私は今から少し空の旅行をしようとした。
何故か?
理由は簡単さ、私がこの世から消えれば『あの人』が報われるのだから。
私がいたからからの人生は無茶苦茶になった。
つまり因果応報ってやつさ。
私が旅行に行くのであれば私のいう『あの人』にもっと酷いことをしていたのでは?
ふふ、その通りさ。
私は『あの人』に想像を絶するほどの苦痛を味わせてしまった。
今となっては後悔していると感じている。
夕日に包まれながら歩く私はどこか遠くへいけそうな気がした。
しかし運の悪いことか私は捕まってしまった。
『あの人』に幸せになってもらうために。
『あの人』に笑顔になってもらうために。
私はまだ空に行けないようだ。
空というのはどことなく遠い遠い世界のことだと、私は考える。
でも一つ思うのだ。そう、疑問がね。
私は後悔していると言っているがそれは本当か。
こんな呑気に生きているのであれば後悔というよりも楽という方が大きいのでは?
たしかにそうかもしれない。
私は私なりの反省、後悔をしている。
しかし君がそれを許さないのであればそれは仕方がないと思っている。
嗚呼空が綺麗だな
こんな日には珈琲を飲みたくなる
そんなことを考えながら歩く私
私はある店へと足を踏み入れ
今日も生きてしまったと後悔している
「ねぇ、中也」
私が彼にある質問を問うと話しかけた。
彼は私の方を面倒くさそうに振り返り舌打ちをついた後に
「なんだぁ?太宰」
と、少しキレ気味の様子で問いに答えようとする。
私は彼の顔を見ると嗚呼綺麗だなと思ってしまう。
否、こんな奴の髪が綺麗などもってのほか、思っては行けないと思っていた。
私は難しい顔をし、眉間に皺を寄せた。
それに気付いたのかは分からないが心配そうな顔をしてこちらに顔を近づけ
「おい、大丈夫か?」
という中也。
恥ずかしさのあまりに頬が赤くなる。
私はすぐに中也から顔を背け何処かへと向かった。
私が向かった先には“うずまき店”と書いてある看板の店であった。
私は何時もこの店へと足を踏み入れ、ある女給に心中予定を予約している。
しかしそれがなかなか上手く行かずに後輩に怒られてしまう。
その後輩というのはとても髪が見窄らしいのだ。
まるで赤ん坊に切られたかのような前髪なのだ。
「太宰さん!これ、今日の依頼内容なんですけど…」
「ん?あー今日はパス」
「今日『も』ですよね?」
「…君も言うようになったじゃナイカ」
私は自殺愛好者である。
入水自殺や首吊り自殺、飛び降り自殺に…と、様々な自殺が大好きな人間だ。
しかし最近、自殺が一向に上手く行かないのだ。
そりゃぁ、まぁ、私が行けないと言うところもある。
しかし九割邪魔者が入ってくるのだ。
その邪魔者というのが先ほど、私に書類を渡してきたこの【中島敦】という人である。
私はこの後輩に色々と自殺の邪魔をされすぎて散々なことになっている。
嗚呼、綺麗な女給はいないかとウロウロと店を見渡すとおばちゃんが出てきて私にこう言った。
「今日もまたツケ?」
「まぁね」
店の外へ足を出し、私は横浜の街をゆったりと歩いていくのであった。
コメント
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すみません。 5行目のところがからになっていました。 正しくは『彼』なのでご注意下さい