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仰向けになった時にナジュはいろいろなところがはだけており、ムツキは頬を赤らめながらも少しずつそれを戻していく。
「……私もモフモフしていれば、面倒とか言われず、もっと旦那様に愛されるだろうに」
「いや、それとこれは別。ナジュのことは愛しているよ」
ムツキは頬を膨らませているナジュの頭を優しく撫でる。
ナジュはムツキをじーっと見つめている。
「もっと愛されたい……ニャ」
「っ。どうした、急に」
ムツキはナジュの不意打ちに、危うく理性が吹っ飛びそうになった。
「ケットの真似をしている……ニャ。モフモフしてないけれど、少しでも猫に近付けば、旦那様にもっとかわいがってもらえるはず……ニャ」
「いじらしくて、かわいいなあ。たしかに、モフモフのコスプレをされたら、もうダメかもしれないな」
「コスプレとはなんだ……ニャ?」
「まあ、仮装というか、服装や小物なんかでそれらしく振る舞うようにする感じってことかな」
「それでもっと愛されるなら、する……ニャ」
ムツキの理性は崩壊寸前であったが、ナジュが目を閉じかけていることに気付いて、彼はしばらく待ってみることにした。
「……すー、すー」
ナジュがそのまま目を閉じて寝息を立て始める。
「ん。寝たか。危なすぎる。心臓がもたないな。この部屋、布団1組しか敷かれてないんだよな」
ムツキは今さらとも思い、明かりを消した後、ナジュに添い寝をするように一緒の布団の中に潜った。
「……旦那様」
少しして、ナジュがそう呟く。
「ん? 起きたのか?」
ムツキは寝入りばなで少し眠たそうに返した。
「その、あの、その、今日もかわいがってほしい……ニャ」
ナジュの甘いお誘いに、ムツキの眠気は醒め、その理性が再びぐらつく。
「まだ酔いは醒めていないのか。寝た方がいいぞ」
「……愛しているって言葉だけじゃなくて、行動で証明してほしい……ニャ」
ナジュは、ムツキにギュッと抱き着いた。面倒と言われたことに不安も入り混じっているようで、甘え方が激しかった。
「ぐぐっ……。そうしたいのは山々だけど、お義父さんやお義母さんに聞こえるぞ? 朝に悶絶することになるが」
「二人の寝室からは離れているから大丈夫……ニャ!」
ナジュは事前にナジュ母から寝室の位置を確認しており、十分に離れていることを把握済みだった。
声を抑えれば、大丈夫だと思っている。
「あー……、お義父さんはそうかもしれないけど、……お義母さんならそこで聞き耳立てているけど?」
ムツキはナジュに顔を寄せて耳打ちをした。
「っ!」
ナジュはすぐさまに飛び起きて、明かりを付け、ずんずんと扉の方に近付いて、扉を勢いよく開けた。
そこにはガラスのコップまで使って、しっかりと部屋の音を聞いているナジュ母がいた。
「あ、あら。気付かれちゃってた? だから、ムツキさんはナジュを襲わなかったのね!」
「いや、そういうわけではないですが……」
ムツキはゆっくりと身体を起こし、ナジュ母の方を向いて返事をした。ムツキの目に映るのは、仁王立ちするナジュとコップを持ったまま座っているナジュ母である。
「お母さん、いつからいたの?」
ナジュ母は視線を逸らすように顔をすーっと横に向ける。
「いつからいたの?」
「覚えてないニャー。私も膝枕の刑に処すニャ?」
ナジュ母は両手を頭の上に乗せて、猫の耳のようにする。
「っ!」
ナジュの魔力が怒りによって高まっている。彼女の魔力で焼かれたら木造の家なぞ、灰も残るか怪しい。
「ごめんニャ! 戻るニャ! ごゆっくりニャー!」
謝りつつも煽っているナジュ母は強いな、とムツキは思った。ナジュは怒りのやり場を失うが、何とかこらえている。擬音を付けるなら、ナジュはプスプスという音を立てているに違いない。
「ほらな? 今日は大人しく添い寝にしよう。さすがに、していると気付けないかもしれないからな」
「ううっ……。おやすみ」
既に若干悶絶気味のナジュに、ムツキは優しく頭を撫でた。
「……おやすみ」
大人しく添い寝、とムツキは自身でそう言ったが、本能と理性の壮絶な戦いを自ら招いてしまう。
ナジュの小さな寝息に興奮して眠るに眠れず、さらに、無意識に抱き着いてきたナジュの柔らかな感触に、悶々とする夜を過ごす羽目になった。