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「株式会社Sill 名古屋支局 広報部 金本と申します。」一礼して名刺を渡した。
「まぁ、どうぞ。」
取引先の運営局長に促され、席についた。
“高そうな椅子…”
そんなことを思いながら、資料を取り出し、対面の3人と隣の虎子部長にも差し出した。
“右から、運営局長、担当マネージャー、そして、ご本人…”
順番に顔を見ながら確認した。
虎子部長が企画内容の説明をしだした。
運営局長は熱心に聴いていた。マネージャーは、ちょっと、しかめっ面をしていた。本人は…飄々と、資料を眺めている。
“この子、アイドルでしょ?こんな資料見て分かるのかしら…”
初めは、そんな風に思った。
「金本さん、今後のスケジュール、ご説明して」
部長にそう言われ、少し慌てた。自分の手帳も広げながら、このあと、夏に企画決定、準備、秋に撮影、編集、12月には放送開始という大まかな日程と、ポイントとなる日を提案した。
「安藤さん、秋は新曲と初ツアー準備でしょ?いけるの?」
本人から問いかけられた安藤マネージャーは、ちょっと、しかめっ面のまま答えた。
「まあ、この通り進むなら。予定が押してきたらアウトです。」
「ふーん。そうなんだ。ねぇ、ちょっといい?もうちょっと、|Keys-1《ケイズワン》っぽさ出せないかな?」
その本人からの言葉に、運営局長も頷いた。
「うん、そうだな。どうでしょう?ちょうど、初アリーナとかぶるしなぁ。Sillさん、企画、まだ組み直せますか?」
結局、スケジュール通り&企画内容の練り直し、という少しハードな条件付で約束は交わされた。
「本日は、有り難うございました。失礼いたします。では」
部長の挨拶に合わせ、深々お辞儀をし退室した。
__退室後、会議室の中__
「ねぇ、局長、撮影、名古屋でやっちゃダメかな?」
「ん?なにかあるのか?」
「まぁ、ちょっと。安藤さん、調整してね。なんなら、打合せも名古屋でいいよ。スケジュール、ちょっとくらいタイトになってもいいから。お願いね。あ、あと、彼女の名刺ちょーだい。」
「おいおい、一般人、巻き込んだスキャンダルはやめてくれよ」
「わかってるよ、局長。」