Hiromu side .
理人「え?昨日??」
「そう、昨日」
理人「忘れ物してたから大夢の家に行って届けただけだけど、何。忘れたん?」
「忘れ、物?」
理人「うん、最近買ったって自慢してたあのヘッドフォン。必要でしょ?」
確かに、最近買ったばかりのそれは必需品で大切にしていたものだった。
「…本当にそれだけ?」
理人「まぁ、それはついでって感じ?大夢あの手帳間違えて持っていったみたいだから返してもらおうと思って行ったんだけど。」
そうだった、だろうか。まぁ思い出そうとしても昨日の記憶なんて空っぽな俺は思い出せないのだから、彼の言う通りなのだろう。
理人「ていうか、雄大遅くない?集合時間12時じゃなかったっけ?」
「いや、13時だよ?」
理人「…え、まじか。後もうちょっと寝れてたかも」
「ベンチあるし、そこで寝てたらどうなの?時間になったら俺起こすよ??」
理人「いいの??じゃ、失礼」
「え、は、理人?」
自分もベンチに座ろうとした瞬間、膝の上に彼の頭が重なった。
理人「いいでしょ?」
頭の中は戸惑っている中、彼のスキンシップはいつものことか、なんて情報整理する。膝枕になった今、することはスマホをいじることぐらいしかない。LINEが1件ついていることを確認してアプリを開くと、それは柾哉くんからだった。『大夢、この前の花ありがとね。玄関前に飾っとく!!また見に来てね』と来ていた。この前の花、あぁあれのことか。そう思いながら文をつらつらと作成する。返信ボタンを押したその瞬間。膝にいる彼が「…か…さい」と寝言を発した。どんな夢を見ているのかは謎だったけど。そんなこんなしている間に20分が経とうとしていて、雄大がもうそろそろ来そうと思い起こそうと試みた。…でも、普通じゃつまんないよね。
「…わっっっ!!!!!」
理人「……どひゃ!!!!何!!」
耳元で大きな声を出してみた。あまりの驚きにこっちもびっくりした。彼の顔は縦に伸びていて、それが可笑しくてケラケラと笑いが込み上げた。
理人「びっくりした〜〜。普通に起こしてよ、めっちゃビビるから」
「あはは、ごめんね?」
理人「謝るんだったら最初からやるなよ」
びっくりした、などとうっとうしそうに耳を触っていたが、勿論心の底から怒ってるわけじゃなく、表情はやわらかい。いつものイタズラとして処理されたみたいだ。
その後、すぐに雄大が待ち合わせ場所に来て、笑っている俺を見て不思議そうな顔をしながら目的地方面へ指を指して、「行こう」と歩き出した。
遊びも何事もなく楽しく終わり、帰る用意をする途中、理人が話しかけて来た。
理人「ね、この後空いてる?」
「…え?」
この後…外ももう夕方で、何かするのには時が少ないけど。
理人「いや、ごはんでもどうかな〜…って。料理をしてるのは知ってるんだけど」
何故、俺だけなのだろう。他のメンバーといつもご飯に行くだろうに。
「別に予定はないけど、」
理人「じゃ、決まり!」
「…あ、」
まずい。こういう仲間外れみたいなのはグループの決裂になるし勘弁して欲しい。そう思って雄大に声をかける。
「雄大も行こうよ」
理人「今日、たけちーとご飯行くらしいよ?」
雄大「そうなんよ、ごめんな〜?オレ、威尊と行くねんな。威尊とやから勘弁してや」
あぁ、威尊となら納得だ。そう、雄大と威尊は付き合っているのだから。
「じゃ、2人で行こうか」
理人「やった!!嬉しいわ、大夢と。」
雄大「良かったな、理人。」
理人「ま〜じで助かった。」
何を言ってんだか。2人して何故嬉しそうなのかは分からないけれど、内心理人が楽しそうにしているのには俺も嬉しかった。いつも素直になれないけれど、それでもそれらを全部くみ取って素直に返す理人が可愛くない訳がない。
「誘ってきたんだから、何処に行くかなんて決まってるんでしょ。」
理人「当然。」
そうして連れてこられたのは何回か来たことのあるラーメン屋さんだった。店選びからして、長居する気がないのが伺える。
理人「前に此処に来たことあるの、4ヶ月前くらいやっけ。」
「あー、そんな最近だったっけ。覚えてないや」
理人「わ、俺とのデート忘れられてんだ」
「待って、デートだと思ってたの?」
理人「そりゃそうよ」
でも、遊園地とか水族館とか1日遊んだ記憶はあるけど、ラーメン屋なんて東京だけでも何軒もあるし、そんなわざわざ覚えてないんだよね。ごめんね、理人。
理人「ごめんね、大夢とのことは全部覚えてるよ。だから、結婚しよ?」
「…ふ、」
理人「ちょっと!?鼻で笑わんといて」
はは、なんて彼は笑い、残り少なくなっているラーメンのだしを飲み干した。
理人「ご馳走様、付き合ってくれてありがとね」
「ううん、久しぶりに理人と来れてよかった。」
理人「…オレと来れてよかったとかかわいいすぎん?」
「…なに、別にいいじゃん。」
理人「かわいいな…」
「じゃ、また」
理人「早いって!!…な、大夢」
「なに?」
理人「また、遊びに行かん?最近遊びに行かなかったし、大夢が行きたいところ行きたい。」
「…え、」
理人「……やだ?」
「別に、そういう訳じゃ。」
きっと分かって言ってるんだろうな。元々人に頼まれたら嫌とあんまり言えない。それくらい理人なら分かってるか。
「いいけど、それくらい。なんで俺なの。」
理人「え〜、大夢だから?」
彼が少しふわりと笑うのを見て、目の前に星が散ったのかと思うくらいキラキラと舞う。自分の目が明るくなったのだろうか…なんて思ってしまう程の。少しだけ鳴った心臓には聞こえないふりをした。きっと今は気づかない方がいいだろうから。
家に帰り、お風呂を済ませて水を片手にネットサーフィンをしているとき、スマホが一件の通知を表した。
理人『無事帰れた?』
それは理人からのメッセージだった。俺の方が年上なのに、子供扱いなのか。あぁ、つい歪んで受け取ってしまった。
『帰れたよ、お疲れ様。』
秒で返ってくるメッセージ。添付されてきた自撮りについ吹き出してしまう。
『別に写真は求めてないけど、笑』
理人『笑、そういえばさ行きたいところ決めた?』
そうだった。そんな話があったな。ショッピングはありきたりすぎるし、味気がないし…2人である必要が無い。どうしたものだろうか。
理人『そろそろ寝るわ、明日も早いから。大夢も早く寝てね』
『おやすみ、理人』
少し考えている間に理人からはおやすみメッセージが来たが故、また思いついたらにしようと一旦止める。彼から後ほど来た『いい夢みてね』の6文字にそっと親指を添えた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!