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先日、カイザーがお付き合いしている女性がいるとの報道が出た。いつもみたいなデマだろうと思っていた。
「あぁ、本当だ」
カイザーの口からそう聞こえた。え、と動揺してしまった。
俺はカイザーのことが好き。だいぶ前から。でも、この恋は実らないらしい。だってこの言葉を聞いてしまったから。
「遊びじゃない、結婚を前提に付き合ってんだよ」
いつもの人を馬鹿にするような笑い方じゃなく、その笑顔はとても穏やかで、いつもの様子からは想像もできないような笑い方だ。まるで、天から降りてきた天使みたいな、そんなふざけたことも思ってしまうような笑みだった。
でも、その笑みは俺に向けられたものじゃなくて。その事実を突きつけられたようで、胸がズキンと痛かった。
「へぇ?お前みたいなやつでも女の子と付き合えるんだな」
なんて軽口を叩いた。俺は上手く笑えていただろうか。
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あの日から数ヶ月後、俺はカイザーの結婚式に呼ばれていた。ドイツでは職場の同僚や上司は呼ばないそうで、俺は友人として招かれた。そのことに嬉しく思う反面、やっぱり辛かった。
相手の女の子は、綺麗で可愛くもあってとてもお似合いとしか言いようがなかった。
教会で、牧師や新郎新婦のスピーチの後、2人は誓いのキスをした。とても美しくて、綺麗で絵になるなぁ、と思っていた。
2人はとても幸せそうで。
でも、何故か目からはツー、と涙が頬を伝った。あぁ、なんて美しくて切ないんだろう。
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その後の披露宴も着々と行われ、とても賑やかだった。カイザーや友人たちと食べて飲んで話して。ちょっとは気が紛れたような気がした。
家に帰ると、ドッと疲れがきた。もう今日はこのままベッドで寝てしまおうか。
「……早く、諦めなきゃな」
明日はまた練習がある。どんな顔して会えばいいかな、いつも通りに接しられるだろうか。
(こんな辛い気持ちになるなら、あいつなんかに恋なんてしなきゃよかった)
後悔と、羨望とが俺の中で渦巻いて離れてくれない。