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その日の幻想郷は雨が降った後で、地面がぬかるんでいた。だがそのとき、霊夢はこれぐらいなら大丈夫だろうと油断してしまっていたのだ。それが間違いだった。案の定、霊夢は頭から盛大にコケて__

記憶を失ってしまったのだから。

第一話-記憶を失くした巫女

「…っと。」

魔理沙は神社の境内に降り立った。その顔つきはいつもの能天気な顔とは違い、どこか哀しそうな顔をしていた。それもそうだ。紫から霊夢が記憶喪失になったと聞いて、急いで駆けつけてきたのだから。ガラガラと襖を開けた先には、布団から上半身だけ起き上がった霊夢がいた。霊夢は魔理沙の方を見ると、申し訳なさそうな顔をして言った。

「…ごめんなさいね。貴方は誰かしら?」

その言葉を聞いた瞬間、魔理沙は顔をしかめた。霊夢の事は紫から聞いていたはずなのに。理解してやれたつもりだったのに。魔理沙の心の中には、まだ事実を信じきれていない自分がいたのだった。魔理沙はわざと明るく装って見せた。霊夢を騙すためじゃない、自分を騙すためだった。

「なんだよ、霊夢。私のことも忘れちまったのか?」

今にも溢れそうになる涙を、グッと堪える。

「…ごめんなさい」

霊夢は申し訳なさそうな顔をすると、顔を背けてしまった。ああ、そんな顔をしないで。霊夢は何も悪くないのに。魔理沙はそう思った。しばらくの沈黙の後、静けさに耐えられなくなったのか魔理沙が口を開いた。

「私は霧雨魔理沙。お前のしんゆ…」

魔理沙は途中で口を詰まらせた。どうしても言葉が出てこない。私は霊夢にとってなんかんだろう。今まで考えたこともなかった。

「…私は、ただのお前の知り合いさ」

やっとのことで捻り出した言葉がそれだった。

「…そう、ごめんなさい、私、本当に何も覚えてなくて…」

「あー…いや、いいんだ。謝らないでくれ」

再び気まずい空気が流れる。

「…ごめんなさい、ごめんなさい…」

霊夢は、とうとう肩を震わせて泣き出してしまった。魔理沙は霊夢に駆け寄ると、肩に手をかけた。霊夢の為に何もしてやれない自分が不甲斐なかったのだ。霊夢には苦しんでほしくない。自分を責めないで欲しかった。だが、そんな思いが霊夢に届くはずもなく、霊夢は魔理沙が帰るまで泣き続けていた。

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