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――「伏黒甚禰? あぁ、あのオッサンね」
「伏黒甚禰? あぁ、あのオッサンね」
五条悟は団子を頬張りながら、飄々と語り出した。
「まぁ、一般的に言うと”伏黒家の汚点”かな」
京都高専の学長が呆れ顔で尋ねる。
「伏黒家の……? そんな人間がいたのか?」
「いるんだよねぇ、それが。」
五条は笑いながら続ける。
「伏黒甚禰。禪院の分家筋の人間でね、一応”術式”は持ってたらしいんだけど……呪力ゼロ」
「呪力ゼロ……!?」
「まあ、禪院家は”呪力がない者は存在価値がない”って考えだから、こいつも”縛り”を課されて追い出されたんだ」
「縛り……?」
「“二度と禪院家を名乗らないこと”ってね」
「ただね、コイツには”特別な才能”があった」
五条がニヤリと笑う。
「”ギャンブル運が異常に悪い”っていうね」
「……それは才能なのか?」
「本人は”呪術”だって言い張ってるよ。”自分が買った舟券は絶対に当たらない”ってね」
五条は楽しそうに話を続ける。
「何年か前、偶然競艇場で会ったんだけどさ」
五条悟は、軽い気持ちで尼崎競艇場を訪れた。すると、ひときわ荒れている男がいた。
「はぁ!?💢💢💢 また外れたんか!!?」
伏黒甚禰だった。
「おっちゃん、めっちゃ負けてるねぇ」
「……!? なんだお前、五条か!」
「……俺は呪術師の道を捨てて、ギャンブラーとして生きるって決めたんだ……!」
「で、どう? 勝ててる?」
「全財産スッたわ💢💢💢」
「はっはっは! いいねぇ!」
五条は笑いながら、自分の予想を紙に書いた。
「じゃあさ、おっちゃんが買う舟券の”逆張り”してみようよ」
「……逆張り?」
「うん、おっちゃんの”呪術”が本物なら、当たるでしょ?」
「そ、そうか……! ワイが1-2-4を買えば、1-2-4以外が来る……」
伏黒甚禰は震える手で舟券を購入。
一方、五条は彼の買ったものとまったく違う組み合わせを購入。
そしてレースが始まる――
「ファイナルターン……!!」
1-2-4が先行!
「うおおおおおおおお!!」
だが、最後の最後で4号艇が沈没し、結果は1-2-5。
五条の勝ちだった。
「やったぁ! ありがとうおっちゃん!」
「クソがァァァァァァァァ!!!!!」
伏黒甚禰は競艇場に響き渡る声で叫んだ。
「まぁ、そんな感じで”呪われたギャンブラー”ってところかな」
五条は話を終え、満足そうに団子を噛み締めた。
「で、あの男は今どこに?」
「さあ? たぶんどっかの競艇場にいるんじゃない?」
「……」
「でもさ、コイツがギャンブルやってる限り”当たる舟券”がわかるってことでしょ?最強のギャンブル師かもしれないよねぇ?」
「……最弱の間違いでは?」
五条は肩をすくめ、笑った。
「ま、どっちでもいいけどさ」
その時、五条のスマホに通知が届く。
『伏黒甚禰、戸田競艇で全財産を失い暴れる』
五条は笑いをこらえながら、静かにスマホを閉じた。