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俺の恋人は、きっと浮気をしているんだろうと。何ヶ月この想いを胸に込めた事だろう。
元はノンケ、仕方ないなんて思いつつも段々と行為も愛情表現も減っていく。そんな現状が しっかりと確認出来て、流石に苦しくなっていく。行為中に、あの黒い髪がさらりと動き黒い瞳が俺を捕らえるあの快感も、俺に付きまとって、どんなに離れさせても抱きついてくるあの鬱陶しさも。 最近は何も感じないし、 ただ愛情だけが湧き上がってくる。
何も無い。何も与えてくれない。
スマホは風呂にもトイレにも持っていくし、必ずと言っていいほど一緒に寝ていた日々はいつの間にか無くなっている。 夜遅い時間の外出も、朝帰りも。どんどんどんどん増えていって。 毎日作ってくれた朝ご飯。起こしてくれたあの光景。好き、と突然言ってくれる笑顔。全てが脳裏に焼き付いていて。
おれを離してくれない。俺に、「別れよう」と言わせてくれない。女の香水を纏って帰ってくる彼奴に、どんな声をかけてやればいいんだ。 「お帰り。」と言ったとこで、あいつから返って来るのは「うん」だけ。 俺がデートの誘いをしても、恥を忍んで行為の誘いをしても。あいつは何もしてくれないし、「忙しい」「気分じゃない」そうあしらわれてしまう。俺は必死に、素直になれない自分を壊して話しかける。 俺の事を好きだと、また言って欲しくて。 こんなくだらないことを、ぼろぼろになった手首を見つめながら秋を感じる肌寒いベランダで考える。前は傷なんてなかったけれど、寒くても暑くても、俺がベランダにいるとあいつは静かにやってきて、「寒いよ。」や、「暑いから。」と俺を部屋に入れ込んでは抱きしめてくれた。俺が煙草を吸う以外でベランダに出るのは、決まって消えたい時や、悩みがある時だったから。
それをあいつは分かってくれていて、俺の些細な感情さえ汲み取ってくれた。来てくれないことなんでわかっていても、彼奴を待ってしまう自分が嫌で。 部屋に戻って、ただ呟いた。「俺の何が悪かったん、」それが俺の今の感情の全てだった。悲しさも、憎らしさも。全て詰めた一言。 素直になれなくても、尽くして来たつもりだった。あいつとの予定を優先して、夜の誘いはあいつからが多かったけどなるべく応えた。 好きも、大好きも。俺なりに伝えたつもりだったし、 あいつが悲しむからと、デリヘルも何もしてこなかったし不貞なんてする気すら起きなかった。告白したのは俺の方だった。
どうしても、相棒と言う関係に満足が出来なくなった。付き合う前も何度か体を重ねた。
それでも、相棒を柔らかく噛み砕いたら友人。その枠にいたくなかった。あいつの、愛する恋人になりたかった。だから、恥もプライドも恐怖も全て飲み込んで、壊れる覚悟で告白をした。あの時の光景を未だに思い出せる。 消え入りそうな声で、「俺、お前ん事すき、付き合ってほしいくらい、」なんて不器用にこぼした俺の言葉に目を見開いた後、訂正しようとする俺の言葉を遮ってあいつが口を開いた。「俺も、好きだった」なんて涙を流してくれた。きっと、あの頃から迷惑だったんだと、今更実感する。あいつはずっと、相棒の俺が好きだったんだと。俺はそんなことを悶々と考えながらリビングに行った。そしたらいつ帰ってきたのかニキがいた。 また、「お帰り。遅かったな」なんて言葉をなげかける。帰ってきたのは「別に」これだけだった。その時、自分の中で涙を堪えられる限界を超えてしまったのだろう。じわじわと涙が浮かんだ。いつからかな、動画撮影以外であの明るい声が聞けなくなったのは。俺の精神安定剤は、俺の精神をぶち壊してくるようになった。ついに蓋が外れ、目から涙が溢れた。二人でいる間は必ずくっついてたし、スマホより俺とゲームしたりしていたのに、今はお互い離れていてニキはスマホに目を落としている。俺の啜り泣く声が耳に届いてしまったんだろう。あいつの目が久しぶりに俺に向いた。目が合ってしまったことへの嬉しさと不安に襲われつつ、ニキの口が開かれるのをゆっくりとみた。「何?泣くなら部屋で泣いて」そんな彼の言葉にずき、っと心が痛んだ。前なら、そっと俺を抱きしめてくれたのに。話も聞いてくれたし、慰めてくれた。次の日や近い日に楽しいところに連れていってくれた。俺が寝るまで撫でてくれた。 絶望したような表情で俺が自分のことで泣いてるのがわかったんだろう。察しのよさは、変わっていないみたいだ。俺があげた服もピアスも何もつけてくれていない。お揃いの指輪は、この前ゴミ箱に入っているのを見て俺は部屋にしまった。スマホを、ニキがスマホから目を離し俺を見る。必死に涙を止める俺を新鮮そうに眺めた。 だから俺は、少しの希望を乗せて、声を振り絞って。「すき、にき、」そう告げた。震えて、今にも死んでしまいそうなほど苦しそうな声で。数秒の沈黙のあとかえってきた言葉は、「そっか」だけだった。俺が好きって言ったら、飛び跳ねて喜んでいたあいつは、もうどこにもいないのだと、強く実感させられた。ただ人を愛するだけでなぜこんなに傷つかなければいけないのか。 愛されたかった。俺が、性別なんて関係なく本気で惚れ込んだ人だった。
ずっと一緒にいたかった。
だから、声を出した。
「 告白、してごめん。 」
ニキさん視点書いてもいい
気がしてる
コメント
2件
良すぎる…せんせー辛いね…😭😭ぜひニキさん視点も書いて欲しいです…!
ハッピーエンドにする予定だった