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僕らの マスク戦争
第一章 pandemic〜第2
その頃、流行病のパンデミックが収束の気配も無く、僕たちはまだ半信半疑で真実の覚醒には至っていなかった。
2年目に突入していたが、次々と変異するウィルスは猛威を振るう。その度に休校を招き、自主学習を余儀なくされた。
進学の準備期間として、大事な時期になる為、対策として教師によるネット配信での授業も行われたが、やはり教科の遅れは取り戻せない。焦りを感じながらも、何とか自主勉にも力を入れてきた。
7月に入り、やや感染数が減少し始めると、ついに学校も人数制限をしながらの授業を開始した。
2学期の最初の難関、進路選択と悩ましい3者面談を明日に控え、僕は渡された用紙に必要事項をすぐさま書き入れ、ついでに、親の同意印も早くもらっておこうと、帰宅途中にある母親のパート先のスーパーに向かった。
母は、入り口近くの惣菜コーナーのカウンター内で販売をしている。11時から17時の1時間休憩を除く5時間勤務だ。因みに、1時間890円で、週4日働いていた。母の名前は ((ミツコ) )、48歳。
母は,自閉症で小児喘息の弟、10才のハクトの病院等の時間に合わせるシフトにしていた。
この日は僕の高校の3者面談のため、短縮授業になり昼食後、掃除して解散になった。
(まだ1時か〜、スゲェ青空じゃん!…爽やかな風、気持ちいいなー、このままチャリで遠出するかナ〜)
自転車の荷物の端っこから覗いているプリントの束を思い出し、担任の前橋が、
「今日の受講の代わりだからな、遊びの寄り道は無しだぞ!明日提出だ。これも単位の1つになる。ちゃんとやってこいよ。」と、言っていた。
(しかし、ウンザリするほどの束だ!授業の方が楽なんじゃね?今日はひたすらプリントの山と睨めっこになりそうだ。うーん…,だけどゲームをする時間は絶対に作るぞ❗️やり方次第、ヨウシ、シズキ!取り掛かれ、1時も無駄にするな。)
僕は今晩、キョウコとメチャクチャはまっている対戦型の難関パズルゲームの約束をしていた。今だけ唯一、与えられた時間だと僕が勝手に思っている。
流石に受験を控えた3年になれば、ゲーム三昧をしている余裕などない。
僕は急に、明日の面談が頭をよぎり、少しだけ心配になった。
スーパーの自転車置き場に、愛用の紺色のマイチャリを入れる。自転車置き場から見えてきた、母のスーパーの開閉式のオープンドアから、年配のおじさんが小さな子供の腕を引っ張り出てきた。
「親はろくなもんじゃねぇなぁ!マスクもさせねえで外出させるとは、なんて非常識な家族だ!!お前、何年だ?西小の生徒なんだろ、すぐに学校に問い合わせてやる。こういう連中がいるから、感染が広がるんだよ!!」
(あー、ハクト… )咄嗟に状況を把握し、僕は走った。
「すいません!僕の弟です。あの、弟はひどい喘息なんです❗️マスクをしていると、呼吸困難を引き起こすんです。」
「だから、マスクはしません。市役所の証明書もあります。」僕は、診断書の認定カードを,ハクトのリュックから出し、スーパーの客だと思われる。年配の男性に見せた。
僕は内心,とてもムカついていた。しかし、マスクは今の国の対策とされていたから、このオジサンの言う事は、間違いではないのだ。人権問題には値するけど、どんな理由があれど、社会正義なのだろう。
僕はこの時、不都合な社会の闇を感じていた。
pandemic 〜第3へ続く