた。
雲雀は「僕を家まで送っていく」と言っていたが、雲雀の存在が両親に知られたら殺されかねないからだ。
僕の家の事で雲雀を巻き込みたくない。
帰ったあと、心の中にずんと重い物は無くて、暖かい、キラキラしたものがあった。
なんと言えばいいのか分からないけれど、悪いものでは無いことは分かる。
ふと昨日のことを思い出す。
この思い出だけは何があっても絶対に忘れたくない。
絶対に忘れない。
これは、僕の光だから。
♦️☕️「良し!開店準備完了〜!」
🍝🍷「お!お疲れ〜!」
どれくらい浸っていたのだろうか。
時計を見ると、そろそろ店を出なくてはいけない時間のようだ。
🍝🍷「紅茶、美味しかったよ!」
🍝🍷「ご馳走様!」
♦️☕️「ういよお〜!」
♦️☕️「楽しんで頂けたようで何より!」
🍝🍷「では、僕はおいとまするよ!」
🍝🍷「この後会議もあるからね!」
♦️☕️「はーい!気を付けてな!」
カランカラーン
店を出て少し歩いたところで、大きく背伸びをする。
空は驚くほど澄んでいて、目が霞むほどだ。
木々の木漏れ日がとても綺麗に見えて、あの時とは違うと改めて思う。
今いる場所も、心も、何もかも。
その1歩を、確かに、あの時踏み出せたんだ。
ほんの少しの1歩だけど、あの夕焼けは今の僕の土台となって生きている。
忘れていない。
しっかり心に刻んでいる。
🍝🍷「…さてとっ、今日も頑張りますか!」
奏斗の飲み終わったティーカップを片付ける。
♦️☕️「奏斗、すんごい美味しそうに飲んでたなぁ〜…。」
♦️☕️「あれは結構お気に召したような感じやね! 」
♦️☕️「……にしても、あの色なんかに似てるんだよな。」
♦️☕️「ん〜……………。 」
♦️☕️「…あ!!思い出した!」
♦️☕️「てか、懐かしいな〜…!」
♦️☕️「あの夕日、綺麗やったなぁ。」
♦️☕️「しかも奏斗、ヤドカリにビビってて本当面白かったなぁ〜w」
思い出に浸っていると、もう時間になっていて、慌ててカフェの看板を整える。
そして、ドアに掛けてある開店閉店プレートを「開店」へと裏返す。
♦️☕️「よっし!!今日もやりますかぁ!」
すると、早速今日初めてのお客様がやって来た。
♦️☕️「『Cafe Zeffiro』へようこそ!」
コメント
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ほうわさん、、、れるです、、アカウント戻れませんでしたー、、、はは、